第41話『フォーチュン・クエスト』深沢美潮
『フォーチュン・クエスト』シリーズは、角川スニーカー文庫、のちに電撃文庫から出版されたライトノベル・異世界ファンタジーです。そして、わたしが読んだ最後のライトノベルでもあります。以来、わたしはラノベを読んでいません。
主人公で詩人(兼マッパー)のパステル。
戦士でリーダーのクレイ。
盗賊のトラップ。
農夫のキットン。
巨人族の運搬係、ノル。
エルフ族(だだし、幼児)のルーミィ。
幸福のホワイトドラゴン(の赤ちゃん)、シロちゃん。
6人と1匹のパーティーメンバーが織りなす、異世界ほのぼの冒険物語が『フォーチュン・クエスト』シリーズです。迎夏生さんのイラストもかわいくて、癒し系ファンタジーといっていいと思います。
『フォーチュン・クエスト』は、とてもおもしろい小説ですが、一般に名作とか傑作とか呼ばれる小説ではありません。わたしもこの百冊に取り上げようか考えましたが、結局入れることにしました。『フォーチュン・クエスト』こそ、いわゆる「異世界ファンタジー」のプロトタイプを示した作品じゃないかと思うからです。
【「 」付きの異世界ファンタジーとはなんぞや?】
唐突で申し訳ありませんが、わたしは異世界ファンタジーには、異世界ファンタジーと「異世界ファンタジー」があるように思えてなりません。いわゆるハイ・ファンタジーは異世界ファンタジーで、ラノベによくあるのは「異世界ファンタジー」。たとえば――トールキンの『指輪物語』や、このあいだここで取り上げた水野良さんの『ロードス島戦記』は異世界ファンタジーで、伏瀬さんの『転生したらスライムだった件』や、長月達平さんの『Re:ゼロから始める異世界生活』は「異世界ファンタジー」といった感じです。
現実世界でない剣と魔法の世界をキャラクターが冒険する話のは同じ。なにが違うのかというと、作者が異世界を舞台にしたファンタジー小説を書こうとしているものが異世界ファンタジーで、作者が異世界を舞台にしたコンピュータRPGのパロディないし二次創作的作品だ読者にも分かる書き方をしたファンタジー小説が「異世界ファンタジー」となります(とわたしには感じられます)。わかりますかね。
『フォーチュン・クエスト』は、魔法が生きる異世界で冒険者たちが宝探しをしたりモンスターをやっつけたりしますが、作中にキャラクターごとに設定された「ステータス」が存在し、経験値をためて「レベルアップ」するという描写もあります。これはコンピュータRPGのギミックを小説に取り込んだ手法。 また、主人公たちに生命保険を売りつけようとやってくるヒュー・オーシというキャラクターは生命保険の外交員。これは現実のギミックをファンタジー小説に持ち込んだパロディです。
【メタ・フィクションとしての異世界ファンタジー】
「異世界ファンタジー」は、異世界ファンタジーと現実をメタ構造として抱えているファンタジーなんですね。それが90年代以降、ライトノベル(当時はこういう呼び名もなかった)の主流を占めるようになり、30年後の現代ではWeb小説の書き手に連綿として受け継がれているわけ。
わたし自身もこういうのを書きますし、こうしたメタ・小説の源流はどこにあるのかなと考えたとき、行きあたるのは『フォーチュン・クエスト』なので、百冊で取り上げました。おもしろかったなー、『フォーチュン・クエスト』。
☆
美深沢潮『フォーチュン・クエスト 世にも幸せな冒険者たち』(角川スニーカー文庫)
わたしが大学生の頃に文庫化された小説です。『フォーチュン・クエスト』シリーズは角川スニーカー文庫から発売されていて、その後電撃文庫に移動となり、児童文学としてポプラ社から単行本が出ています。
深沢さんの文体はふんわりと優しいので、子ども向けの読み物としてぴったり。でも、図書館の児童書コーナーでみつけたときは驚いたなあ。なにしろゲーオタの読み物のはずが、30年後には児童文学になってるんだもんね。
次回は、陳舜臣『中国の歴史』を取り上げます。
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