無駄に洗練された美学
@Dogs_of_the_NASDAQ
第1章
プロローグ
突然だが、美しさとは何だろうか?
僕は中学生の頃にふとその疑問を抱いた。
有名な絵画ならば美しい?
宝石を散りばめてキラキラさせれば美しい?
整形をして理想の顔に近づければ美しい?
テレビで見るような有名なモデルさんならば美しい?
人によってはこれらを美しいと思うのだろうが、僕は一切美しいと思えなかった。
しかし、そんな僕でもこれまで様々な美しいと感じるものがあった。
クラスメートのAさんの立ち居振る舞い、数学のエレガントな解法、師匠などの達人と呼ばれる人たちの動き...など。
そしてある日、美術の授業で現代アートと日本の美について学んでいる中で、ある結論に至った。
それは、僕の思う美しさとは《何か目的のために無駄を排除した結果生じた美しさ》であるということだ。
殺傷が目的で装飾の一切ない拳銃や刀身、可読性を目的に変換されたオイラーの等式など、様々な美しいものが存在する。
これらは、最初から意図的に美しさを求めて設計された《作られた美しさ》ではなく、《自然と生じた美しさ》であり、これこそが僕の理想である。
端的に表す言葉としては 【機能美】 がこれに該当するだろう。
そして、その結論に至ったときに当然ながら「僕もAさんや師匠のような美しさが欲しい」という欲が湧いた。
だが、美しくあろうとした結果の美しさは理想の美しさではない。
理想の美しさを得るために僕も何かを極めるべきだろうが...何を極めたら良いだろうか?
次に浮かんだ疑問はそれである。
だが、そこは当時中二病真っ只中の中学二年生だったことからすぐに答えは見つかった。
アニメにゲームにどっぷり浸かっていたことで、目指すべき方向は簡単に見えた。
そう、主人公や悪役のもつ《圧倒的な強さ》である!
圧倒的強さッッッ!!徹底的強さッッッ!!
強さこそ力...力こそパワー...なんて甘美な響きであろうか。
それから、僕はとにかく力を欲した。
僕は、力には4つの種類があり、強さはそれら【4力】の総合力であると考えている。
勘違いする人が出てくるかもしれないから補足しておくが、【4力】は機械工学の4力とは別物だ。
まず最初に、一番わかりやすいのは【武力】であろう。
しかし、いくら武力を上げて鍛えたところで軍隊や国家を相手にしたら終わりだ。
それらとの敵対を防ぐためには【権力】が必要だ。
その権力を得るためには【財力】が必要となる。
権力者と金絡みでズブズブの関係になって権力を得るためだ。
そして、それらすべてを包括する万能な【知力】である。
この【4力】を極めることで僕は圧倒的な強さを得るッッッ!!
そのために必要なもの...それは...!!
...稽古と勉強だ。
そうして僕は皆が青春を楽しむ中でひたすら学校の勉強と武術の稽古に取り組んだ。
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