龗斬本拠地にて ⅰ
(…此処は…何処…?)
目を開けると、見覚えのない場所。─そうか、私、あのまま捕まったんだ。それで、殺されたのかな。じゃあ此処は天国?それとも地獄?
「お、目が覚めたか。」
(誰!?)
バッと身構える。
「そんなに身構えなくてくれよ…。ほら、あの時あっただろう?昭だよ、零ちゃん」
「チッ…。」
「今舌打ちした!?」
此処は…天国でも、地獄でもなかった。現実だ。死んでなかったのか、私。
「お母さん…お父さん…」
ボロボロと、涙が出てくる。捕まったなら、此処は地獄だ。地獄よりも地獄だ。それだったら、いっその事死んでやりたい。
「目覚めたのか」
──知らない人の声。昭じゃない、違う人の声。誰か知らないけど、今は誰とも話したくない。
「無視するとは─」
「仕方ないでしょ、直都。状況理解できてないだろうし。零ちゃん紹介するね、この人は
「本人の前で言うか?それ。また減給するぞ」
「ごめんなさいもうしません」
─龗斬ヴァンパイア討伐隊隊長。その響きを聞いた瞬間、逃げたくなった。しかし、体が動かない。あの時避けれていれば…。でも、そんな人がここにいるってことは、やっぱり私は殺されるのか。それに、ヴァンパイア過激派って言っていた。やっぱり殺すのか…。
「零ちゃん起きたの!?」
ビクッ!?
今度は誰…?
「ごめんね、驚かせちゃって!というか足打っちゃってごめん!直都の命令だったから仕方なく…。あ、
此奴のせいで私は逃げられなかった…クソっ…。こんなにも悔しいのは初めてだ。施設の時は虐げられても何も思わなかったのに、今はすごく感じてしまう。やっぱり、自由になれるチャンスだった、というのもあるのだろう。
「邪魔がすごく入ったが…。とりあえず話さなきゃいけないことがあるから、それについて話さなければいけない。─単刀直入に聞かせてもらおう。お前は、ヴァンパイアか?」
ギクッとする。でも、それを反応してしまったら本当に終わりだ。殺される。
「…なんの事…?」
とにかく、化けの皮を被るしかない。汚い手を使ってでもいいから、生き延びることが最優先事項。
「─そうか。お前の身体能力からして、ヴァンパイアかと思ったんだがな…。耳も尖っていないし、
ブツブツと独り言を言い出す。怖…。でも、何とかなりそうな気がする。
「ごめんね、直都はほんとにヴァンパイアが嫌いでさ。幼児でも容赦なく殺すくらいには…。で、獅音っていうのが直都の相方で、ヴァンパイアを探知してくれるやつなんだ。高性能だから反応しないヴァンパイアなんていないはずなんだよね。でも、あの身体能力は人間じゃないからさ。だから悩んでるって訳。」
やっぱりあの選択は間違っていなかった。彼処でヴァンパイアだ、と言っていたら今頃首が飛んでいるだろう。
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