第五十話 死相

 アルスはアレクの地中を掘る振動を頼りにその道へ進む、王都から離れており周りは更地であった。

「ここか……」

 アルスは振動がこちらに近づいて行くのを感じると剣を刺し、地を大きく割り始めた。

 振動は止まり進行はやめたようだ。

「出てこい、アレク!」

「この声まさか……」

 アレクは地の割れ目から顔をそっと出す。

「久しぶりだな。」

「アルスか……あんたには良くして貰ったからな……命だけは奪わないでやる。」

「それは有難いが鍵とは何だ?」

「皆んな知りたがってんな、いいぜ教えてやる。」

 アレクは鍵の話をする。

「鍵っていうのはだな、サタンの娘だ……俺はそれを手に入れて新世界を築く。俺中心の世界だ。」

「なるほど、つまりサタンの娘をお前に渡さなければいい訳だ。」

「おいおい、何言ってんだ。俺を殺した所でサタン様は世界を破壊なさるおつもりだ。」

「何?」

「サタン様のその行動は大罪悪魔から怒りを買った、だから魔界からこの大陸へ降臨なさった、つまり追放されたわけだ。」

「奴は何処にいる?」

「俺も探してんだよ、見つけてたら苦労はねぇ……そこでだ、俺と手を組め、新世界を作った暁にはお前にもいい思いをさせてやる。」

「一緒に探し出して殺せと?」

「ああ。」

「アレクじゃサタンは倒せないだろ?」

「試してみるか?」

 煽るとアレクは構え始める。

 彼の右手の剣と左の槍は隙なく攻撃する、アルスは攻撃を凌ぎ様子を伺う。

「どうした?ビビってんのか?」

 アレクは反撃しないアルスをいい事に攻撃を続ける。

 アルスはキルスの型から究極型に変える、アレクは知っているのか攻撃はしない、様子を見ている。

 外の時アレクの視界が真っ暗になる、目元を斬られていた。

「な、何が!?」

 アレクは急な出来事にパニックになる、片目だけ回復を急がせ状況を確認する、アルスは目の前から消えていた。

「後ろ。」

 それだけ言うとアレクは急いで後ろへ攻撃を仕掛けるが、究極型に変えるため攻撃すればこちらがやられてしまう、下がると今度は両腕を斬り落とされる。

「貴様何をした!!」

「これが完成形らしい。」

「は?」

「究極型はただの威嚇に過ぎなくてその本質は魔法らしい、聞いてがっかりしたけど使えはする。」

「聞いた……誰に?」

「大賢者キルス……。」

「何が賢者だ!」

 アレクは両腕を再生し再びアルスへ接近する。

「この地形でその体は不利だ。」

 アレクの下半身はヘビであり平地では当たりやすい。

「俺は手に入れるんだ!世界を!」

 アレクの攻撃は虚しく空を斬る、アルスは両腕と下半身を切り落とし立てなくする。

「幾つか質問するから答えろ、命までは取らないでやる。」

「調子に乗るな!!」

 アレクの背中から手が出てくる、闇の魔力を有しており危険だが、アルスの前では意味がなかった。

 アルスは飛び出てきた手を掴むと浄化していく、アレクは少しずつ弱っていった。

「あああああああ熱い!!やめろおおおおお!!」

「熱いのが嫌か?なら契約を解除してやる。」

「ま、待て!この状態で解約したら……。」

 アレクは焦り始める、現在再生の力はサタンによるものだからだ、両手と下半身がない状態で解約されたらどうなるか、想像もしたくなかった。

「無理だ、どちらにせよ。お前はその力を悪用する。」

「わ、分かった!悪い事はしない、体を再生してからでいいだろ!?」

「俺がお人好しに見えるか?」

「よ、よせええええええ!!」

 アルスは解約の呪文をアレクにかける、浄化とは違い闇の力だけを取り除く。


 しばらくするとアレクは絶望した、心を病んでるように見える。

 アルスの治癒魔法で止血し両腕と下半身がなく背中に細い腕が出てる。

「今どんな気分だ?」

「殺してくれ……。」

「であれば全て話せ。」

 アルスは催眠をかけ始める、サタンの契約を解除された彼は普通の人間だ。


 サタンの目的はまた一から世界を作ることであり、そのためには今の世界はいらないとされる、それを大罪悪魔は反対し追放した、大罪悪魔は欲を欲している、そのためここで世界がなくなれば欲にありつけるまで時間がかかるからだ。

