Day 37 人類雑居地
ムユリに聞いた場所はムウマが言っていた通りの場所、人類雑居地だった。
ただ、もっと具体的な場所まで教えてくれた点は違ったが……。
屋敷を出る前、ムユリにムウマの事を聞いたら。
『ちょっといろいろあって、ね。』
そう言って会わせてくれなかったし、どこにいるのかも話してくれなかった。
予想通り、死んでいるだろう。
それか……いつも通り、ムユリの歪んだ欲望の捌け口になっているかだが……俺にはもう関係が無い。
「しかし、何故俺達は裏側から出てきたんだ?」
「説明があったのに聞いてなかったんですか? 街の人に引き止められないように、面倒事に巻き込まれない為だって言ってたじゃないですか」
ソレビア達に見つかれば面倒事になるって言われたが、アイツらがいればもっと早い移動手段があったかもしれないのに、もったいない。
「手が当たってます。きゃーへんたーい」
俺は今、ナナシムに背負われている。
当たっているとは、手が彼女の胸に当たっている事を言っているのだろう。
「機械人形って、そんな感情も持ってるんだな」
「言っておきますけど、ムユリさんを娶るのですから、こーゆーの浮気ですからね、浮気」
「娶るって大げさだっての。俺はただ一つの願いを最大まで大きくしただけだ、そうしたらこんな事になっただけ」
人類雑居、レコンキスタと呼ばれる土地には文字通り人間しか住んでいない。
機械人形は嫌われ、戦前の暮らしをする事を目標にしている場所らしい。
革命都市レーウからは徒歩で数日と言った距離だが、走っているナナシムに背負われているので多分一日で着くだろう。
「仲間を大切にするその姿勢、クロ君のお父さんに似てますね」
「知らないけど、お前が言うならそうなんだろうな」
「昔、クロ君のお父さんは四人の仲間と一緒でした。誰も見捨てないをモットーにしていて、チームの信頼も高かったんです」
ここまでナナシムが話してくれたのは、初めてだ。
「彼は優しい人でした。強くて、どんな窮地でも絶対に諦めない人間でした」
それから、ナナシムは父について話してくれた。
「五人のチームの中にクロ君のお母さんもいたんです。元々はお父さんを殺すつもりだったらしいですが、惚れてしまったみたいで」
「んだよそれ」
「少し話し過ぎました。でも、また話してあげます」
空がどんよりとしている。
話すのが楽しくて時をわすれていた。
ここで一度休息を取り、明日、レコンキスタに入るらしい。
「なぁ、何でそんな父親の話をしてくれる気になったんだ?」
焚き火の準備をしていたナナシムが手を止め、こっちを向いた。
「……仲間を見捨てない、仲間を優先して自分は後。そんな姿勢がそっくりだったからです、本当にドウセツさんを見ている気分でした」
「ちょ、ま、え、それって」
「名字は教えませんよ?」
初めて聞いた父の話。
父の名前。
俺は嬉しくて、その日は殆ど眠くならなくて、ナナシムに父の話をせがんだ。
そして次の日、巨大な建物が複数立ち並ぶ、レコンキスタに到着した。
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