ギフト・リクイエム
+プッチ
ギフトってなんですか??
拒絶した男
気がつくと、白い空間にいた。
何もない。床も壁も天井も、果てすらもわからない。だが、ひとつだけわかることがあった。
「……俺、死んだのか?」
佐藤真一、35歳。物流倉庫勤務。 特に趣味も夢もなく、ただ流されるように日々を送っていた。死因は睡眠不足による居眠り運転。
気づけば、妙に明るい空間に立っており、目の前に見慣れない人物がいた。
「よう。佐藤真一くん」
男とも女ともつかない、老若すべてが混ざったような不思議な顔立ち。
「……誰だよ、あんた」
「まあ、神みたいなもんだと思ってくれればいいよ。で、ひとつだけ選んでいい。『ギフト』ってやつを」
「ギフト……?」
「君はこれから別の世界に転移するんだ。そこで使える特殊能力。どんなのでもいいよ。面白いのがいいな。あ、ただし、細かい条件とか仕様の指定はできないからね」
「は……?」
「転移先は適当な村とか町の近くにしておくよ。言葉も問題ない。着いたら自然に通じるようになってるから」
言葉が、頭の中にふわりと降ってくるようだった。
世界。転移。能力。戦い。危険。死。
まだ状況も理解できていないのに、脳裏に断片的なイメージだけが浮かぶ。
考えようとする前に、言葉が出ていた。
「……全部の攻撃を反射するやつ。『完全反射』とか……」
言ってから、自分で驚いた。
そんなことを望んでいたのか、いま自分が何を決めたのか、本当にわかっていたのか。
「いいね、きたそれ。じゃ、いってらっしゃい」
その言葉を最後に、何の説明もなく床が抜けた。
◆
気がついたとき、真一は地面に仰向けに倒れていた。
顔に何かがまとわりついている。
土のにおいとザラついた感触。口の中にまで入り込んでいた。
「……げほっ、ぺっ……」
思わず吐き出そうとする。咳き込んで、口を開いたときだった。
その瞬間、脳内に何かが流れ込む。
【完全反射】
《外的な攻撃・干渉をすべて反射する》
《反射対象は本人の認識によって自動的に決まり、対象の判定は不可逆》
力の説明と同時に、真一の体が淡く光を放った。
「……え?」
ピシッ、と空気が裂けたような音。
真一の体を薄膜のような光が包み込む。
息が、入ってこない。
喉は開いている。鼻も口もふさがれていない。
けれど、吸えない。空気が、拒まれている。
目を見開き、喉を鳴らしながら、真一は理解する。
《完全反射》が、空気を「侵入物」として認識したのだ。
最初は、口に入った土を吐き出そうとしただけだった。
だが、直後に発動した“反射”は、それをきっかけに「外から入るもの」すべてを遮断しはじめた。
酸素が入ってこない。
空気が皮膚と粘膜で撥ね返される。
必死に呼吸しようとするほど、苦しみは強くなる。
反射は本能と直結しており、意識では止められない。
佐藤真一。異世界転移から約三分後。
その“完全すぎる力”が、最初に拒絶したのは――空気だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます