第12話:モテまくる理由

森の夜。星がチラチラとまたたいてる。

グレン一行は焚き火囲んで野営中。

テントの中、グレンは酒瓶抱いて、毛布にくるまりながらボソッとつぶやく。


「スライムさえ出なきゃなあ……隠居っつうのも、わりと悪くねぇ」


その声も、すぐに寝息に変わる。最強でモテモテなはずのオッサンだけど、こんな平和な夜は、ほんの一瞬だ。


テントの布がカサッと揺れる。


「グレ~ン、寒いから一緒に寝よ?」


マリッサが猫みてぇにスルッと忍び込んできた。


「はァ!? おい、離れろやコラ!」


グレンがガバッと起き上がると、マリッサは昔の恋人気取りでムギュッと抱きつく。


「重ぇっつってんだろうが! やめんかい!」


そこへ、追い打ちの如く――


「私もグレンさんと寝たい~!」


エリナまで突っ込んでくる。


「なんでだよ!? お前ら順番待ちとかねぇのか!?」


さらに今度は、近くの村からくっついてきた村娘が現れて、


「グレンさん、わたしも寒いです~」


「お前、誰だよ!! 帰れぇ!」


狭いテントの中、女だらけでギュウギュウ詰め。もうカオス。


「グレンは私の!」


「先に入ったのは私!」


「でも私も好きなの!」


三人の女がグレンの上にのしかかり、おしくらまんじゅう開始。地獄絵図だ。


「お、おい……! 潰れるって! 助けろォォ!!」


グレンは毛布に包まれたまま、這うようにしてテントの隙間から脱出。


焚き火のそばにいたリクが、マグカップ片手にこっち見て笑ってる。


「おじさん、何逃げてんだよ?」


グレンは地べたにドサッと腰を下ろし、酒をグイッとあおって呻く。


「……モテすぎて死ぬわ」


「何でおじさん、そんなモテんの? マジで謎なんだけど」


「昔な……うっかり“激モテの魔法”とか使っちまってな。それが今も……呪いみてぇに効いてんだよ」


「激モテ魔法!? なにそれヤベぇ! 俺にもそれかけてよ!」


リクが目をキラキラさせたその時――


「グレ~ン、見っけ!」


マリッサが飛びついてきて、問答無用でキス。ムチュッ。


「私も~!」


「私もです~!」


エリナと村娘が突進、グレンの両腕と足を掴み、バキバキに引っ張り合う。服がビリッといきそうだ。


「や、やめろぉぉぉ!! なんで俺が裂けそうになってんだよ!!」


マリッサに抱きつかれ、エリナに髪ひっぱられ、村娘に足をロックされて、グレンは動けず地べたでジタバタ。


リクは一歩下がって目をそらす。


「……やっぱいいっす。俺、普通でいいや」


「おいリク! お前それ見捨ててんじゃねぇかぁ!」


「いや、おじさん見てると、モテすぎってのも地獄なんだなって思って……」


テントからはみ出したグレンは、女たちに引きずられながら泣き声でつぶやく。


「……隠居が、遠ぇ……!」


“激モテ魔法”――それは若気の至りが生んだ、最強の呪いだった。

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