第12話

 アンモニア臭が濃くなる。

三村は息を潜め、思惑した。


三村(落ち着け、近くには確か、木の幹に突っ込んだ車の展示物があったはずだ。あそこに逃げ込めば…)


 そこまで考えて、ちげぇだろ!と目を見開く。

逃げてばかりでは、いつか追い詰められる。

戦うんだ。

その為に、ルナに剣の在り処を教わったのだ。

不思議と、恐怖は消えた。


三村(…そうと決まりゃあ、まずはこの匂いをやり過ごす)


 作り物の木の後ろに、じっ、と息をひそめる。

徐々にアンモニア臭が薄れていく。

すかさず、三村は走り出した。

タンブルトアの部屋は、すぐ隣だ。

その動きに呼応するように、クマネズミも後を追う。

戦うと決めた三村の手足には、力が漲っていた。

気がつくと、まるで宇宙の空間にいるような、キラキラの星がドーム型の天井に散りばめられた空間にいた。

クマネズミが背後に迫る中、三村はその天体をあしらった部屋に気を取られたが、すぐに目を走らせた。


三村(クリフィントールの剣は…)


 何かがはためいている。

パタパタ、パタパタ。

三村は目が飛び出すほどに、それを凝視した。

一瞬で目が血走った。

そのはためく旗には、剣が描かれていた。


三村「はっ、はっ、はたのっ、けんっ」


 こんなヘニャヘニャの剣で、どうしろというのか。

三村は、ルナアアアアッ、という叫び声を上げた。


クマネズミ「キッシャアアアッ」


三村「はっ、はわああーっ」


 あまりの恐怖に、三村の頭皮から、全ての毛が抜け落ちた。

クマネズミの汚らしい牙が三村の喉元まで迫る。

キュウウン、という、機械音がした。

三村の体から熱が発せられ、次の瞬間、クマネズミの体が四方八方に砕け散った。

地面には抉り取られたような後があり、その先に赤色に燃え上がった三村の姿。


三村「…トラック野郎モード、OFF」

 

 じゅうう、と体から煙が立ちこめた。


三村「何年ぶりだ、これを使うのは。納期がギリギリの、運送以来だぜ」



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