4,提案

 雄介は、良太と由香里にアロンから聞いたことを相談した。

 「そうなんだ、ギャラクシーユニオンの力を借りれば1年程でゾイバー星を元の状態に戻せるんだ。凄いね」

 「そうね、やはり宇宙の技術は相当発展しているわね」


 「問題はやはりゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させることだ。何か良い案は無いかな」雄介が二人に聞いた。

 「そうだな、まず問題はリンリンさんだね。リンリンさんが納得する方法は何だろう」良太が腕組みして考えている。


 「雄介君はまだ、リンリンさんとだけ話をしただけよね。リンリンさん以外のゾイバー星の人達はどんな考えを持っているのかしら」 

 「そうだね、リンリンさんは地球にどうしても移住したいと言っているけど、リンリンさん以外の人々も同じ考えだろうか」


 「そうだよ、雄介。リンリンさんはあれだけわがままだから、他の人々の意見も聞かずに、勝手に地球に移住すると言っているのかも知れないね」

 「そうよ、雄介君。一度リンリンさん以外のゾイバー星の人々の意見も、聞いてみたら良いかもしれないはね」


 「そうだね、ゾイバー星の人々はゾイバー星が元の状態に戻るのなら、故郷の星に帰りたいと言うかも知れないね。そうすれば、わがままなリンリンさんも考えを変えて、ギャラクシーユニオンに加入する為に努力するかも知れない」


 そして雄介は、リンリンと話をする為にゾイバー星の宇宙船の所に向かった。

 「リンリンさん、地球の天野です。こんにちは」

 「お前か、今日は良い知らせを持って来たんだろうな」

 「今日は、リンリンさんにお聞きしたいことが有りまして参りました」

 「何だ、聞きたいことと言うのは」


 「リンリンさんは、1年後に地球に移住したいと言われていますが、他のゾイバー星の皆さんも同じ考えなのでしょうか」

 「当たり前だ。そんなことを聞いてどうするんだ」


 「実は、もしゾイバー星を1年以内に元の状態に戻して、以前の様にゾイバー星に住むことができるとしたら、ゾイバー星の皆さんはどうなさりたいのか確認したいと思いまして、本日は参りました」

 「何だと、ゾイバー星を元に戻すだと。そんなことが可能なのか」


 「はい、可能です。ですから一度ゾイバー星の皆さんに確認を取って頂きたいのです。もしゾイバー星が元のように自然が豊かで、生活するのに快適な星に戻るのだとしたら、皆さんはどうしたいのか」

 「おい天野、もしゾイバー星を元の状態に戻すとすれば何か条件が有るんだろう」


 「はい、条件はあります」

 「何だ、その条件は」

 「それは、ゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入することです」

 「そのことは以前にも言ったはずだ。ゾイバー星は絶対にギャラクシーユニオンには加入しない」


 「リンリンさん、それはあなたが思っていることでしょう。ゾイバー星の皆さんは、もしゾイバー星が元の状態に戻って、自分達の故郷の星でまた快適に生活ができるのだとしたら、ギャラクシーユニオンに加入することもかまわないと、思われるかも知れないでしょう。


 それにギャラクシーユニオンに加入することで、何かゾイバー星にとって不利益なことが有りますか。何も不利益なことは無いはずです。どうかお願いです。ゾイバー星の皆さんに確認をお願い致します」


 「もしゾイバー星の者に確認を取って、それでも皆がゾイバー星にはもう帰りたくないと言ったらどうするんだ」

 「その時は、また新たな方法を考えます」

 「そうか、もし皆がゾイバー星にはもう帰りたくないと言ったら、その時は地球を必ず明け渡してもらうからな。いいな」


 「まあ、その時はまた考えましょう」

 「お前はのんきな奴だな。もしそうなってから慌てても知らないからな」

 「リンリンさん、皆さんに確認をお願いしますよ。また結果を聞きに参りますので、宜しくお願い致します。では今日はこれで失礼致します。さようなら」


 そして雄介は帰って行った。地球に帰った雄介は、リンリンと話したことを良太と由香里に話した。

 「雄介どうだった」

 「一様リンリンさんには、ゾイバー星の皆さんの気持ちを確認してもらうように、お願いして来たよ。それに今回はリンリンさんと話しをしてもイライラしなかったよ」


 「そうなの雄介君、それは雄介君の心が成長してきている証拠ね」

 「そうだといんだけど。でもリンリンさんと話しをしていて何だか嬉しかったよ。また一つの星を助けることができるかも知れないと思ってね」

 「そうだね、我々ギャラクシーユニオンは、宇宙の愛と平和の為に活動しているんだから、今度もゾイバー星をなんとしてでも救おう」良太が張り切っている。


 「ところで雄介君、もしゾイバー星の人々がゾイバー星が元の状態に戻るのなら、自分達の星に帰りたいと言ったとすれば、ゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させないといけない訳でしょう。どうやってギャラクシーユニオンに加入させるようにするの」


