第2話

「ここは......?」


 頭に激痛が走って、目を覚ますと寝たこともないふかふかのベットの上に寝ていた。周りを見回すと、豪華な部屋......だとわかる。シャンデリアがあって、金箔の鏡があって――。


「鏡......。ってこれが俺か?」


 鏡には漆黒の髪、エメラルドグリーンの瞳をした俺と同じ少年が映っていた。


琉生るい様。お目覚めになりましたか。では、早速、朝食にしますので食堂に来てくださいね」

「あ、はい」


 誰だ......!?様呼びされてるならば、俺は貴族に転生したのか?



「食堂......ってどこだ?」


 俺はめちゃくちゃ広い屋敷で迷子になってしまった。どこへ行ってもシャンデリア、シャンデリア、シャンデリア。金持ち過ぎませんか。こんなに金持ちなら寄付とかしてあの冷酷な大人たちから俺を助けてくれればよかったのに。


「琉生!どこへ行ってるんだ!食堂はこっちだろうが」

「すみません」


 多分父親に怒られたからただ謝っただけなのにドン引きされた気がする。おかしいな。前の世界じゃ、謝っても許してくれない世の中でドン引きなんかない。逆にだ。


「お前、本当に琉生......か?」

「そうですけど」

「まぁ、早く、食事をするぞ。なんで今さら迷子になってるんだよ」


 はぁ...っというため息が聞こえて寒気がしてしまう。大人のため息は怖いということを知っているからだ。


「琉生!あなたどこ行ってたのよ!?食事の時間が遅くなったじゃない」

「ごめん。姉ちゃん」


 多分この女性は俺の姉貴だろう。こちらもまた驚いた顔をしている。そんなに今の俺がオカシイのだろうか。


「あなた、昨日の夕飯にオカシイものでも食べた?」

「いや、寝たよ」

「いやいや、絶対食べた!!」

 

 手をブンブン振って否定してくる。もしかして前の俺はめちゃくちゃ無口だったってことか?だからいきなり喋って驚いてるのか。そーかそーか。


「琉生!あんたどうしちゃったのよ。私が昨日の夜変なの入れちゃったかしら」


 こんどはお母さんらしき人が現れた。いや、だからなにも食べてないって。多分。


「なんでみんな揃ってそうやって言うわけ?」

「「「だってわがまま琉生がいつの間にか冷静になってるから(よ!)」」」


 へっ!?無口じゃなかったの?


「あー。それは改心したというか。なんというか」

「まー。いいわ。これで私の言うことも聞くようになったしね」

「それはヤダ」

「いやいや、彩音。それは無理があるわよ。誰だって指図はやだもの」



 どうやら俺は結構すごいところにきてしまったらしい。

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