19.伝説の光景①

『久しぶりね……この姿になるのは。』

突然、誰かの声が僕の頭に直接響いた。

その誰か…大狐は、こちらを振り返り、何かを僕の前にそっと下ろす。

それは…僕の、大切な兄妹だった。

二匹は地に足がつくなり、ぎこちない足取りで僕の方へ駆け寄ってくる。

(良かった…無事だったんだね。)

(お、おとーと…)(ぉにぃちゃぁっ…!)

崩れ落ちるようにしてぺたんと地面に座り込む二匹。

それを見て、大狐は優しげな眼差しを浮かべた。

『…皆、さぞかし怖かったことでしょう。でも、もう大丈夫。…私が、何とかするわ。』

なぜか見覚えのあるその眼差しに、全身の力がふっと抜けていく。

不思議と、もう大丈夫なんだと思えた。

(…ふたりとも、もうちょっと頑張って。危ないから、こっちに…)

まだ安心はできない。

僕たち三匹は、ふらふらと茂みの影へ身を隠した。

…その様子を見届けた大狐は、再び“何か”の方を向き直す。

そして、キッとそれを睨みつけた。

『…“死神”。お前の仲間を……“九尾”を殺された恨みを晴らしたいか?それとも、私を倒してお前の強さを示したいか?

だがそれなら、どうして私だけではなく罪のない子狐たちまで狙った!?

そこまでして私の命が欲しいというのなら、いくらでもくれてやる。いずれにせよ、お前は私を倒しに来たのだろう。それがお前の目的なら、それでいい。

…だが、それでももし、お前が子狐たちを傷つけようというのなら───』


澄んだ青い瞳に、静かな、それでも確かな怒りが宿り、そして──


『───私が、お前を倒すッ!』


──吠えた。


…大狐は、ぐっと身を低く構え直す。

その姿はまるで、強大な敵から我が子を守る、“母”のようだった。

(いや、もしかすると……)

……やっぱり、見覚えがある。

さっきまで、僕たちを後ろで守ってくれていた、あの母狐の姿。

それが今、目の前のこの大狐の姿と、ぴたりと重なる。

(…そっか。)

母狐は今も、僕たちを守ってくれている。

命を懸けて、戦おうとしているんだ。

…間違いない。

(この大狐は、母狐なんだ。)

そう確信したその瞬間──

──ドンッと地面が揺れ、大狐…いや、母狐の姿がぶれた。

“死神”と呼ばれた“何か”も、それと同時に影に溶け入るように消えた。



…“死神”と大狐。

その伝説の戦いが、今この瞬間、始まろうとしていた。



+・+・+・+・+


お読みくださりありがとうございます!

面白ければ☆や♡、ブクマをつけてもらえると嬉しいです…

コメントとかしていただけたら返信しますので…してください。

今後の展開とかキャラクターとか、アイデアがあればぜひコメントへ!採用しちゃうかもですよ?

(^˶・-・˵^)キタイノマナザシ


主人公のイラストを載せています!

↓↓↓ぜひご覧ください!↓↓↓

https://kakuyomu.jp/users/kitsune_Aya/news/16818622174809826264

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る