 「そうだね、それもかなりの難問だよね」

 「雄介、もしそうなったら、リンリンさんは考えを変えて、ギャラクシーユニオンに加入するように努力をするんだろうか」

 「分からないな。でもゾイバー星の人々が自分達の星に帰りたいのなら、リンリンさんに頑張ってもらって、ギャラクシーユニオンに加入してもらわないといけないな」


 「リンリンさんが考えを改めて、ギャラクシーユニオンに加入する努力をしても、現在加盟している全部の星が認めないと加入できないんだろ。ゾイバー星は以前にも、加盟している星に移住させろと何回か言ったらしいから、そんな星の加入を認めてくれるのかな」


 「その点もいい方法を考えておかないとダメだね」

 「もしリンリンさんがギャラクシーユニオンに加入する気に成ったら、リンリンさんに総会でプレゼンテーションをさせる気かい、雄介」

 「そうだな、それもどうすればいいかな。何だか問題が山積だな」雄介は腕組みをして悩んだ。


 「あま取りあえず、リンリンさんにゾイバー星の人々がどう言ったか確認してみるよ。そして皆がゾイバー星に帰りたいと言ったのなら、それから本格的にどのようにしてゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させるか検討しよう」


 雄介には、あのリンリンがギャラクシーユニオンの総会で、連合加入のプレゼンテーションをする姿を想像することができなかった。


 雄介は、数日後再びゾイバー星の宇宙船が停泊している所にやってきた。

 「こんにちは、リンリンさん。天野です」

 「お前か、また来たな。今日は何の用だ」

 

 「今日は先日お願いしていた、ゾイバー星の皆さんに、もしゾイバー星が元のように快適に生活ができる状態に戻ったとしたら、ゾイバー星に再び帰って生活がしたいか、確認して頂いた結果を聞きに参りました」

 「おおそうか。忘れていた」

 「忘れたら困りますよ。ゾイバー星の皆さんに確認はして頂けたのですか」

 

 「確認した」

 「それで、その結果はどうでしたか」

 「ゾイバー星の者は、もしゾイバー星が元のように自然が豊かで快適に生活ができる環境に戻るとすれば、ゾイバー星に帰ることにする」


 「そうですか。それは良かったです。ならリンリンさん、それを実現させる為には、ゾイバー星のギャラクシーユニオンへの加入が条件です。その点も宜しいのですね」


 「天野、お前がこの前、ゾイバー星が元のように戻ったらどうするかゾイバー星の者に確認しろと言ったから、皆にその話をした。そうしたらゾイバー星の者は皆その気になってしまっている。ゾイバー星の者皆が自分達が生まれ育った星に帰るんだと意気込んでいるんだ。もう俺の言うことなど誰も聞こうとせず、皆その気になってしまった。どうしてくれるんだ、天野。お前の責任だぞ」


 「そうですか。でもそれは良かったではないですか。ゾイバー星の皆さんの気持ちが一つになればギャラクシーユニオンに加入する条件もクリアしやすいです」

 「おい天野。ゾイバー星を元の状態に戻すには、ギャラクシーユニオンに加入することが条件だと言ったな」


 「はい、そうです」

 「お前はそれが可能だと思うのか。俺にはどうしてもゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入することなど不可能としか思えない」

 「そうですね。色々と問題は有ると思います」

 「俺らゾイバー星が、ギャラクシーユニオンに加入する為に必要な条件は、何が有るのか言ってみろ」


 「はい、先ず一つ目は、ゾイバー星が争いの無い平和な星であること。二つ目は、ゾイバー星の皆さんが助け合い、協力し合い、いたわり合うこと。三つ目は、ゾイバー星が愛に満ち溢れた幸せな星であること。四つ目は、ゾイバー星の全ての人が、他の星人と友好的であること。そして五つ目は、リンリンさんがゾイバー星代表としてギャラクシーユニオン総会で入会の為のプレゼンテーションをすることです」


