第50話 決戦Ⅴ
瓦礫が更に砕ける。
水銀のようにタチバナミナトは溶けると、オレの足元にまとわりつく。
【
ひすいさんの杖がオレの膝に触れる。急激に熱を持ったかと思うと、はじけ飛んだ。
よろけたオレの肩をひすいさんは担いだ。
「怖いねえ。お気に入りを躊躇いなく壊しちゃうクセ、治したほうがいいと思うよ」
タチバナミナトは、オレ達から距離を保つ。オレに行使した奏術を喰らうのは、青年にとっても危険なのかもしれない。
「最近、地上を出歩きすぎだ。地下にこもっておけよ。今回はお前の負けだ。魔眼持ちはオマエに食わせない。凝った料理にしたかったようだが、それも叶わないさ」
腰を落としていたタチバナミナトは、警戒を解いた。
「ボクを飢えさせるの」
「まさか。オマエには食わせてやるさ。それは番の二人でも無ければ私自身の一部をやるわけでもない。地下でゆっくり味わうといいさ」
残った片足が地面から離れる。オレの首を片手で締めながら持ち上げられた。普段の視点よりも幾分か高いその位置から、ひすいさんを見下ろす。
重量があるはずのオレを片手で持っているので、奏術は使っているのだろう。
息が詰まり、目に涙が浮かぶ。
「ひすいさんって、オレのこと大好きですよね」
「言わせるな。後で手入れは万全にしておくさ。【
背中を柔らかく撫でられたかのような心地よさの後、遠くで爆発音が聞こえた。破裂の衝撃が来る前に、視界が真っ黒に塗りつぶされた。
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