 サタンは数ヶ月前にこの大陸へ降り立ち幾つかの物をこの大陸へ置いていった。

 現在でもサタンは見つかっておらず、ハセクがベルフェゴールから情報を得ると探し始めるがそれでも見つからなかった、どんな姿形で潜んでいるか検討もつかないのが原因だ。

 サタンの置いていった物に鍵というのがある、それがサタンの娘であり彼女がいれば新世界の扉を開けるそうだ。

 アレクもサタンが何故世界を作り直そうとしているのか分からなかった。

 

 目的は明確になり、目標はクフラクが保護しているサタンの娘だ、彼女を使いサタンの行動を止めなくては世界が滅び未来がない。


「ありがとうアレク、他に言い残すことはある?」

「鍵は一回しか使えない……使ったら消滅する。よく考えて使うんだな……。」

「そうか……最後に生きたいか?」

「いいや、こんな姿を晒すぐらいなら死んだ方がマシだ。」

「そうか……。」

 アルスは剣を振り上げアレクの首に落とした。



 数時間後、共和国領の部隊はアルスが戦っていた場所を訪れる。

「何が起こったんだ……」

 アグライトはアレクの遺体を発見する、見るに耐えない姿をしており誰がやったのか捜索を急がせた。


 アルスは再び王宮に戻りロート前王に報告する。

「……以上が悪魔の情報になります。」

「ご苦労だ、鍵は……。」

「帝国領、ニーナ家にあります。」

「分かるのか?」

「最近は見えたくないものまで見えます。」

「己の未来も?」

「はい。」

「そうか……。」 

 ロート前王はそれだけ聞くと何処かへ行ってしまった。


「アルスさん。」

 ラスティーネが現れアルスに話かける。

「どうしました?」

「教えてください、なぜヒルブライデさんとここから居なくなったなったのか。」

「別に良いですけど、大した話ではないです。」

 アルスは過去の話を始める。


 四年前、第二大戦終結後にヒルブライデを王国は危険視した、彼女の行動は予測できない上に闇と天性の呪文も兼ねている、彼女の気まぐれでまた暴れては手をつけられないので彼女用の家を作りそこに軟禁した。

 王国はアルスを派兵し彼女を監視させた、唯一言うことを聞く相手なので都合が良かった。

 二人はしばらく生活するがある時を堺に出ていってしまう。

「アルス君……」

「どうしました?」

「体が痛い……」

 ヒルブライデは服を脱ぎ始めると身体中にアザが出始める、内出血を起こしており見ていて痛々しい。

「私は長くないかも、あなたが居てくれも行動は制限され、自由もない……私はこれで満足していたけど、それ以上にあなたを求めてしまう。」

 もっと自由な生活を彼女は望んでしまった、寿命を全うするまでこの家から出られない、それは彼女にとって苦痛とも言える状況だ。

「では、脱出しますか?」

 ここでアルスは急に変な発言をする。

「そんな事したら貴方は一生追われる身よ。」

「構いませんよ、自分は知らない間に国に良いように使われていますし、仕事欲しさで剣聖隊に入ったら、いつの間にか悪魔と戦わされてる、皆さんみたいに明確な目標なんてないんです。」

「いつも掴みどころがないから分からなかったけど、そう思っていたのね。私が巻き込んだようなものよ、私の一目惚れで貴方を採用しここまで発展してしまった。」

「何もない自分にはこれぐらい面白い出来事が丁度いいです。」

「そんなこと言われたらもっと依存するわよ。」

「覚悟してます、分かってて言ってるんです。」

 アルスはポケットから指輪を出し始める。

「本気にするわよ。」

「構いませんよ、ただ好きになっただけです。」

 ヒルブライデに指輪をはめると、その夜彼らは姿を消した。


 その後王国内は大騒ぎになる、二人の捜索が始まり時間が過ぎると共に落ち着いていった。

 二人は森の中で暮らすようになり、誰にも見つかる事はなかった。

 彼女の痛みはやがて激しくなっていく、行為中は痛みは快感に変わり幸せに感じると残す、彼女はアルスが居るだけで幸せだった。

 歴が統合歴元年になる頃にヒルブライデは第一子を妊娠した、ここからアルスの地獄は始まる。

「じゃあ、狩りに行ってくるよ。」

「行ってらっしゃい。」

 彼女は妊娠して40週間過ぎていた。

 彼女の体力は持ちそうになく体のアザが多くなってきている、天性の魔法で直せば闇とのバランスは崩れ浄化される可能性がある、どちらにせよ彼女は長くない、せめて子供だけでもと彼女は話していた。


 アルスは家に帰り、ヒルブライデに良いものを食べさせようと考える、ドアを開け彼女に会おうとする。

「ただいま。」

「お帰りなさい。」

「とりあえず、ご飯食べないと。」

「もう要らないみたい。」

「ん?」

 ヒルブライデは自分のお腹に手を当て続ける。

「流れちゃった……。」

「なんで……」

 原因は彼女の体力も関係していたが、魔女の実験による闇と天性の魔力が混在していることにあるらしい、それらが胎児には耐えられなかったらしい。

「私はね……生まれてくる子供を好きになって欲しくない……貴方は私だけを見てほしい。これからも……。」

 それが彼女の最後の言葉であり、お腹は浄化跡と言うべきか手の跡がついていた、自分がいない間、彼女はお腹の子を救おうとしていたようだ……自分が情けなくなりクソみたいな感情が押し寄せる。

 彼女と子供を弔った後、アルスはしばらく家に出れなかった。


 何も食べずアルスは部屋でじっと座り続ける、痩せこけ髭も伸び彼は本当に何もなくなってしまった。

 そんな彼の元に誰かが近づいてくる。

 ドアが開くと久しぶりの陽の光に彼は顔をあげる。

「お、いたいた。元気ねーな、昔を見てるみたいだ。」

「何しにきたんですか?」

 アルスはテレスミクロの声を聞く。

「王国へ突き出されるか、地獄に落ちるのとどっちが良い?」

「死ぬ選択肢はないんですね。」

 アルスは自殺を試したがもう少し感傷に浸っていたかった、誰か訪れるならその手で殺して欲しかった。

「アルス、お前には悪いが利用させてもらう。報酬はあんたの死場所だ。」

「死場所……。」

 アルスは立ち上がり自分の死場所を探し始めた。



 五十一話に続く……。


 

 世界設定:キャラクター


 ロート王、彼はロート・ジェダ・ガシオンといい、現在ではグランハースの元王である、彼は幼少の頃に家庭が崩壊しており原因は悪魔であるため強く憎んでいる。年齢は70代後半だが、戦闘能力は老体と思えぬほど強い、昔大賢者の元で修行したが、闇の魔術が発覚すると門前払いを受けた、統合国に入る前は魔女とは親しく他国から見れば悪い印象を受けていた、現在では王国によって絶たれており魔女との付き合いは善良な者に限られた。属性は炎であり剣の型はガルガンドを使うが基本武装はハルバードであり槍使いである。ベルゼブブとは今でも契約している、ちなみに悪魔との解約はそれぞれであり種類がある、ロートは解約したくても出来ない様だ。趣味は武器をコレクションすること。



 読んでいただきありがとうございます。次の話もアルスの話になります、世界設定ですが今後は紹介しきれてないキャラクターを出していく予定です。今後もよろしくお願いします。

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