 「そうか、最初の三つは既にクリアしているな。問題は四つ目と五つ目だな」

 「リンリンさん、ギャラクシーユニオンに加入する気になってくれたんですね」

 「お前は変なことを言う奴だな。お前がギャラクシーユニオンに加入しろと言ったんだろう」


 「でもリンリンさんは、絶対にギャラクシーユニオンには加入しないと言っていました」

 「そうだったかな。そんなことを言ったかな」

 「まあいいです。リンリンさんがその気になって下さったのなら文句はありません。ゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入できるように私が全力で協力させて頂きます」


 「そうか、それはありがたい。もうゾイバー星の者は皆、ゾイバー星に帰る気になっているから後戻りはできないぞ」

 「わかりました。ではリンリンさんがギャラクシーユニオン総会で、プレゼンテーションをする計画は私が立てますので、リンリンさんは、ゾイバー星の皆さんが他の星人と友好的になれるように、皆さんに働きかけて下さい」


 「おお分かった。皆に言ってみることにする。天野、我がゾイバー星は長年の間この宇宙の中を放浪して来た。だがもう限界に近づいているのだ。ゾイバー星に住んでいた頃のゾイバー星人は何十億人と居たが、それも段々と環境悪化と共に人口も減り、今では1億程の人口に成ってしまった。


 このままではゾイバー星は本当に無くなってしまう。だから早く何処かの星に移住しなくてはいけないと思い、今回なんとしてでも移住してやると思って、地球に目を付けて来たのだ。だが天野、俺はお前に会えて良かったと思うぞ。この放浪生活の間、幾つもの星に移住させろと言ってきたが、どこの星も俺達のことを嫌って追い払われてきた。


 だが天野は違う。今まで俺達が出会った奴の中で、真剣に俺たちのことを思ってくれているのはお前だけだ。この広い宇宙の中でゾイバー星を救ってくれるのは、天野しかいない気がする」


 「そうですか。そう思って頂けて私も嬉しいです。リンリンさん、実を申しますと今回ゾイバー星が地球にやって来たのは、私の心の奥底に有る物がゾイバー星を引き寄せたのです。


 そして、その私の心の奥底に有る物を変える為の試練を、リンリンさんが私に与えて下さったのです。私にとってゾイバー星やリンリンさんを助けることは、感謝しかありません。ですから誠心誠意でゾイバー星の皆さんを救う為に全力を尽くします」


 「そうか、そんなことが有るのか。俺からも宜しく頼む。もうゾイバー星の力ではどうにもできないのだ」

 「分かりました。ではギャラクシーユニオンに加入する為の計画を立てて、またやってまいります」

 「おおそうか。宜しく頼むぞ」


 雄介は地球を目指して帰る途中、雄介の心の中は感謝の心で一杯になった

「ありがたい。ゾイバー星の皆さんやリンリンさんが気持ちを変えて下さった。本当にありがたい。よし何としてでもゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させてゾイバー星を救うぞ」


 雄介は、自分の心の全てが感謝と喜びに包まれている感じがしていた。雄介は、地球に帰り良太と由香里にリンリンが言ったことを話した。

 「雄介君、あなたは凄いわね。あなたの心が変わることによってリンリンさんやゾイバー星の人々を変えたのね」由香里は興奮気味だ。

 「雄介、僕も君の心の力には感心するよ。凄いよ。この調子でゾイバー星を是非ともギャラクシーユニオンに加入させて、ゾイバー星を救っていこう」


 「そうだね、僕も嬉しいよ。よしこうなったらギャラクシーユニオンに、どうやってゾイバー星を加入させるかが問題だ。リンリンさんがゾイバー星はもう限界に近づいていると言っていたから、もって一年程だろう。早急にゾイバー星を加入させて、ギャラクシーユニオンの力でゾイバー星を、元の状態に戻していかないといけない。アロンもゾイバー星を元の状態に戻すには1年位は掛かると言っていたから、もうあまり時間が無いぞ」


