イラスベスの憂鬱

 教頭先生に呼び出されてから、アリスちゃんが突然のホームステイに行ったと聞かされ学校中が騒然のなった。

理由はアリスちゃんが、居なくなっからではない。もちろん、居なくなったのもあるが……それより、アリスちゃんのご両親が学校に乗り込んできたのだ。

しかも、学校に武装した兵士を引き連れて。

みんなその事に怯えていたし、怖がっていた。そのせいで、ホームステイでは無いことが学校中全員が理解していた。

何より、アリスちゃんが居なくなって、クラスどころか学校中のほとんどの人がアリスちゃんが居なくなって一人の私を心配してくれた。

いつの間にか、アリスちゃんの役割を私がやるようになっていた。まぁ、元々私はクラス委員長だ。人をまとめるのは好きだった。

でも、違う。

アリスちゃんがいるべき場所に私が居てはなんの意味もない。


コレでは、親友を落とし入れてここ居るみたいじゃない…


だから、私は教頭に直談判に行った。

「アリスちゃんはどこですか!」

「さぁ?」

「とぼけないで!貴方がどこかへやったんでしょ!」

教頭は深紅のマキュア塗って息を吹きかける。

今は完全にオフの状態らしく、二十代ほどの髪の長い若い女性姿をしている。

「確かにホームステイ先は私が決めた。けれど、それは彼女の成長の為だ。イラスベス・レッドローズクイーン。君に文句を言われる筋合いは無いはずだよ?」

教頭はエフルの耳をピルピル動かして背中を伸ばす。長い爪にまたマニキュアを塗り始め、私の話は真剣に聞く気がない事がよくよく伺えた。

「それでアリスちゃんのお母さんと話したんですか?」

嫌味として聞いた。

「嗚呼。そうだよ」

ふうに答えた。

「教頭でしょう……貴方は…!校長に無断でこんな事して……」

「おいおい、逆になんで君らが苦言を呈する事が許されると思ってるんだい?この学校も国も、私が作ったものなのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・全く。これだから人間って奴は恩知らずと言われるんだよ」

教頭は黒い瞳を畳むように細くして小さな瞳孔にしてしまえば、アリスちゃんより鮮やかで美しい血のように真っ赤な瞳が現れる。

教頭は椅子のクッションに体重を預け、手を組む。

「全く。アリスの母にも困ったものだよ。王家の血が混じった高潔な一族〜なんて、私の血を自慢・・・・・・してくるは……頭の足らない母親だ」

「先生………何処にアリスちゃんを預けたんですか!」

「はぁ〜〜〜そうかっかっしなさんなよ。異世界に追放なんてよくある話だろう?それを下までさ」

「大罪人の扱いじゃないですか!!!!」

ムカつく。こっちはアリスちゃんが心配でたまらないのに。全てをねじふせる力を持っているから、尚更!ひもじい思いをしてないだろうか。魔法が使えないから、火を起こすのも一苦労だ。何も出来ない女の子・・・・・・・・・を追放するなんて、無責任にも程がある!

「侮辱も同然じゃないですか!」

「何故だ?可愛い子には旅をさせよと言うだろ?あの子に何も出来ないお人形で居られては私は困る。彼女の人生は、君の想像を絶するものになる。だから、ちゃんと悩んで成長してほしいんだよ。それには、あの親は鳥籠でしかない。鳥籠の鳥が、餌の撮り方覚えるか?違うでしょ?野生にいれば、取らなくちゃ死ぬ。

ほかの仲間のやり方を覚える。

ほかの母鳥の形をちゃんと見るんだ。

或いは、かけがえのない番を見つけるかもしれない。

比翼の鳥のように大空を二羽で飛び回るかもしれない。その土地でそこに至る全てがアリス自身の選択であるべきなのさ!………良くも悪くもな?」

「…」

「これが私の持論。アレだけの才能を持っていながら、お人形で居られては困る。という訳だ」

「教頭先生。教えて下さい。アリスちゃんの居場所を」

教頭先生は何かを感じ取ったのか、机を漁りながら答える。

「………。江戸だ。別世界のジャパンと呼ばれる島国さ。行きたければ行けばいい。それと……」

そう言って机の上におもそうな紙束をドンと置いた。

「行くなら君の論文を試してみるといい。召喚魔法・・・・ならあそこでも使えるはずさ」

(教頭の目的が分からない。なんで今、私の論文持ち出したの?)

