第10話 片刃のサムライソードを使う奴って変態よね

「ねえ……」


「何だ?」


「出来ちゃった……」


「ホントか!えっと、昨日シたんだから、十月十日後だと……」


「えっ?」


「えっ?」


「……!、あははっ違うよ、ミュウのために編んだ帽子。やっと完成したの。」


「なんだ。紛らわしい言い方すんじゃねえよ。」


「子供の方が良かったのかなぁ?えへへっ。」


「そりゃあ……ぶつぶつ。」


「でもね、昨日のエッチで子供が出来たとか分かるハズないでしょ。そういうのが分かるのは、1ヵ月以上過ぎてかららしいよ。」


「そうなのか。すまん、そういう知識はちょっと……」


「アキラらしいね。でも、そうなったときに、一人で産めるかちょっと心配だな。魔界には帰れないし……」


「……エルフに頼もう。明日にでも長老に相談してみるよ。」


「気が速すぎるよ。妊娠できるかも分からないんだからさ。」


「そうか……。もし妊娠したら、メイドを雇わないといけないな。」


「何で?」


「ほら、重たいものを持っちゃいけないとかあるんだろ?」


「大丈夫だよ。アキラがやってくれればいいんだしさ。うふっ、アキラの作ったご飯が食べられるね。」


「な、何だよ。今までだってタマに作ってるだろ。」


「それって食べたいものを作る時でしょ。毎日のご飯とはちょっと違うじゃない。」


「ふふふっ、冷凍食品とレトルトカレー、カップ麺にTGKにチャーハン。それにアニメで得た豊富な知識があるからな。任せておけ。」


「意味が分かんないけど、期待しているからね。」


「おう。ミソと醤油とコメがあれば無敵なんだが、まあ何とかするさ。」


「それはなあに?」


「俺の前世で使われていた調味料と食材だ。ミソと醤油はマメ科の植物のタネを発酵させて作るんだ。」


「マメ?それならどこかに似たものがあるのではないか?」


「あったとしても、そこから発酵させるのに手間と時間がかかるんだ。とてもじゃないが……」


「アキラ!見損なったぞ。アナタは美味しいものを知っているのに、それを手に入れる努力もしないというのですか!」


「いやいや、何をムキになってんだよ。」


「あなたは自分だけ美味しいものを食べた記憶があるからと、わたしの夢を奪うというのですね。そんな方だとは……よよよっ。」


「何だよ”よよよっ”って。いいか、マメを探すだけじゃなく、麹っていうカビを捜して、それを培養しなくちゃいけないんだ。カビなんて、一歩間違えれば毒になるんだぞ。どれだけ時間がかかるか分からないんだ。」


