第35話 船
堕天使ルシフェルに話しを聞いてから、俺はドール達の製作に勤しんだ。
完成したドールを助手にして更にドールを増やしていく。
こうして、完成したドールは1万体を超えた。
全員がステータスエディタを持っており、パラメーターも最高値にしてある。
「えっと、こちらが天使ラファエル様です。」
「あっ、ジェイピー国ミカドのリョウジ・タカナシです。事情はアキラ殿から聞き及んでいます。必要な事があれば何でもお申し付けください。」
堕天使という言葉は、神の側から見た蔑称なのだと思う。
だから俺はミカドに天使だと紹介した。
それに、ヤマトは人類最強の集団だと言えるだろう。
もしもまた、神がやってくるような事があれば、共に戦ってもらわなければならない。
「ですが、地震とか噴火といった攻撃に、抗う事は可能なのでしょうか?」
「アキラ君、君ならどうやって地震や噴火を起こすかね?」
「住民に対して何の感情も持たないのなら、町単位で振動させるのは簡単ですよね。噴火も地面に穴を開けるだけですからね。」
「ならばそれを防ぐには?」
「術者を殺すしかないだろ。」
「不死身の神や天使をどうやって殺すつもりですか?」
「太陽の中心に転移してやれば、流石に復活出来ないんじゃないかな。」
「そうですね。私たちもそれが怖いので、無謀な転移は使えません。無防備な状態だと、深海とかも怖いですよね。」
「怖いのは、いきなり星を破壊されたり、水を持っていかれる事だよな。」
「無限収納がありますからね。その気になれば、水どころか星ごと収納してしまえばいい。」
「で、では、本気になった破壊者に抗う術はないと……」
「まあ、それはお互い様だな。」
俺は1万人のドールに指示をだして、第4惑星の資源を使った宇宙船を建造させている。
宇宙船といっても推進力は重力魔法なので、生活空間が確保できればいい。
およそ10kmの球体で、外壁が完成したら空気の循環システムや水・土の搬入などを行って、生活環境を整える。
それができたら、ドールを増産して船の運営を任せ、次の船を造る。
宇宙船もコロニータイプだけでなく、小区画に切り分けた個室タイプ。ハチの巣のようなハニカムタイプ。
ある程度環境が整ったら、ヒトを移住させる。
対象は親のいない子供たちだ。
人間界でも魔界でも、孤児はいくらでも存在する。
住した子供たちの生活環境を整え、教育を施していくのだ。
それと同時に、畑仕事を覚えさせ、養鶏や畜産も学ばせていく。
月に1度は、人間社会に出て買い物もする。
他の星で掘り出した金や銀を売って、そのお金でタネや衣類を購入していくのだ。
「はい、ではお小遣いとして一人銀貨5枚を渡します。好きなものを買って構いませんし、貯めておいて高価なものを買ってもいいです。」
「先生、食べ物を買ってもいいんですか?」
「自分で考えて好きなようにしてください。ただ、注意しないと悪い大人に捕まって、奴隷にされてしまいますからね。だから必ず3人一組で行動してください。」
町から孤児が消えた事で、奴隷市場に変化が起きている。
若い奴隷の数が減って、極端に高騰しているのだ。
当然、チンピラたちがこのような機会を逃すハズもなく、警戒心の緩い子供たちは簡単に路地裏に連れ込まれてしまう。
「へへっ、3人も売り飛ばせば、贅沢な暮らしができるぞ。」
「アニキ、とっとと運んじゃいましょう。」
子供たちは猿ぐつわで口を塞がれ、ウグッとかのうめきしかあげられない。
だが、子供たちには3人に1人の引率がついている。
ステータスMAXのスーパーメイドが引率なのだ。
チンピラの進行方向に突然現れたメイドは、冷たい声で言い放った。
「おとなしく、子供を開放してください。今なら見逃してあげます。」
「なにを!」
「対人戦は力加減が難しいのです。なるべく、骨折くらいでおさまるようにしますけど、欠損しちゃっても恨まないでくださいね。」
