不明スキル保持者の受難
HYA
第01話 異世界召喚
「おおーっ!」
「まぁ!」
「成功だ!」
ざわめく声が聞こえる。
気がついたら陽が差し込まない灯火のみの薄暗い石造りの部屋に私は居た。
さっきまで、信号待ちをしていたはず。
本日は新車の納入日であり、華の金曜日。喜び勇んで午後休をとり、納車された車を乗り出し始めたばかりだ。
前から欲しかった、タイハツのSUV「ラッキー」の4WDモデル。折角の慣らし運転中だったはずなのに、何処だここは?
しかも、身一つだぞ。折角の新車は何処へ行った!?
体をまさぐってみたが、ポケットには何も入っていない。
気を取り直して周囲を見渡すと、近場の進学校の制服を着た少年2人と少女1人が近くに居た。
思い出した。信号待ちの途中で少年少女を中心に半径5m位の魔法陣のような物が浮かび上がっていたことを。
少年少女達は横断歩道手前、私は停止線の先頭で、ギリギリ魔法陣の中に入っていたようだ。
まさか、これが異世界召喚って奴か?
少年少女達も困惑した表情を浮かべ、周囲を伺っている。
「こちらを向け!」
体育館の雛壇の様な場所に、老人1人、若い女性が1人、複数の甲冑を着た兵士が複数人居て私たちを見下ろしている。
声の主は老人のようだ。
「付いて参れ!」
前を見ると、雛壇の両脇に小さな階段があり、中央奥に上り階段が見える。武装した兵士もいる。下手なことは出来そうに無い。
仕方が無いので、老人の後を付いていく。私の後に、高校生達、兵士達、若い女性も続いて行く。
今度は又石造りではあるが小部屋に通される。小部屋の中央には台座があり、その上に水晶玉が載せられている。また、入り口に向かい合う壁面は漆喰が塗られ平坦になっている。
老人が言う。
「一人ずつ水晶玉に触れよ。」
私が触れようとしたが、どうやら興味が勝ったのか高校生の一人が触れると水晶玉が輝き、まるでプロジェクターのように漆喰の壁面に文字が投影される。
【名前】佐久間 麗雄(レオ サクマ)
【年齢】17
【スキル】剣術
【ユニークスキル】聖剣召喚、異世界言語自動翻訳
若い女性が思わず呟く。
「勇者・・・。」
「さあ、次の者!」
女子高生が触れる。
【名前】相川 聖(ヒジリ アイカワ)
【年齢】17
【スキル】聖魔法
【ユニークスキル】完全回復、異世界言語自動翻訳
「おお!聖女だな。」
続いてもう一人の男子が触れる。
【名前】君島 賢治(ケンジ キミシマ)
【年齢】18
【スキル】四属性魔法(火水土風)
【ユニークスキル】並列発動、異世界言語自動翻訳
「賢者か・・・。これは当たりだな。」
「最後はお主だ。」
私も触れる。
【名前】海原 海斗(カイト カイバラ)
【年齢】27
【スキル】
【ユニークスキル】Summon U.S. Navy、異世界言語自動翻訳
(何だ!? 私だけが違う?)
