18. 勝てるようになってね
「そもそも、なんで闇属性が使い物にならないか知っているよね?」
目の前に立つルシリスは、人差し指をピンと突き立てる。勉学に精通している私は、当然のように知っている。
「基本的に獲得できる魔法がほぼほぼ実用的じゃないから……だよね?」
ルシリスが嬉しそうに頷くと、少しだけ不安が薄れた。
「他の属性は全て攻撃や防御で少なからず実用性があるんだけど、闇属性だけはそうじゃない。あくまで補助的な部分が多くて、実践訓練じゃほぼ意味がない魔法が多いんだ。だから一般的に闇属性は、『劣等生』のレッテルを張り付けられる」
その言葉に、図らずとも苦虫を嚙み潰したような表情になる。甘い言葉を投げてくれたっていいんじゃないかと思ったけど、ここで濁らせても後の為にならないから、彼女の言うことが正しい。
「入学試験は適性属性に頼らず、基礎の魔法だけで実力を測ったからその心配はなかったけど、今回の試験じゃ話が違う。おかしいよね、入学して一週間何にも習っていないのに、急に適性属性を交えた対人型の訓練を行うなんて」
内部進学を前提とした進学校の一年目を思い出した。外部生からすれば絶望的だったあれを、全員外部生の学園で行うんだ。流石異世界、やることが規格外。
「適性属性のツリーから放たれる魔法に、基礎魔法は勝てっこない……それがセオリーなんだけど。ユリの場合は、少し可能性があるんだよ」
「さっきの『面白いかも』ってのが、それの事?」
「そう。ユリの魔力から溢れ出る闇属性への適性は、従来のそれとは大きく一線を画しているんだよ。だから、私すら知らない闇魔法も、ユリなら使えちゃうかもしれないんだ」
ふむ、と半ば疑問ながらも納得していた時、一つの違和感が頭を走る。
なんで、私にそんな適性あるんだろう。いや、そんな懸念持つ意味なんてないかもしれないけど。だけど、何故かそれが引っかかった。
指で顎を掻きながら、数秒間唸ると。それは、意外な真実に辿り着いた。
「そういえば私、悪役令嬢だった」
なーんだ、そういう事か。考えてみれば簡単だったわ。この世界の元の私、悪役令嬢としてはまあまあな地位まで上り詰めてたわ。適性が闇なのも、それが異常な数値なのも納得できたわ。
「出来る訳ないやろがい!!!」
思わず、一人漫才を行ってしまう。
普通に火とか水とかの魔法使ってみたかったよ! あれの一級とか準特級魔法凄いカッコいいんだよ!?
届かない嘆きを叫ぶと、虚ろな目をさせたルシリスがトントンと肩を叩く。
「ユリ、大丈夫? お医者さんに見てもらう?」
ノアとは違う純粋な心配に、心を痛める。ふう、と自分を落ち着かせ、平然を装う。
「ごめんね、大丈夫。少し自分に絶望してただけだから」
「その言い方じゃ全然安心できないんだけど……」
「そんな話はいいからさ。この一週間、私は何をすればいいの?」
適性属性への絶望も終えたところで、この先の目標について問う。
「ツグには、正攻法で戦っても勝ち目はないだろうから。むしろ、奇策を取れる闇属性を使える方が、勝てる可能性があるかもしれない」
ルシリスは背をこちらに向け、向こう側にカツカツと歩く。
「だからこの一週間は、様々な闇属性の魔法の獲得、それの実践練習のために費やす。そして、最終日には」
魔力を込めた手をこちらに差し向ける。パチパチと光るそれは、とても幻想的で。次に彼女の口から出てくる言葉と、相反していた。
「私に勝てるようになってね」
「……マジか」
さりげなく、とんでもない目標を設定された。
そうして、ルシリスの誘惑と奇行を耐え忍びながらも、一週間が過ぎ。
――決戦の日が、やってきた。
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