第16話:祝勝会
サイクロプスを退けた一行は、村近くの酒場に戻った。
扉を開けると、村人たちが一斉に立ち上がり、「グレン殿!」「救世主だ!」と拍手と歓声が沸き起こる。
テーブルには焼きたての肉やパン、酒が並び、村娘たちが「グレン殿、こっちで一緒に飲んでください!」と花束を手に寄ってくる。
グレンは尻肉の残りを手に持ったまま、「お、おう…まぁ、いいけどよ」と照れ隠しに頬をかきつつ奥の席に腰を下ろす。
エリナが「私もおじさんの隣でいいよね?」と肉を差し出し、リクが「すげぇよ、おじさん! 村中がおじさんに感謝してるぜ!」と騒ぐ。
だが、グレンは酒を一口飲んでからため息をついた。
「ったく、めんどくせぇな…昔も魔王ガラリンをぶった斬って感謝されたけどよ、また魔王軍が出てくるなんてキリがねぇ。一度やった冒険をまたやらされる気分だ。全然やる気出ねぇよ」
そこに、マリッサが絡みつく。
「じゃあグレン、もう冒険はやめて、私とずーっと一緒にいればいいじゃない♡」
「うおっ、離せっての!……おめぇの冒険心はどこ行ったんだコラァ!」
マリッサは気にせずグレンの腕に絡みつく。そこへエリナが割り込み、険しい顔で言った。
「ダメです! グレンさんは私たちの頼れる勇者なんですから!」
「頼れる男を独り占めするのも悪くないわよ?」
「そんなの許しません!」
二人が火花を散らし始めたその時、村の酔っ払いが声を上げた。
「おい、グレン殿! せっかくだ、何かひとつ芸でも見せてくれ!」
「芸ぃ?」
グレンは眉をひそめる。
「ざけんなよォ、俺は芸人じゃねぇっつってんだろうがよ!」
しかし、村人たちは「勇者様の剣技が見たい!」「火を吹くとかどうだ?」とますます盛り上がる。
「……ったく、面倒くせぇな〜。ならちょっとだけだぞ」
グレンは立ち上がり、指を軽く振る。
「――《召喚:ダンシング・メデューサ》」
突然、空間が歪み、そこから現れたのは メデューサ だった。全身を覆ううねる蛇の髪。冷たい瞳を持つ彼女は、見ただけで恐怖を感じさせる威圧感を放っている。
「う、うわああ!」
「石化されるぞ!」
村人たちは怯え、椅子を引いて後退する。
だが次の瞬間、メデューサが歌を歌いながら、突如腰を振り、軽快なステップを踏み始めた。
「♪オーホホホ! 見よ、この華麗なる舞! 蛇のしなやかさを極めたダンスを!♪」
目を疑う光景だった。
蛇の髪も器用にくねくねと踊り、蛇の舌がリズムに合わせてチロチロと揺れる。
「♪右にターン! 左にターン! 目を合わせればあなたも石化! ドンストップ・ザ・パーリィー!♪」
メデューサはウインクをしながら、客席に向かって指をさした。
「……な、なんだこれ」
グレンは頭を抱えながらも、苦笑いを浮かべた。
「バカ共、笑ってる場合じゃねぇぞ。目、合わせたら石になっちまうからな!」
「ひ、ひぃ〜!」
村人たちは慌てて視線を逸らしながらも、耳だけは楽しそうに歌声を追っている。
その様子を見たマリッサは「……あ、あれ? 思ってたよりも面白いかも」と意外にも楽しんでいる様子。だが、すぐに自分に戻る。
「でも、グレン、私がいなくてもこんなに盛り上がっちゃうのね」そう言って、少し拗ねた顔をする。
エリナも「こんな怖いモンスターを踊らせるなんて、もう信じられない!」と驚きの表情を見せ、少し呆れた様子でグレンを見つめていた。
「おじさん、召喚獣にもモテるんですね…」とリクが引き攣りながらも、ちょっとだけ笑っている。
「グレン殿! すごい! 召喚獣をこんな風に操るなんて!」
「さすが勇者様だ!」
グレンはため息をつきながらも、適当に指を振った。
「もういいぞ、帰れメデューサ。次はちゃんと真面目に呼び出してやるからよ」
メデューサは名残惜しそうに踊りながら、ふっと姿を消した。
酒場は笑いと歓声に包まれたまま、グレンは再び椅子に座る。
「……こんなもんでいいか?」
村人たちは大きく頷き、酒を掲げてグレンを称えるのだった。
マリッサは一瞬黙ってから、ふっとつぶやいた。
「でも、グレン、あのメデューサ、私に負けないくらい色っぽかったじゃない?」
グレンは思わず「うおっ、離せよバカ! お前、また何をぶっこいてんだよ!」と叫ぶが、「大丈夫……私はグレンの、“グレン”を石化させちゃうだけよ!」とマリッサが絡みつき、周りの笑い声が酒場に響いた。
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