メイドが軽く地を蹴った時も、チンピラたちからすれば、消えたとしか思えない。
パラメータが100を超えれば実力者と評価される世界で、9999の数値を持つ彼女たちはまさに別次元の存在といえる。
一瞬で、子供たちを捕まえていた3人の男が腹を抱えて蹲った。
「あらあら、今の手ごたえだと内臓破裂でしょうか。殺人を犯すつもりはないので、内臓だけは修復してあげましょう。」
彼女が修復と唱えた瞬間、男の腹部が発光してすぐに消える。
猿ぐつわを解かれた子供たちがワッと泣きながら彼女に抱きついた。
『ファイアボール!』
メイドが無防備になる一瞬の隙をついた、的確な攻撃だと評価できるものではあるが、放出された火球は中空で消えてしまった。
「な、何だ!」
「発動中の魔法は、核となる魔力に魔力をぶつける事で無効化できる。基本中の基本ですね。発動効率が悪く、速度にも難のあるファイアーボールなど、魔法発動の感覚を掴むための練習にしかなりません。」
「なにをぉ!」
「では、泣いてないで実践訓練です。あの男を無力化してください。」
いつの間にか泣き止んだ3人が右手を伸ばしてピストル型に構える。
「自分のタイミングでやっていいですよ。成功したら他の男たちも無力化してください。」
「「「はい、先生!」」」
同時に発射される光の筋は、正確に男の膝や肩を打ち抜いていく。
「エランはまだ狙いが荒いですね。もっと細く絞って丁寧に狙いなさい。こんな練習台はなかなか得られませんからね。」
その言葉の意味に気付いた男達が、一斉に路地の入口へ走りだす。
子供たちは走る男たちの膝裏に正確なレーザーをあてて無力化していく。
「はい、よくできました。でも、今使ったレーザーは細いので、まだ動ける可能性があります。そこで、風系の魔法で切り刻んでもいいのですが、血を流すと汚いですし、自分たちの服にもはねる事があります。では、どうしたらいいでしょうか?」
「太めのレーザーで、全部の関節を撃ち抜きます。」
「いい考えですね。では、実践してみましょう。」
「た、頼む!助けてくれ!」
「あら?アナタたちは子供が泣いて助けを求めた時に、どうしたのかしら?」
「ひ、ひぃ……」
「犯罪奴隷は、まだヒトとして生活できるけど、治療費をかけてまで生かしてくれるかしら?」
その間にも、子供たちは関節部をレーザーで焼いていく。
「はい、それくらいでいいでしょう。」
チンピラたちは身動きもできないまま路地裏に放置され、メイドと子供はその場を去った。
同じような光景は、今回買い物先として選ばれたN国で何軒も報告されている。
「船の有効性は確認できたようだな。」
「はい。この星の上空にも3台。月の引力圏に1台。第4惑星に5台が稼動中です。」
「気温の方は安定しているのか?」
「大丈夫です。20度から25度で安定しています。」
「となると、問題は海洋生物か……」
「魚や甲殻類・貝などは問題ありませんが、大型の生物は難しいですね。」
「まあ、箱舟じゃないんだから問題にしなくてもいいかな。」
「あくまでも、神が突然星を破壊した場合の避難先ですから、生存可能な環境を整えるだけでよろしいかと存じます。」
ルシフェルによれば、神達も長距離移動にはこういった船を使っているらしい。
それとは別に、神だけが入る事のできる”天界”というものが存在するという。
天使ですらどこにあるか分からず、名称だけが独り歩きした天界。
この世界のどこかに存在するのか、魔界のように人の手によって造られた空間なのかさえ分からない。
俺たちはそんな相手に供えなければならないのだ。
【あとがき】
天界が存在するとしたら何処になると思いますか?
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