アゲハ蝶 男:1 不問:1

カラス 謎の人物。

ミヤマ カラスに異様に懐かれる。


ミヤマ「…降り続いた雨も止んで、やっと帰れると思ったら…なんでお前に会わなきゃいけないんだ」


カラス「おや、ミヤマ君。奇遇だね」


ミヤマ「奇遇、ね。その奇遇が毎日のように続いたらそれは最早奇遇とは言わん」


カラス「そっか、確かに…奇遇ではなく、運命と言うべきだね!」


ミヤマ「…くだらんな」


カラス「おっと!待ってくれたまえ」(腕を掴む)


ミヤマ「…離せ、わけの分からんやつとは会話をするなと昔から教育されている」


カラス「へぇー、それは随分と素敵なご両親の教育の賜物だ。これからも大事にした方がいい」


ミヤマ「お前の割に聞き分けがいいな。しかし、そう思うのなら手を離して欲しいのだが」


カラス「それは無理だなぁ」


ミヤマ「……」


(カラスを振り払い歩き出す)


カラス「なあなあミヤマ君」


ミヤマ「あとをついてくるな」


カラス「聞きたいことがあったんだよ、ミヤマ君」


ミヤマ「話しかけてくるな」


カラス「君は好きな人はいるかい?」


ミヤマ「黙れ。お前と世間話をしたいわけじゃない。失せろ」


カラス「ひどいなー。でもその反応じゃいないね。青春とか、そういうのとは縁なさそうな学生生活を送っていそうだもんねー」


ミヤマ「勝手なことを言うな」


カラス「じゃああったのかい?」


ミヤマ「……」


カラス「ほらぁー。やっぱり好きな人もいないんだろう?」


ミヤマ「いるとしたら?」


カラス「え!本当に!?誰だい!?」


ミヤマ「…いるわけ、ないだろ」


カラス「なーんだ。君にしてはめずらしく嘘かい?」


ミヤマ「嘘じゃない、冗談だ」


カラス「そういうのなんていうか知ってるかい?」


ミヤマ「屁理屈だとでも?」


カラス「おー大正解。さすがミヤマ君だね」


ミヤマ「何が大正解だ。不愉快にしかならん」


カラス「まあまあそう怒りなさんな。私は君を遊びに誘いに来たんだよ」


ミヤマ「断る」


カラス「まあまあどんな遊びかくらい聞いておくれよ」


ミヤマ「断る」


カラス「ミヤマ君は虫取りは好きかい?」


ミヤマ「断る」


カラス「実は、アゲハ蝶を見かけてね。是非とも捕まえに行きたいんだよ」


ミヤマ「断る」


カラス「せっかく私たちにぴったりな遊びを見つけたのに、行ってくれないのかい?」


ミヤマ「ことわ…ピッタリだと?」


カラス「おー!食いついたね!」


ミヤマ「…早く言え」


カラス「わかっているとも。君と僕はアゲハ蝶に巡り合わせてもらったと言ってもいい!知ってるかい?カラスアゲハのことを!」


ミヤマ「それが?」


カラス「君と初めて会った時、君の周りを優雅に待っていた一羽の蝶がいた。それがカラスアゲハだ。だから私はカラスと名乗ったんだよ。そのほうが、運命って感じがするだろう!」


ミヤマ「……」


カラス「あれ?思わないかい?」


ミヤマ「ああ思わないな。心底くだらないと思っている」


カラス「えー!それは酷くないかい!?」


ミヤマ「黙れ。お前はどちらかと言えば知恵の働く鳥の方のカラスだ」


カラス「知恵が働く…!それは褒め言葉だね!」


ミヤマ「…悪知恵の方だけどな」


カラス「!あーー!!」


ミヤマ「今度はなんだ!いきなり!」


カラス「ミヤマ君!行くよ!さっき君の背後をカラスアゲハが通り過ぎていった!もしかしたら、水たまりで吸水している瞬間を観れるかもしれない!」


ミヤマ「腕を引っ張るな!勝手に行け!」


カラス「2度も私たちの前にカラスアゲハが現れるなんて、これは運命に相違ない!」


ミヤマ「…世界にカラスアゲハが一匹だけだとでも思ってるのか…?」

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