第37話 恋のライバル 2

 何故か、木崎さんが家まで付いてきてしまった。

 学校から、ミーシャと張り合って歩いてきてしまったのだ。

 家、反対方向だよね?


「お主は、ここでお別れじゃ。またな」


 強引に、玄関ドアを閉めようとするミーシャ。


「な、何で一緒に入っていくんですか。まさか一緒に暮らして同棲している!?

 」


「早く帰ったほうが良いよ。ご家族が心配する」


「日下部くん、私を送って行ってください。夜道に襲われるかもしれないから」


 そう言われたら断れない。

 こんな時、父親おやじが居ればなあ。

 男は僕しかいないし。


「ミーシャ、僕、彼女を家まで送っていくから…っておい?」


「学校まで送り届ければいいのであろう?ワシが魔法で転移させるわい」


「ま、魔法?さすがに不味いのでは…」


転移魔法テレポテーション


 止める間もなく、ミーシャは魔法を発動させた。

 魔法陣の光が、木崎さんの体を包む。


「うえっ?」


 次の瞬間、彼女の姿はいなくなっていた。

 学校まで転移させたのだろう。


「ミーシャ…」


 流石に強引すぎるよ。


「僕、学校まで行ってくる」


「友樹?何故じゃ?」


「説明も無しに、魔法で転移とかありえないって。彼女驚いて呆けているよ」


 僕は走って、学校の校門前まで行く。

 走っていけば、早く着くだろう。

 まだ、学校に居ればいいけど…。



 *** 木崎 かなめ 視点



転移魔法テレポテーション


 足元が光り、丸い幾何学模様が映し出される。

 次の瞬間、私は学校の校門前にいた。

 部活動の帰りだろうか、突然現れた私を見て、驚いている男子生徒たち。


「ここ…学校?何で?さっきまで日下部くんの家の前にいたのに…」


 訳が分からない。

 ミーシャは「魔法」って言っていたわ。


「あの人、本当に神様なの?」


 私はその場でぺたんと座り込んだ。

 えっと、どうしよう。

 神様じゃ、全く勝ち目がないじゃないの。

 しばらく呆けていると、人が走ってくるのが見えた。




「木崎さんー。良かった、まだ居た…」


「日下部くん?」


 手を振りながら、走って駆けてくる彼。

 学生服のまま、慌てて戻ってきたのだろう。

 汗だくで、顔に汗が流れていた。

 シャツが汗でこびりついている。


「はぁはぁ…少し休憩」


「あの、ハンカチ良かったら」


 私は、青いハンカチを差し出した。

 持っていて良かった。


「ありがとう…ミーシャがごめんね。後でよく言って聞かせるから。僕が責任もって家まで送るよ。夜道は暗くなると危ないものね」


 微笑む日下部くん。

『きゅーん』と胸が締め付けられる。


 ああ、好きだわ。

 こんな優しい人、他に知らない。


「うん。お言葉に甘えるわ」


 私は、彼の肩に寄りかかった。


「それで…」


 照れて、ぱっと素早く離れられてしまった。

 彼女さんに一途なのね。

 何で、早く彼の魅力に気が付かなかったのかしら。

 彼とは一年の時から、クラスがずっと一緒だったのに。


 一緒に帰りながら、いろんな話をした。

 ミーシャの能力の事とか…あの人の事は、聞きたくは無かったけど。


 もっと、日下部くんの事が知りたいな。

 もっと、もっと、仲良くなりたい。

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