第4話 そんなママとの温泉地散策について


 目的地につくと、雪景色だった。

 もう4月だから油断していた。


 寒い。 


 ロングのマフラーをしていて良かった。

 秋桜ちゃんにぐるぐるーと巻いた。


 秋桜ちゃんは笑顔だ。


 舞雪さんもスプリングコートだし、きっと寒いよな。俺は幸いダウンを着ていたので、舞雪さんの肩にかけた。


 すると、舞雪さんは秋桜ちゃんにゴニョゴニョと何か話した。


 秋桜ちゃんはますます笑顔になった。


 「あのね。ママがおにーさん寒いから、お洋服はこすもすが着て、首に巻くのは、ママとおにーさん。あと、お手手繋ぎたいって」


 「こすもすっ。言葉が変わってる!!」


 舞雪さんはアタフタしている。

 きっと、秋桜ちゃんのメモリ容量の都合で、発言が誤変換されたのだろう。俺はこの服装で大丈夫。


 「……風邪ひきますよ」


 振り向くと舞雪さんが、俺に手を差し伸べていた。なんだか、まともに会話してもらうのはじめてかも。


 一本のマフラーを舞雪さんと2人で巻く。

 韓流ドラマの主役みたいだ。


 舞雪さんの手があたたかい。

 ちょっとジーンとしてしまった。


 湯西川は、壇ノ浦の戦いに敗れた平家の生き残りが落ちのびたことで有名な場所だ。


 資料館を見学したのだが、古民家は雰囲気がありすぎて少し怖かった。案の定、秋桜ちゃんは泣いてしまった。舞雪さんも時々、手をぎゅーっと握ってくる。


 顔は平然としているけど、舞雪さんは同世代の女の子なのだ。


 やがて、語り部のお婆さんを見たところで、秋桜ちゃんが本気泣きになり動けなくなった。女性の細腕で、ここから何十分も抱っこは大変すぎる。


 「抱きますよ」


 俺は両手をフリーにして、秋桜ちゃんを抱き上げる。すると、秋桜ちゃんはニコニコ笑顔になった。だが、舞雪さんは、離された手をグーパーして、少しつまらなそうな顔をした。


 ……もしかして、父親でもないのに差し出がましかったかな。



 出口のところで、係員さんが秋桜ちゃんに話しかけてくれた。


 「お嬢ちゃん。怖かったかな? でも、優しいパパとママでよかったね!!」


 すると、秋桜ちゃんは大声で答えた。


 「うんっ。あのね。ママが言ってたんだけどね。もしかしたら、旅行でこすもすは、おねーさんになるかもなんだって!! だから、おにーちゃんは、こすもすのパパなのっ」


 どういう意味だ?

 俺は秋桜ちゃん好きだし、懐かれるのはイヤじゃないけど。


 舞雪さんの方をみると、俯いていた。でも、ちらりと見える耳は真っ赤だった。


 そして、舞雪さんはつぶやいた。


 「秋桜ちゃんおしゃべりすぎ……まだ子供は気が早いよ……」


 きっと、いつかの誰かのための将来設計だよね? 聞かなかったことにしておこう。


 

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