「そんな難しい顔をするなよ。行くなら君にも成長してもらわなくちゃ困る。それだけさ。言っておくけど、異世界転移は、時間だがの幅がランダムだから気おつけて。遅れた一分が一日なんてざらにあるから気おつけて」

「分かりました」

「なぁ、質問いいかい?」

「はい」

「君はアリスの事が嫌いだろう?」

「違います」

「コンプレックスの塊が目の前にいる気分とは一体どんなものなんだ?」

「…」

「君には家柄が無い。血筋も無い。アリスの様な極度の才能も無い。逆に言えば、それ以外を持っている。アリスもだが、お互いは自分の持つコンプレックスの塊を親友と称しているのだろう?私からしたら、気味が悪いな」

「………。別に。そんなこと考えてなかったです」

「そうかい。あ〜ぁ、それと。アリスは君と居る時より笑っているよ・・・・・・・・・・・・・それでも行くの?」

「っ!見なきゃ分からないでしょ!!!」

最後の教頭の言葉に対して頭に血が上った。勢いよくドアを閉め、私は教頭室を去ったのだっだ。

残された教頭はポつりと呟く。

見えるから言ったのに…・・・・・・・・・・・

私は学校の裏にある森で世界転移の魔法陣を書く。

頭の中で、教頭のセリフが木霊する。

『君といる時より笑っているよ』

うるさい。アリスちゃんは私の親友なの。私以外と仲良くしないでよっ!私の傍から離れないでよ!私以外を友達って言わないでよ!

『イラちゃん!』

アリスちゃんの事を考える度に、逢いたい気持ちが募る。

私以外と仲良くするなら、そんな場所に居ないで。

私以外……私……以外……

私にとって、アリスちゃんは大事な友達。

私が、親友なんだから!

書き終えた魔法陣の真ん中に立つ。

転移魔法は召喚魔法に近い。そして、想像しやすく、数字に近い。何より、使う魔力量が少ないのがありがたい。

誰でも出来るもの。

いい血筋で魔力がある訳でもない、場所もお金がある訳でもない私にとって、最も極められる魔法。

計算と座標が合っていれば、私はできる。・・・・・・だって、私は天才だから。

魔力を入れたら、魔法陣が光る。

私は一言唱える。

『運べ』

……

それからアリスちゃんが来る一年前の江戸に着いた私は、アラクネを召喚した。

自分の論文を実践で使うなんて思わなかったけれど、でもそれでが上手くいった。

今に戻ってアラクネがアリスちゃんを連れて帰るのを待っていた。

所か、アラクネは消えて、来てみれば、アリスちゃんは男とイチャついてる!

しかも、当たり前にこの世界の服……男の人と同じ様に、着物を着てる。洋服じゃない!

ムカつく。ムカつくムカつく!ムカつく!

ムカつく!!!!!!!!!!!!!!!!!!

「イラちゃん………」

泣きそうな顔で私を見るアリスちゃん。その目が、どこか強くて、前とは違うって、成長したんだって………いやでも思い知る。

違う。そんな目で私を見るな。

「なんで………アリスちゃん………私なんかどうでもいいの?私なんて、すぐに捨てられるの?」

「イラちゃん?何を言ってるの?」

分かんないよね。分かるよ。君は、私より強いから………大きな場所の変化に耐えられてしまう。

日常が少し変わっただけで、私はこんなに怖がってるのに!!

『君といる時より笑っているよ』

「教頭の言う通りだった。私といる時より笑ってる」

「イラちゃん……?ねぇ、何の話なの?なんでこんな事したの?」

私の心配じゃないんだ。理由なんだ。そっか………もう興味無いんだ。アリスちゃんは。

「………き…い………」

着物の男の人はアリスちゃんの前に立って、腰に付けている剣を構える。

「下がれ」

その姿は騎士ナイトそのものだった。

「っ!!」

私が………その位置にいたのにっ!私以外の隣にいる君なんて。

「アリスちゃんなんて…………大っ嫌い!!!!!」 

無意識だった。

無意識だったの。

血が飛んだ。アリスちゃんは突き飛ばされていた。

私が出した氷が男の人の右肩と頬と首を少し抉った。

それだけなら、まだ良かった。私が放ったのは魔法の氷だ。抉った傷口が凍っている。

やってしまった。

「ちが、私……そんな…ちがっ!」

男の人の冷たい目に私は体が震えた。鈍い白い光が私の目の横を通り過ぎた。

「センセッ!!!殺さないで!!!」

アリスちゃんの叫び声でハッとする。ボーッとしてないはずなのに、男の人が隣に居た。

(え……?なんで………隣に……?)

月の光が入って真っ黒な瞳が黄色く見えた。

がつっ!!!

首筋に何かがをぶつけた様な衝撃が走り、私の意識が暗くなっていく。

あ………れ……これ…まずい………………。

たくましいからだが私を支えたのを最後に完全に意識が途絶えた。

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