夜散歩

◆◆◆


「あー……むしゃくしゃする。」あの日からもう3日、アイツの傘はまだうちにある。


返そうと思う度何故か足がうごかない。こんなことははじめてで少しだけ戸惑った。


会おうと思えば……すぐ会える。あの男が何なのか、聞いたらすぐに答えると思う。



でも……「いや……別に気にならねえし」あいつがどんなのと付き合ってても……俺には関係ない。




まぁ、姉貴は心配するだろうから……それが心残りなだけで……俺自身はなんと思ってない。


そう考える度、あいつの顔が思い浮かんだ。それがすごく嫌で……たまらない。


笑った顔も……怒った顔も…………寂しそうな顔も





……ムカつく。






「……コンビニでも……いくか」気を紛らわせたくて部屋を出るのタイミング悪くあいつも部屋から出て来た時だった。



「あれ?マイブラザー!こんな時間に夜遊び?」いつもみたいにヘラヘラするからムカついて無視をすると「ちょっと待ちなさいよー」と言いながら俺の後を着いてきた。



エレベーターを閉めてやろうかとも思ったけど、彼女が入ってくるまで開け続け「……どこ行くんだよ」と聞くと「夜ご飯ー、あんたは?」笑いながらそう言ってきて、そういえば俺も食べてなかったと思い出した。


「俺はコンビニ」ラーメンでも食べよう。姉貴と暮らしていた時はそういうものを食べてこなかったからか、たまに食べたくなる。


「あんたもご飯まだなら、一緒にどこか行こうよ。奢るよん」ほぼほぼ断らせる気はないようで俺の手を引くから、「……まぁ、いいけど。」と答えて彼女について行った


連れていかれた牛丼チェーン店を見上げて「俺初めて入る」と呟くと「奇遇ね……私も」とニヤッと笑った。


姉貴が外食が好きじゃなかったから。……ってのもあるけど、こういうチェーン店はあまり来たことがない。


でも、静音も初めてなのは意外だった。


「子供の時とかも来なかったのか?」「……あー……うん、あんまり機会がなかったの。」



少し気まずそうにそんなことを言うのは初めてで聞かなかったら良かった……なんて柄にもなく後悔した。


彼女はいつとの雰囲気からは想像できなかったけど思っていたよりずっと少食で、姉貴より食べていないのが少し意外だった。


帰り道、俺の方が後ろを歩いていたはずなのに、気がついたから彼女が後ろを歩いていた。



ピタッと止まって振り向くと彼女は不思議そうに首を傾げた。

「………ん?…なに?」「…や、別に」



彼女が適当な話を続けて、俺はその話に相槌をする。この人といると楽だ。…それはきっと俺の恥ずかしい過去も全部知ってて叱ってくれた人だから。


晒し出してしまいきっているから、今更もう晒すものがない。……でも、この人は違う。




俺は…何も知らない。



「ちょっと!…翔真、聞いてんの?」「……は?」適当に相槌を打っていたのがバレたのか少し怒っているのをみて「なに?」と聞き返すと「だから、傘知らない?……あんたのバイト先に忘れてなかった?」と聞かれた。



「……あ「まぁ、ないならないで、いいんだけどね。元彼の忘れ物だし」サラッと答えた彼女にムカついた。



「なんでそんなのずっと置いてんだよ。別れた瞬間に捨てろよそんなの。」


彼女はヘラヘラして「……えー、だって……取りに帰ってきてくれるかもじゃん」と笑った。




あー、本当に……この人のこういうところがムカついて仕方がない。「そんなんだから「こんなんだから何時までも幸せになれなんだよ。……あんたは、私みたいになったらダメだよ。……前に進みな。」



俺の肩をポンっと優しく叩くと、気がついた。やっぱりこの人はずっと……



気がついていたんだ。



俺が……姉貴のこと好きだったこと。




「……あんたに関係ない。……ほっとけ」俺はそう言うと背中を向けて、彼女を置いて自宅に帰った。目に入ってきた傘に無性にムカついて、床に叩きつける。



物にあたっても仕方が無いのに……わかっているけど止められなかった自分にもムカついた……「……なんで……」



優しくしたいのに出来ない自分が……情けない


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