第6話 ヒロとショーコちゃん
聖フランジナ教会、それはこのティールゲンの多くの民が信仰を集めている宗教組織だった。信仰対象は聖フランジナという過去の聖人。神というものの存在は朧気で、明確に認識されていなかった。
その聖フランジナ教会に所属するアペリンという名の修道士は、なぜかアルルーナの拠点に居た。正確には聖フランジナ教会から派遣されてきていて、疫病に侵された者の治療をしていた。
「これはこれは
そう言って気安く接してくる修道士アペリン。ただ、実際には聖フランジナ教会の派閥の一部が、研究をしていた疫病を使って自分たちの信者を増やす――というマッチポンプを繰り返していたとシナリオで判明する。
アペリンは聖フランジナの祝祷を授けてくれるほか、疫病を受けた際の回復アイテム『聖フランジナの恵み』を売ってくれる。疫病は進行こそ遅いが、発症すると能力が大きく下がる上、ときどきゲロを吐くモーションが発生して行動不能に陥る。そのゲロにはダメージと疫病を感染させる効果付きなのが、無駄に細かい演出だった。
「『解毒』と『疫病の治癒』の祝祷を授けてくれないかな? それから『聖フランジナの恵み』を」
命の火を支払い、祝祷と回復アイテムを貰う。祝祷は
「
墓泥棒とはつまり、死人とともに埋葬された装飾品を掘り出して売り捌いたり、人によっては死体そのものを売買したりする連中らしい。それを捕まえる――ではなく、始末しろという依頼だ。
◇◇◇◇◇
オレたちはやってきた、西の墓地へと。そこで遭遇したのは、どう見てもアルルーナの党員だった。ここの党員は最初から
ダイモンズソワレでは身を屈めて移動することで多少の隠密行動ができる。アルルーナの党員に忍び寄ったオレはその背後から
ただ、オレも強靭に割り振ったこともあり、バックスタブ専門のビルドをしてない。だからバックスタブ一発では倒せなかった。加えて協力プレイでは敵のHPが少し高くなる。
しかし、そこは手に入れた『アルルネイラの舞』があった。疲労が溜まりにくいため、盾を持たない相手で、加えて怯む相手なら手数で押し切れた。怯むってのはつまり、やられモーションで行動がキャンセルされてしまうことだ。
ザクザクッと長剣で斬り裂き、アルルーナの党員の最初のひとりを倒した。
「すごいすごい」
「やるなあノリト」
「え? まだ1人倒しただけだろ」
「あたし、ヒロくんに教わるまでここで死にまくったもん」
「ちゃんとバックスタブ入れられるだけで十分だって」
――ま、初心者と思われてるなら確かにそれでも十分か。
最初の犠牲者の断末魔を聞きつけ、他の党員がやってくる。オレとショーコちゃんは物陰に隠れたが、ヒロは隠れないでいた。
「ヒロ、なにやってんだ」
「ヒロくん、隠れないと見つかっちゃうよ」
「二人とも、アップデート情報をちゃんと読んでないだろ。こういう知能のある敵は、仲間の死体から
得意満面でそう言ったヒロ。ああ、あれはそういう意味か!――つまり、仲間の死体を見ても何も行動を起こさなかった、これまでのような不自然さを修正したんだ。きっとVRでのリアリティを重視したんだろう。完全に別ゲーになってしまうけどな。
敵は2人。ヒロの横にショーコちゃんが並ぶ。
ちなみにインスタンスに入るとこれまでの白っぽい透けた姿だったのが、本来の姿に戻るように改変されていた。そしてショーコちゃん、鎧がピンクだった。なんだこれって思ったけど、キャラクターエディットの一環で、課金すれば色を付けられるらしい。なんだか、どんどんダイモンズソワレの世界観とかけ離れていくなと思ったが、売れるためにはこれもまた変化か――と割り切った。
◇◇◇◇◇
「どうよ! あたしも上手になったでしょ!」
2人のアルルーナ党員を倒すと、ショーコちゃんがそう言った。ショーコちゃんは大盾を構えたままで、槍でチクチクと刺していく堅実なスタイルだった。疲労さえ上手に管理すれば、ほとんどの敵がこれで倒せる。たぶん、ヒロが教えたんだな。
「完璧だね! 完璧! ノーダメージだもん」
「ヒロくんは全部避けてたよね、さすが!」
ヒロはとにかく前転しまくってた。無駄に2回連続で前転したりしてた。初心者がよくやるやつだ。それでも一発も喰らってないのは流石だった。
「ノリトはオレの戦い方を真似しなくていいからな。重くても大盾を持った方が安全だから、ショーコちゃんを見習うといいぞ」
「そうそう。その方が絶対強いから!」
「そうだな。アドバイスありがとう、ヒロ」
オレはショーコちゃんが引き付けてる敵を後ろから斬っていたんだけど、ノリトみたいな戦い方もできなくはない。ただ、今は色々とこの世界のことを教えてくれた、面倒見のいいヒロに頼る
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