「スキル無しか・・・。」
「ユニークスキルはあるようですが、文字も読めないし意味不明ですわ!」
「外れ・・・。」
「ギャハハッ!」
「おっさん!ウケる~。」
「ププッ。」
先の3人に対し、私に向けられる視線の殆どは、落胆・侮蔑、大凡好意的な物は無かった。
「お主らのスキルも確認できたので、これより皇帝陛下に謁見して貰う。くれぐれも粗相の無いように。」
(問答無用かよ。召喚の時点で駄目なタイプの異世界転移だが、これでは先が思いやられるな。)
老人達に先導され、豪華な大扉まで連れてこられた。
「今から礼儀作法を仕込むことが出来んのは陛下も承知しておられる。よって、最低限の事だけ申し伝える。謁見の間へ入室後、壇の手前で止まり、片膝を立て跪け。頭は下げたままだ。陛下からお許しが出たら頭を上げるように。」
扉が開く。
「勇者殿、ご入来!!」
扉の脇に控えた近衛兵が大声で叫ぶ。
雛壇を見ると、2つの玉座に皇帝と皇妃とみられる人物が座っていた。
皇帝はでっぷりと太り、脂ぎっている。豪華な服にゴテゴテとした悪趣味な装飾を身にまとっている。皇妃も似たようなものだ。
雛壇の下には宰相と思しき豪華な服を着た壮年の男がおり、謁見の間の両側には、これまた豪華な服を身にまとった面々がこちらを不躾な視線で眺めていた。恐らくこの国の貴族達だろう。不快感が増してくる。
雛壇の手前で止まり、皆不承不承であるが跪く。
「朕は神聖ロッサリア帝国皇帝、ヨシフ・ロッサリアである。勇者達よ、面を上げよ。」
顔を上げると、先程の老人が宰相の反対側に立ち、王妃の横に先程の若い女性が立っていた。あの女性は皇女のようだ。
「異界より召喚され勇者達よ。これより我が神聖ロッサリア帝国のために尽くすことを許す。今後のことは宮廷魔道士長と第一皇女のエカチェリーナに説明させる。エカチェリーナ、後は任せる。」
「はい。陛下。」
「勇者殿、付いてきてください。宮廷魔術師長も共に来るように。」
皇女と宮廷魔術師長に先導され、小部屋へと連れてこられる。
「勇者殿達にはこれより訓練を受けて貰います。仕上がり次第、我らの覇業を阻む南の魔国へ打って出る事になるでしょう。そこでの戦いで戦果を上げたら、見目麗しい素性の良いパートナー、財貨、爵位と言った手厚い恩賞を与えることを約束しましょう。」
「おおっ!俺は可愛くて綺麗な子を侍らせたいぜ!」
「アタシ、イケメンが良いな~。」
「爵位。良いですね。」
「……。」
「宮廷魔術師長、後は任せましたよ。」
皇女が退出する。
「一名説明しても無駄な奴がいるが、時間が無いので早速スキルについて教えてやる。
スキルはその道の適性があると言うことだ。よってレオ殿の剣術スキルであれば、初めからある程度の剣術技が使える。それに必要な体力も備わっている。
ヒジリ殿もケンジ殿も同様だ。魔法系のスキルなら初めから魔法が使えるし、魔力も備わっている。勿論、訓練することでその力は更に増していく。
次にユニークスキルだ。これは異世界召喚の際に勇者殿の体がこの世界に適合するよう作り替えられる際に付与される物だ。体が作り替えられるので、元の世界には戻れんが、その分丁重に扱うことを約束しよう。
そうそう。異世界言語自動翻訳は皆共通して与えられる。じゃないと意思疎通も侭ならんからな。
本題はそれ以外のユニークスキルだ。この世界に人間でユニークスキルを持つ者は稀だ。しかも強力な物となると更に少なくなる。それ故、お主らを召喚したのだ。異界からの召喚者には漏れなく強力なユニークスキルが付加されるのでな。
スキルが強力すぎる故、今ここで使ってはならんが、ユニークスキルを頭の中で思い浮かべてみよ。自ずと使い方が分かる筈だ。」
「確かに聖剣が召喚できそうだな。剣術スキルと合わせた時が楽しみだぜ!」
「何だかすごいって事は分かったわ。」
「この並列発動は良いね!力が続く限り魔法が打ち放題って感じだよ。」
私も同じように思い浮かべてみる。
(これは…!)
「夕刻より食事会を行うが、整うまで時間がかかる。勇者殿達にはそれぞれ部屋を与える故、寛いで頂きたい。専属の使用人も付けるので、して貰いたい事があったら遠慮無く申し出てくれ。」
聞こえなかったが、宮廷魔術師長が部下に耳打ちし、指示を出す。暫くすると、使用人達がやってきた。皆見目麗しい容姿の者達。
レオ君とケンジ君には若い女性が。ヒジリさんには若い男性が宛がわれる。
そういう私には、鎧を身にまとった騎士が近づいてきた。
「さあ、勇者殿はこちらへ。」
高校生達が使用人達に案内されて部屋から出る。その後宮廷魔術師長と部下達が出て行く。
騎士が言う。
「お前は私についてこい。」
何だか雲行きが怪しくなってきた。
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