第9話

 所長の上原には、従業員を守るという使命がある。

ローリーの返答次第では、このゲームプレイを断念する決断も必要となる。

それを察したローリーも、言葉を選ぶ。


ローリー「まず、このゲームで命を落とすことは絶対にあり得ません。もちろん、何らかの持病が要因してということはあり得ますが、すでに事前の健康診断の結果などからも、あなたを含む参加者5名には何ら問題はありません。しかし…」


 やや間を開けて、ローリーが次の言葉を紡ぐ。


ローリー「ゲームがあまりにもリアルに作られていて、例えば実際に寒さや熱、衝撃なども伝わる為、敵からの強力な攻撃を無防備に受けた場合、トラウマになる可能性はあります」


所長「…その攻撃に関して、こちらが防ぐ術はあるんですか?」


ローリー「もちろんあります。参加者のデータを元に、何らかのスキルが付与されます。その中に防御系のスキルがあれば、それを発動させればいい」


 ゲームはいわゆるパーティを組み、それぞれの参加者に応じたスキルを駆使しながら、敵を倒す、というのが大筋とのことだ。

スキルは事前に会社から提出された参加者の履歴書の資格欄をAIが読み込み、反映させるらしい。


ローリー「今回は所長さんも参加されますね。環境衛生管理技術者や、電験3種といった資格。これらは強力なスキルとして反映されるハズです」


 そこまで聞いて、上原は防御については分かった、と返事をした。

そして、次に最も肝心な、敵の攻略。

具体的な倒し方について、質問をする。


ローリー「リアルなゲームといっても、そこはやはりゲームなので、攻略法は用意しています。敵は空中にいたり、天井に張り付いたり、攻撃が届かないことも多い為、遠距離攻撃を仕掛けます。遠距離には属性があり、ヒットすれば敵は地面に落ちます。そこを、叩く。遠距離と近接をうまく使いこなすことが攻略のカギです」


 このシステムを、ローリーは「ダブル・ウエポンシステム」と呼んだ。

このシステムが、このゲームをゲームたらしめる点であり、攻略は決して不可能ではないと言う。

上原は先ほどのトラウマの件で、少し返答に悩む。

しかし、もしこのゲームがスタジオツアーに実装されれば、世界初。

凄まじい集客力になるだろう。

それを上原の一任で無下にすることはできず、参加することに最終同意した。


ローリー「では、こちらにサインを」


 上原は、ローリーの差し出した同意書にサインをし、いよいよ明日、上原を含めた5人、

真猿、翼、マリア、三村らが、ゲームをプレイすることとなる。

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