第28話 安置所にて
旧新宿駅東口前にある、錆びたライオン像の前に、土生津は立っていた。太陽が、頂点に達するころだった。
ユーイチがいないせいで、ひすいは、腰に刀を下げていた。勿論、死体の入ったトランクケースも持って。
「君の用心棒が騒ぎを起こしたらしいな」
一番隊、つまりは総司令部長の土生津が気配も無く、現れた。
「誰を殺したんだい」
土生津は周囲を窺った。ひび割れたコンクリートをつつくと、爪の先ほどの、肥えた白く蠢くものが出てきた。
「酒井製薬かな。水辺では無いから海賊という可能性も低いだろう」
「新宿周辺はゴーストタウンとは言え、警戒を解くことはできないな。中で話そう」
ひすいはは土生津と共に、小型の蠢くものを踏みつぶしながら、地下へ続く東京警備局本部へ向かった。
起伏は少ないが、四方に伸びた、迷路のような道を抜けた先に、静閑な空間に案内された。タイル張りから、リノリウムの床になっているのも原因だろう。
土生津が扉を開けると、霊安室になっており、部屋の中央にある作業台の上に、キューブ状の赤黒いゼリーが山のように積まれていた。
「二人死んでいたと連絡が入ったが、この山一つで二人かい」
「そうだ。瑰玉は2つあったから、二人分であると判断した。筋肉と骨、咏回路全てを等しく砕いてあったからな」
「どこで見つかった」
「不忍池付近だ」
屋敷を出てそうそうに襲われたらしい。ユーイチはいつもそうだ。何かに巻き込まれやすい。
「これは見つかった瑰玉だ。2つともダイアモンドだったよ」
「
「それはこちらで既に解析済みだ。正真正銘、亜鈴のものさ。インクルージョンも確認している。彼はどうやら、女学生を助けるために、殺害したらしい」
「そこまでわかっているなら、これは誰の死体なのかわかるのか」
「ああ、酒川製薬に所属している者だそうだ」
何故、酒川の亜鈴が、一介の女学生を襲うのだろうか。無意識のうちに、眼帯に触れていた。
「ユーイチの居場所を聞くために、肉塊の山の前まで案内したわけじゃないだろう。私自身、ユーイチの今の場所は知らない。今日は休暇を出している。私の可燃通信紙なんて持っていないだろうからな。まあ、いい。この二人を修理するよ。」
ひすいは左手を差し出す。土生津は、オケナイトとエメラルドをその手の平に置いた。
「瑰玉じゃないというのが、さすがのセンスだな。いいだろう。承った。作業に取り掛かろうじゃないか。3時間もあれば元通りだな」
ジャケットの内側に忍び込ませた、杖を振り、トランクケースから外科道具と、数種類の糸を取り出す。左手の指輪を撫でて、白衣とスクラブに変身した。
作業に取り掛かったひすいを見届けると、砂山が崩れるようにして、土生津も部屋を退出した。
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