「いいではありませんか。好きなくともアキラにはその完成形が見えているのでしょ。アキラは私を笑顔にするための努力を放棄するというのですね。」


「まあ、ダイズを捜すくらいはやってもいいが……」


「それでこそわたしの夫ですわ!」


「言っておくが、そこまでだからな。味噌づくりなんて絶対にやらねえからな。」


「はい。まずはダイズを探しましょう。」


 こうして、俺たちは色々な町を訪れる事にして、その準備を行っていた。

 この世界には5つの大陸がある。

 俺たちが暮らしているのはエウロパ大陸で、この下側に大森林大陸とよばれる亜熱帯の大陸があり、エウロパ大陸の反対側には南北に伸びたアルインカ大陸がある。

 エウロパ大陸の北にあるのがエリサのいた暗黒大陸で、エウロパとアルインカの間に小さいコアラ大陸とそれに連なる諸島が存在する。

 最北と最南は氷で覆われているが、それはあくまでも氷でできていて大陸ではない。


 一度でも行ったことのある国は、座標を指定して転移で行くことができるが、初めての場所は座標が分からない。

 およその座標を推測する事はできても、万一空気のない宇宙に出たら一瞬で凍り付き、死ぬ事は確実である。

 不死のスキルを持っていても、復活した瞬間に凍結をするのは、事実上の死と同じことである。

 だから、どうしても死なないようなヤツは、宇宙か太陽の近くに転送してやればいいのだ。


「何か、変な事を考えていませんか?」


「い、いや、別に……」


「それで、エウロパ大陸の中はペロたちがいるからいいとして、他の大陸はどうしますか?」


「そのための乗り物がこいつだよ。」


「この貝を2枚合わせたようなものでどうするんですか?あっ、これって船だ!」


「いや、これに乗って、重力魔法で空を飛んでいく。」


「大騒ぎになりません?」


「下側は水色に塗ってあるから大丈夫だよ。それに300mくらい上空を飛んでいけば、下からじゃ何だか分からないよ。」


「まあ、アキラがそういうなら……」


「それとさ、気付いたんだけどさ。」


「はい。」


「サムライソードって知ってる?」


「ああ、あの片刃の少し反っているヤツですね。魔王軍の中にも、あれを好む変人がいましたよ。」


「何で変人なんだよ!」


「わざわざ片刃を選ぶなんて、変態としか思えませんよ。自虐趣味なのでしょう。」


「お前、あの芸術的な波紋を見たことがないのかよ。」


「刃紋?なんですかソレ。」


「ああそうだ。収納の中に業物が一振りあったな。……これだ、これが日本刀という芸術品だ。」


「芸術品というわりに、鞘は真っ黒だし柄もなんか地味な糸をまいてあるだけで、みすぼらしいですよね。ほら、私の魔王ソードの足元にも及ぼませんわ。」


「宝石を嵌め込んだり、彫刻を施すだけが美しさじゃないんだよ。鞘の黒だって、ウルシという特殊な顔料を幾重にも塗ってこの色を出しているんだ。まあ、本質は中身の方だ。」


 俺は鞘から抜いた抜き身をエリサに見せた。


「錆が少し浮いていますね。」


「ああ、俺が買ったときからこうなんだ。」


「砥ぎに出せばいいのに。」


「日本刀は専門の砥ぎ師でないと任せられないんだ。」


「何故?錆びを落とすくらい簡単よ。」


「まあ、その話はいずれな。それで、刃に沿って波のような模様があるだろう。これが刃紋だ。」


「言われてみればキレイだけど、魔王ソードのアダマンタイトの黒い刃もキレイよ。チタンレイピアのブルーも捨てがたいけど。」


「ああ、そういえば城においてきた魔王ソードは、ミスリルに着色しただけなんだけど、バレてないかな。」


「魔王ソードで切りあいするヤツはいないでしょ。そういうアキラの剣だって、オリジナルはヒヒイロカネなんでしょ?」


「俺のはレプリカといっても、ミスリルベースにヒヒイロカネでフルメッキしてあるからな。バレる心配はないさ。」


「えっ、何それ。聞いてないんですけど!」


「だって、アダマンタイトなんて持ってねえし。」


「言ってくれれば、少し残ってたのに!」


「まあ、今さらだな。」


「そうね。」


「ああ、それでさ、サムライソードっていうのは俺の前世で作られていた剣なんだ。」


「それがどうしたの?」


「何でそんなものがこの世界で流通してるのかって事。」


「あっ!」


「俺の他にも、日本を知っている人がいた可能性がある。」


「確かにそうよね。」


「だから、まずはサムライソードが作られていたっていう、コアラ大陸の近くにあるジェィピーって島国に行ってみたいんだ。」


「面白そうね。いいわよ。」


 俺の作ったUFO型飛行艇……動力も操縦系もない個室を飛行艇と呼んでいいのかは疑問だが、アルミ合金であるジュラルミンと強化ガラスでできており、出入口だけはガルウィングになっている。

 手触りの良いキングオーロックスの皮を使ったレカロタイプのリクライニングシートは、程よい弾力性を持たせて長時間座っていても疲れない仕様にしてある。

 

 俺たちは二人乗りの飛行艇に乗り込み、南東に向かって飛んだ。

 前面は足元も強化ガラスになっていて青い海がキラキラと太陽を反射してとても眩しい。



【あとがき】

 UFO型飛行艇発進!

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