第23話 クズ
2回戦の相手は竜人族のカマロというオッサンの戦士だった。
頭の部分がウロコではなく、黄色の羽毛になっている。
シッポもないし、見方によっては可愛いと思えるオッサンだった。
「へえ、こういうタイプの竜人は初めて見たな。」
「間違ってもカワイイとか言うなよ坊主。」
「カワイイって言ったらどうなるんだ?」
その瞬間ボンと空気を震わせる音がして、オッサンの身体が赤黒いオーラに包まれた。
同時にホイッスルが鳴り響き、戦闘開始を知らせてくる。
オッサンの装備は鬼の金棒みたいなのとハンドシールド。
どちらもミスリル製だ。
「おいおい、いきなりバーサク状態かよ。体力は続くのか?」
俺の問いかけには応えず、オッサンはウォーっと叫びながら突進してくる。
振り上げた金棒の撃ち込みは簡単に躱せたが、床を打ち抜いた破片が俺の頬を掠めた。
「へえ、床の反動も攻撃の一部かよ。」
床を砕いた鉄棒がその反動も利用して横薙ぎに襲ってくる。
だが、速度では圧倒的に俺が優位だ。
竜人を左に回り込みながら、膝の裏に剣を走らせるも、腰から伸びた細かい鎖の帯に遮られて刃が通らない。
まあ、遠ざかりながらの一撃で、力が乗っていない事も切れなかった原因ではある。
「なあ、それなりの実力だってのは分かるが、魔王には程遠いぞ。」
その言葉に反応したかのように、再度叫びながら向かってくる竜人。
今度は、右側に回り込んで盾を持つ左腕に斬りつける。
斬ることに特化した日本刀は、容易く上腕を覆う革の防具を切り裂いて血しぶきをあげる。
一口に腕を通る神経といっても、何通りかの種類がある。
例えば中指から小指が動かなくなったり、手首が動かなくなったりするのだ。
そして、筋肉が切断されれば盾を持ち上げる事もできなくなってしまう。
だらりと垂れ下がる左腕。
俺はスキルエディタでバーサク状態を解除してやった。
「もう、いいだろ?」
竜人がコクリと肯定したのを確認した俺は、右手をあげて勝利を宣言した。
腕の傷を修復して盾を拾ってやる。
「ナイスファイトだ。」
竜人は控室に帰っていった。
3回戦のリッチは、完全に魔法特化だった。
火・水・風・土・闇の5属性を使いこなしていたが、魔法障壁とワニの防具は完全に無効化してくれた。
魔法を気にせず、一気に距離を詰めてロッドを叩き落とすと、アンデッド族の魔法使いは素直に左手をあげた。
これで、残りは4人となった。
領主の私設部隊を率いる魔人族のレイズは鬼人種であり、魔法も使う万能型。
冒険者のヨーリは竜人のファイターで、バンパイアのロンドは暗殺者タイプのようだ。
俺の対戦相手は魔人のレイズに決まっていた。
うちのメンバーは、4人共に準決勝に勝ち残っていた。
「何だか、拍子抜けなんだけど!」
「そうですね。こちらの町も、全部1撃で終わっちゃいました。」
「おいおい、殺さないようにな。」
「大丈夫ですよ。手加減してますから。」
「手加減どころじゃないわよ。睨んだだけで失禁して先頭不能になっちゃうしさ。」
「エリサの威圧はとんでもないからな。相手に同情するよ。」
「あんだって?」
いやいや、魔人の姿で威嚇するのはやめて欲しい。
チビりそうだよ、俺。
「そういえばマスター、魔法の弾き方を教えて頂きたいのですが。」
「ああ、魔法を弾くのはコツがあるんだ。手のひらに厚めに魔力を纏わせておいてコア部分の魔力をいなす感じだな。」
「コアっていうのは何ですか?」
「ほらこうやって炎を作ると分かると思うんだけど、炎の中に魔力の玉があるのが分かるだろ。」
「あっ、ホントだ。」
「私にも見えました。」
「外側の炎を叩いても揺らぐだけなんだけど、魔力の玉になっている部分を叩けば……」
「あっ、飛んでった。」
「氷は魔力のコアに触れないけど、水や風なら魔力の玉に触れるからね。」
