29.初進化

(白狐、黒狐、金狐、銀狐は、基本進化先と言うだけあって堅実に強くなれそうだな。聖獣っていうのも興味深いし、こっちの方が間違いは少なそうだね。

それに対して、幻環狐は未知の種族である分、不確定要素が多い。ただし、強くなれる可能性はこの中でダントツ…と。)

ローリスクハイリターンはなかったか…

(…それに、この“???”って何だ…?怪しすぎるよ…。)

簡単に僕に明かしてはいけないもの…真名、かな?

じゃあ、誰…?

僕の進化にも関係するような、縁がある人なんて…思いつかないよ。

(うぅぅぅ〜どうしたらいいのか全っ然わからない〜!)

だけど…

(いつまでも迷ってるわけにはいかないし…)

そう…僕には兄妹がいる。

ふたりは僕の両隣でごぞごそと動いており、今にも起きてきそうだ。

しかも…このふたりには、僕のステータス画面は見えていない!

つまり、ふたりが起きて僕の様子を見た途端、僕はふたりの中で『虚空を見て首を傾げながらぶつぶつ言ってる変な弟もしくは兄』になってしまうのだ!

(ま、まずい…!)

今世を共に生きるであろう兄妹にそんなふうに思われることなど、あってはならない!

だから…

(思い切って神様に任せてやる!どーれーにーしーよーうーかーなっ…)

ピコン

(ひぇっ!?何だ、急に!?)

ステータス画面を見ると、スキルの欄に…

(う、運任せ!?このタイミングで!?)

任せるのは神様にじゃなくて僕の運にだった!?

ちょっとムカつくけど…こうしてる間にも兄妹狐は少しずつ覚醒に近づいてきている。

(うっ………えぇい、こうなったらほんとに運に任せてやるっ!どうなっても知らないよっ!)

あいにく僕は、どうなっても別に良いかなぁ、なんて思っちゃってるし…このタイミングでこのスキルは、なおさらタチが悪い。

(…えいっ!)

…僕は目をぎゅっと瞑って、運任せスキルを使用した。

(…何だろう、この時点ですでに後悔してる気がする。)

…何はともあれ、これで進化先は決まったはず───

-----------------------------

◎幻獣族・幻環狐

進化しますか?

YES   NO

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(幻環狐か、文句はないよ。)

(と、いうことで…いぇす!)

ぽちっ、と。

僕の右足が画面に触れた瞬間、僕は僕の体が明るく光り輝くのを見て目を細めた。

(ま、眩しい…)

それはもう、眉間に皺を作らずにはいられない(実際にできているかはわからないけど)くらいだ。

これ、いつまで続くのかなぁ…そろそろ兄妹狐が起きてしまいそうだ。

(って、そうなったら僕、ふたりに『今まで普通だったのに急に光だした変な弟もしくは兄』になっちゃうよ!?)

た、頼むから早く終わってくれ、進化!

…なんて思っていると、眩しくてほぼ目を閉じている僕の目の前に、新たな画面が現れる。

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進化の進行速度を速めますか?

YES   NO

-----------------------------

(うわあぁぁ、ナイスタイミング!これはもちろんいぇすで!)

ふぅ、これでそろそろ進化の発光タイムも終わる…か……な………

(………ん!?ちょっと待って!な、何これ、体が…体中が痛い!?)

体からメキメキバキバキ音がし始めたんだけど!?

進化の速度速めたら、こんなことになるの!?

知らない、聞いてないよそんなの!?

しかも、まだまだ全然、終わる気配がない!!

じゃ、じゃあ…こんな状態が、まだしばらく続くってこと!?

(いっ、いやだあああぁぁぁっ!!!)

…そんな僕の心の叫びも虚しく、進化はどんどん進んでいくのだった。


+・+・+・+・+


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