第6話 君とデートとタピオカ屋
土曜日、俺は約束の時間より30分早く、防府駅前の待ち合わせ場所に着いていた。
駅のロータリーには、買い物帰りのおばちゃんや部活帰りの学生がチラホラ。
今の防府市民って、待ち合わせに駅前とか使ってるのかな?
駅前にはイオン、近くには寂れた幸せます通り
まぁこんな田舎じゃデートするにも待ち合わせするにも場所は多くないよな。
明日香とのデートは初めてじゃない。
なのに、いつになってもこの緊張はなくならない。
ポケットでスマホを握りしめ、時間を確認する。まだ20分以上ある。
早すぎたかな……でも、遅刻するよりマシだろ。
5月前の春風に揺れる中、俺は壁によりかかって待つ。
4月の陽気は暖かいけど、今日の目的地のことを思うと少し気が重くなる。
だって、今日の目的地はあのタピオカ屋だ。
グチャグチャに混ぜたドリンクって、一体どんな味なんだよ……。
「昌也、めっちゃ早いじゃん! どんだけ楽しみにしてたの〜?」
横から、聞き慣れた声が響く。
振り返ると、明日香がポニーテールを弾ませ、ニヤッとした笑顔で立ってる。
カジュアルなシャツにスカート、肩に小さめのバッグ。
いつもの制服じゃない姿が、なんか新鮮でドキッとする。
「お、お前も結構早いだろ! ってか、急に声かけんなよ!」
俺は慌てて立ち上がり、ムキになって返す。
心臓がバクバクしてる。情けないったらありゃしない。
「しっしっし! 昌也、顔赤いよ? デート前からそんなんで大丈夫?」
明日香は上目遣いでからかってくる。
ポニーテールが風に揺れ、彼女の目は完全に俺を弄ぶモードだ。
「う、うるさい! 赤くねえよ! ただ、ちょっと暑いだけだ!」
俺は手で顔を隠し誤魔化すけど、声が裏返ってる。やばい、余計バレる。
「ふーん、暑いんだ? じゃ、さっそく涼しいドリンク飲みに行こっか!」
明日香は俺の腕をグイッと掴み、幸せます通りの方へ引っ張っていく。
「お、おい、ちょっと待てって!」
抗議もむなしく、彼女のポニーテールが春の光に弾む。
商店街の細い路地を抜け、噂のタピオカ屋に到着。
看板には「2階ドックカフェ」と書いてあった……。
いやこれなんの店だよ
メニューには、ソーダ、野菜ジュース、コーラ、挙句の果てには紅茶にコーヒーすらあった。
メニューに「自分だけの冒険を!」とか書いてあって、なんか胡散臭い。
「うわ、めっちゃ楽しそう! 昌也、何混ぜる?」
明日香は目をキラキラさせ、メニューを指さす。
「いや、普通にミルクティーでいいだろ……。」
俺は無難に逃げようとするけど、彼女の笑顔がそれを許さない。
「えー、ダサっ! ここ、混ぜるのがメインなんだから! ほら、ソーダにパインと……ライチシロップとかどう?」
明日香は勝手に組み合わせを提案し、店員に注文し始める。
「待て待て、それ絶対まずいだろ! ライチって何!?」
俺は慌てて止めようとするけど、彼女は「しっしっし!」と笑うだけ。
「昌也の分、決めた! コーラにコーヒーね!!」
「それ、ただの毒じゃん! 頼むからせめて似たような2つにしてくれ!」
結局、俺の抗議は無視され、目の前にドス黒い色タピオカドリンクが置かれた。
一方、明日香はピンクと緑が混ざった、別の意味でヤバいドリンクを手に持ってる。
「じゃ、乾杯!」
彼女はニコッと笑い、ストローを差し出す。
「……乾杯、ってこれ飲むのかよ……。」
俺は渋々ストローを咥える。
一口飲むと、なんか……普通に飲める……。
嘘だろ?コーラにコーヒーにタピオカって意外といけんのかよ。
むしろ美味いまであって別の意味で度肝を抜かれた……
いや、でも、絶対これ体に悪いだろ。
「どう? 美味しい?」
明日香は自分のドリンクをゴクゴク飲みながら、ニヤニヤ聞いてくる。
「ま、まぁ……思ったよりいける、かな。」
俺は正直に答えるけど、彼女のドリンクの方が気になる。
「ほー、昌也、気に入ったんだ? じゃ、味見交換しよ!」
明日香はグイッと自分のドリンクを差し出し、俺のドス黒いドリンクに手を伸ばす。
「お、おい、勝手に飲むな! ……ったく、はい、ほら。」
俺は渋々彼女のドリンクを一口。ピンクと緑の謎の味が、甘酸っぱくて変な感じ。
……こっちはなんか、あんまし美味しくない。
明日香これどれだけ混ぜたんだよ?
けどこれ関節……いやいや、これくらいでまた反応してたら明日香にからかわれる、と熱を持ち出した顔をぶんぶんと横に振った。
それを見ていた明日香がイタズラっぽい顔をしながら
「しっしっし! 昌也、顔赤いよ! 私のドリンクでドキドキした?」
明日香は手を振って笑いながら、俺の反応をガン見。
「う、うるさい! 変な味にビックリしただけだろ!」
俺はムキになって反撃するけど、彼女は「ふーん?」とニヤニヤするだけ。
店内の小さなテーブルで、俺たちはグチャグチャドリンクを飲みながら、他愛もない話を続けた。
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