「なるほど。分かりました。」
「マスター、レーザーはどうなんですか?」
「レーザーはちょっと特殊で、魔力を使って光を発生させながら収束させるんだけど、発射した光は魔力を帯びている訳じゃない。だから、レーザーは魔法障壁だって貫通しちゃうんだよ。」
「レーザー最強じゃないですか!」
「でも、レーザーは鏡面仕上げのミラーアーマーなんかで反射されると跳ね返ってくるから注意しないとね。磨かれた剣や盾でも反射されちゃうからね。」
「魔物相手なら無敵ですね。」
「ところが、スライムに効かなかったりする。光が通過しちゃうからね。」
「レーザーは魔法を打ち抜く事も出来ませんよね。」
「魔力は無色透明だから素通りしちゃうんだね。魔法を無効化する時は、魔力をコアにぶつけてやれば消滅する。」
「魔力弾ってヤツですね。」
「そう。魔法が予見できたら、先に魔力弾を撃っちゃうのも戦略として有効だね。」
「えっ、先にですか?」
「魔法が発動するのって、指先・手のひら・ロッドの先とか限定されるだろ。だから、そこめがけて直前に魔力弾を撃ったりするんだ。まあ、レベルの低いやつにしか使えないけどね。」
「あっ、予選でそれやられました……」
「ジン相手なら、私もできると思うよ。魔法を撃つ時のアクションが大きすぎるし、タイムラグがありすぎるもん。」
「ちぇ、いいんだよ俺は武闘派だからさ。」
こうして俺たちは各町で準決勝を迎えた。
俺の相手は鬼人種のレイズ。
剣と魔法を使いこなす万能タイプだ。
レイズはいきなり大きめの氷塊を放ってきた。
こういうのは、氷をあてる事が目的ではなく、相手の視界を塞いでその後ろから奇襲をかけてくる事が多い。
俺は左に避けようとして、咄嗟に右へ飛んだ。
氷塊のすぐ後ろに左方向へ飛びかかろうとするレイズの姿が見えたが、すぐに態勢をなおして飛び退る。
「研究熱心なのはいいが、殺気が漏れすぎだな。」
「まあ、小手調べだ。こんなんで死なれちゃつまらんしな。」
そういうレイズの目が動揺している。
「それに、装備がお粗末すぎる。領主の私設部隊ってのは安月給なのか?」
「煩い!俺は本戦に出てもっといい仕事に……」
「ムリだな。この程度の実力じゃ、せいぜい魔王軍の小隊長ってとこか。いや、班長くらいだな。」
「黙れ!」
この程度の挑発で逆上するようでは話しにならない。
直線的に突進してくるレイズの太ももをレーザーで撃ち抜き、転倒したレイズのコメカミに剣を突き付けた。
「大怪我する前に降参しろ。」
「煩い!」
ゴロゴロと回転して逃げるレイズだが、コメカミから耳にかけて血が滲む。
「状況判断も出来ないやつがヒトの上に立とうとするんじゃない。何人犠牲にするつもりだ?」
酒場で聞いたこいつの噂はロクなもんじゃなかった。
さっきみたいな奇襲攻撃を指示するが、詰めが甘いために討伐でも毎回ケガ人が出てるらしい。
形勢が不利になると、ケガ人をほっぽっておいて逃走したり、ケガ人をエサにして注意を反らして攻撃なんていう事を繰り返してきたようだ。
酒や女遊びが好きで、自分の装備にカネを使わず、今使っている装備も死んだ犠牲者から奪ったものらしい。
もう片方の足と両肩をレーザーで打ち抜いたところで意識を失ったため、俺は右手をあげて勝利を宣言した。
その後、こいつがどうなったのかは知らないが、怪我を治療して折れた剣を買いなおすくらいのカネはあるのだろうか。
俺はちゃんと、肩も足も治療が難しい関節部を、太めのレーザーで完全に破壊しておいた。
まあ、金貨200枚も出せば治療してもらえるだろうが、そこをケチったら多分まともに動かなくなるぞ……
【あとがき】
あと1試合で本戦が決まります。
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