隣の若シンママが、いつも俺を見ている件について。

白井 緒望(おもち)

第1話 そんなママがみている件について。

 俺は山本 隼人。

 大学3年で一人暮らしをしている。


 住まいは古いマンションで、一階ごとに2軒が向かい合っている造りだ。つまり、俺の家の前には、お隣さんの扉しかない。


 そんなお向かいさんには、若いシンママが住んでいる。名前は、桜島さんという。小さな女の子と2人暮らしだ。


 お母さんは、俺と同い年くらいだと思う。何の仕事をしてるかは分からないが、1人で娘さんを育てるのは大変だろうなーと、いつも感心していた。


 しかし、どうも俺は嫌われているらしい。お母さんは舞雪まいさんというのだが、俺と目が合うといつも睨んでくる。


 たまに、こっちをじーっと見ていることもある。ちょっと怖い。


 そんな感じなので、まともに会話をしたことはない。



 せっかくの美人さんなのにもったいないと思う。


 娘さんの方は、秋桜こすもすちゃんと言って、とっても素直で可愛い。保育園に通っていて、いつも元気いっぱいだ。


 ある時、秋桜ちゃんが家の前で泣いていた。起きたらママがいないとのことだった。舞雪さんが買い物にいった間に起きてしまったらしい。舞雪さんは15分ほどで戻ってきたのだが、軽く会釈をすると、秋桜ちゃんの手を引いて、さっさと家に戻ってしまった。


 おれ、どんだけ嫌われてるのよ。

 何か嫌われることしたかなあ。


 だが、それがキッカケで、秋桜ちゃんとたまにマンションの下の広場で遊ぶようになった。舞雪さんは、まあ、黙認してくれているらしい。


 そんなある日、変化が起きた。


 砂遊びをしていると、秋桜ちゃんが言ったのだ。


 「ん? ママが隼人くんのこと嫌い? そんなことないよ。ママ、隼人くんのこと大好きだよ。いつも、隼人くんが見えると、ニマニマしてるもん」


 「え?」


 「だって、ママのスマホの待受画面、おにーちゃんの顔だよ」


 すると、ガタンと音がした。

 目の前には舞雪さんが立っていて、足元にはスマホが落ちていた。


 光る画面は、俺の写真が映し出されていた。


 秋桜ちゃんの話は本当らしい。


 秋桜ちゃんは、舞雪さんに気づくと手を振った。


 「ママぁ。おにーちゃんに、教えちゃった。ママがいつも、スマホの画面にチューしてるって」


 えっ。

 めっちゃ新情報なのだが。

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