 「雄介、ゾイバー星を加入させる為に総会は開催するのかい」

 「そうだな。今から総会会場を選んで、そこに全星の代表に参加してもらうとなったら会場の準備等でかなりの時間が掛かるな」

 「だったら雄介君、今回のギャラクシーユニオン総会はオンラインで各星を繋いでやるのはどうなの」


 「そうだね、それはいい案だね。でも地球にはまだそんな技術は無いよね」

 「プッペ議長のモナム星ならどうなのかな。モナム星では何回か総会も行われたし、各星への通信回路が繋がっているんじゃないのかな」

 「そうよね、プッペ議長に聞いてみても良いか知れないわね」

 「よし早速プッペ議長に聞いていみよう」


 雄介は、早速プッペ議長に連絡を入れた。

 「プッペ議長、こんにちは、地球の天野です」

 「雄介様。こんにちは、その後ゾイバー星はどうなりましたか。追い払うことになりましたか」


 「いえいえ、そうではなくて、ゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させる話が進んでいます」

 「雄介様。以前も言いましたけど、それは絶対に無いです。少なくとも私は絶対に反対です」


 「まあまあ、プッペ議長そう言わずに私の話を聞いて下さい。今回ゾイバー星が地球に移住させろと言ってきたのは、ゾイバー星だけの問題では無くて、私の心の奥底に有る悪い感情が招いたことだと言うのは話しましたよね。そこで私も自分の心の奥底を変える努力を致しました。


 するとリンリンさんやゾイバー星の人々が変わってきているのです。もうリンリンさんも、以前のようなわがままなリンリンさんから変わりつつあります。そしてゾイバー星の人々の為に私も誠心誠意で尽くすことによって、私の魂も成長していけるのです。どうかその点をご理解下さい」


 「そうですか、しかし私にはリンリンが変わったなど、到底信じられません」

 「そうですよね。以前プッペ議長とリンリンさんの間には色々と有ったのですね。分かりました。一つだけプッペ議長に確認しておきたいことが有るのですが宜しいですか」


 「はい、何でしょうか」

 「もしゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入するとして、その為に総会を開催するに当たりもうあまり時間がありません。そこで各会員の星をオンラインで繋いで総会を開催する案が有るのですが、各星を繋ぐ回線がモナム星には有るのですか」


 「それは有りますが」

 「そうですか、有りますか。それを聞いて安心しました」

 「でもモナム星の回線を使って、ゾイバー星の為に総会を開催することはできません」


 「プッペ議長、もしリンリンさんが以前のリンリンさんのようでは無く、宇宙全体の愛と平和に貢献したいと言い、プッペ議長にも以前のことを謝罪したいと言ってきたらどうしますか」

 「そんなことはありえないでしょう。もしあのリンリンが私にそんなことを言ってくれば、私も考えを改めても良いですが、そんなことが有りますか、雄介様」


 「わかりました。ではもう少しお待ち頂けますか。また連絡させて頂きます」

 「雄介様、以前も申しましたけど、あのリンリンとは関わらない方がいいですよ」

 「ご忠告ありがとうございます。ではまた連絡します」そして雄介はプッペ議長との交信を切った。良太と由香里が側でプッペ議長との交信を聞いていた。


 「プッペ議長はリンリンさんのことを、相当嫌っているみたいだな」

 「そうね、でもその点もなんとか解決してあげないと、プッペ議長の心の中にも悪い感情が残ったままだと良くないわよね」

 「そうだね、リンリンさんの変化をプッペ議長にも分ってもらって、是非ともプッペ議長の心の中も愛と平和で満たして欲しいね」

 

 「でも雄介、プッペ議長に協力してもらえたら、オンラインでの総会が開催できそうだね」

 「プッペ議長に協力してもらえるように、リンリンさんにも言ってみよう」

 「それで雄介、リンリンさんに総会でのプレゼンテーションを、どんな風にやってもらうつもりなんだい」


 「そうなんだ、そこも僕達で大体計画を立てておこうと思うんだ」

 「そうね、リンリンさんがその気になっている今がチャンスね。今のうちにプレゼンテーションの計画を立てて、もっとリンリンさんにやる気になってもらって、一気に物事を進めて行かないと時間が無いかもね」


 「そうだね、プレゼンテーションに先ず必要なのは、ゾイバー星が平和で愛に満ち溢れた星で、皆が協力し助け合える星で有ることを伝えることと。次に他の星人とも友好的で有ることを伝える。そしてゾイバー星はギャラクシーユニオンに加入して、連合の力を借りないともう滅んでしまう状態であることを伝える」


 「それらを基にしてリンリンさんにプレゼンの内容を考えてもらうと良さそうだね。何だか上手くいきそうだね、雄介」

 「じゃあ、これを明日にでもリンリンさんに伝えてくるよ」

 三人は、ソイバー星を救おうとやる気になってきた。

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