第10話 そんなママさんのひとりあそび。
秋桜ちゃんはトイレの前で仁王立ちだ。
ドアをドンドン叩いている。
タチの悪い闇金みたいなんだが……。
すると、秋桜ちゃんは声のトーンをあげた。
「もう言っちゃうからっ!! ママね。旅行にくる前の日、お布団の中で、隼人くんスキスキしながら、パンツ脱いだの。お胸も出してた!! そして、少ししたら、どっかにイクって言ってた!!」
……秋桜ちゃん、容赦ないな。
完全にトドメをさしにいったね。
旅行の前の日って、要は昨日のことだよな。え、舞雪さんって、実はそういう感じなの?
もしかして、身体を持て余してるのかな……。
なんかドキドキする。
その姿を想像したら、頭に血が集まってクラクラした。
鼻血でるかも。
鼻を押さえると、手が真っ赤になった。
やばい、本当に出た。
その様子を見ていた秋桜ちゃんが言葉を続けた。
「ママぁー、おにーちゃん鼻血でたよーっ」
すると、ドアがバタンとすごい勢いて開いた。
舞雪さんの耳は真っ赤だ。
色白だから、顔は鮮やかなピンクに見える。
「恥ずかしくて、もう死にたい……。絶対に嫌われた」
と、いうことらしい。
ま、それはそう思うよな……。
どうやったらフォローできるだろう。
こう言う時には、自分も恥をかくしかないか。
「あの、おれ。ホントは21にもなって誰とも付き合ったことないんです」
舞雪さんはこっちを見た。
「だって、隼人くん。モテそう……だよ?」
「おれ、一見、そう見えるみたいで。大学で経験豊富なフリしてたら、本気で女の子に警戒されて。女の子が寄ってこなくなっちゃって……。んで、この年でも付き合ったことも、手を繋いだこともないんです。だから……」
「だから?」
舞雪さんが首を傾げる。
すると、綺麗な黒髪が、こめかみのあたりからパラリと落ちた。
「だから、さっきのはファーストキスっていうか……」
舞雪さんは微笑んだ。
「わたしも。秋桜生まれてからは気持ちに余裕がなくて。男の人と付き合ってない。だからね……」
「だから?」
「ちゃんと大人になってから、ドキドキしたりとかって初めて。だからわたしも、同じようなもんだよ」
舞雪さんが笑った。
唇の形がきれいで、舞雪さんの笑顔はすごく美しい。
……おれ、この人のこと、好きだ。
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