第22話 明らかな隠し事


「キミ……これをどこで……?」


 俺のポケットに入っていた石を見た途端に、シアンは驚き声を震わせていた。


「ああいや……記憶がないんだったね、ごめん」

「別に気にしてないけど、これのこと知ってるの?」

「ああ……えっと」


 まただ。この曖昧な反応。


 間違いなくシアンは俺に協力的だとは思う。……でも、明らかに俺に何かを隠している。しかも俺に関係があることをだ。


「ねえシアン」

「な、なに」

「俺について何か知っていることがあるんだろ。どうして隠すの?」


 彼は一度身体を跳ねさせてから大きく息を吐いた。


「全く知らないって言ったら嘘になる。でもごめんね、これは言えないことになっているんだ」

「言えない?」


 そのままシアンが苦しそうに下を向く。俺は悪いことをしていないし、そんな顔をさせたいわけじゃなかったのに、何だかもの凄い罪悪感に苛まれてしまった。

 別に話さなくていいよと言おうとすると、それをわかってくれているのかシアンも微笑んでくれる。



「ただ、一つだけ」

「?」



「ボクが青瀬をよく知っているってことだけは伝えとく」







 不思議な空間での一夜が過ぎ、俺はシアンと共に広場の奥にある台座の前に立っていた。


「魔力は戻った?」

「ある程度はね」


 捕まった俺と共に魔法で森から離れたことでシアンは魔力を多く失っていたと話していた。昨日休んだことでそれも多少は回復できたらしい。


「それじゃあ行こうか。これを使えば王都まですぐだよ」

「うん……」


 台座の上に足を乗せると、その中心に額縁のようなものが浮かび上がる。その中は紫とピンクのマーブル模様で埋め尽くされていて、何とも不気味な色をしていた。


「まさかそこを通るの?」

「そうだけど……ああ、酔わないように気をつけてね」


 シアンにぐいっと腕を引かれて俺は額縁の中にゆっくりと身体を沈めていく。何もしていないのに身体は自然と中に入っていった。


「……?」


 何とも既視感があるというか、前にも同じようなことがあったような気がする。……まさか俺の思い出せない記憶の中に、この経験があるとでもいうのだろうか。






「着いたよ。おーい、大丈夫?」

「だい……大丈夫」


 グラグラと揺れる視界が数秒ごとに揺れを小さくしていく。やがてそれは止まり、俺はゆっくりと立ち上がった。


「……!」


 視界に映るのは賑やかな街。どこもかしこも物や建物、そして人で溢れている。森で出会った住人やシアンよりも良い身なりをしている者が多く、遠くには甲冑を身につけた屈強な男たちが列を作っているのが見えた。頭に思い浮かべていたイメージ通り、絵に描いたような”王都”である。


「ここが——」

「ち、智白っ……!!」


 シアンに話しかけようとした瞬間、その声はドスの聴いた男性の声にかき消されてしまった。


「どいてくれっ!」


 今度は声の主と思われる男のすぐ後ろからコーラルの髪色をしたひょろひょろの男が飛び出してきた。勢いよく俺の肩を掴んでいる。明らかに俺を知っていて、しかも探している声色だった。


「あの……俺の知り合いの方でしょうか? 俺今、記憶がなくて」

「……は?」


 その人物は掠れた声を出し、動揺のままに目を左右に揺らしている。その反応を見て、ここにきて良かったと確信した。早速俺に着いての手がかりが手に入るだろう。




「ちあき……? 今、智白って言ったのか……?」




 そして俺の隣。ここまで一緒に行動していたシアンもまた態度が変化している。彼は何かに怯えるように口を手で覆っていた。

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