第7話 朝焼けの檻

朝陽が薄くカーテンの隙間から差し込み、悟はゆっくりと目を覚ました。体が重い。疲労というより、どこかしら甘美な倦怠に包まれていた。

 視線を動かすと、自分の腕の中に沙耶が、背中には舞香がいた。三人でひとつの布団に入り込んでいたのだ。

 沙耶の吐息が近い。彼女は微かに唇を動かしながら眠っており、その頬はまだ赤みを帯びている。悟の胸元に腕を回し、まるで安心しきった猫のように寄り添っている。

 その瞬間、彼女の手がぴくりと動いた。


「……ん、お兄ちゃん……朝、だね……」


 目を開いた沙耶がにっこりと笑い、悟の胸元に顔をすり寄せてくる。


「昨日のこと、夢じゃないよね……? だって、まだお兄ちゃんの匂い、残ってる……」


 小さく鼻を鳴らしながら、沙耶はパジャマの隙間から手を差し入れた。悟の胸に触れ、その心臓の鼓動を確かめるように指先で撫でてくる。


「さ、沙耶……ちょっと、朝からは……」


「ダメ? でも、やだよ。こんなに近くにいるのに、何もできないなんて」


 無邪気に見上げてくるその瞳に、悟は言葉を失う。体が熱を帯びていく。

 そこへ、背後から腕が回された。


「おはよう……悟。なんか、もう、ふたりだけの世界にしないでよ」


 舞香の唇が耳元に近づく。低く、湿った声が囁くように続く。


「昨日の続き……してもいいよ。別に夜じゃなくたって、したくなる時はあるんだし」


 そう言って、彼女はシャツの裾に指をかけ、わずかに持ち上げた。腹部に冷たい指先が触れ、悟はびくりと体を震わせる。


「ま、待って、舞香……まだ、目も覚めきってないし……」


 そう言いながらも、拒絶の力は込められない。沙耶の指が首筋に触れ、舞香の吐息が背中に当たる。


「お兄ちゃん、昨日あんなに気持ちよさそうだったのに……我慢するの?」


「昨日だけじゃ、足りないって顔してるよ」


 二人の声音が混ざり、耳の奥で甘く響く。

 悟は目を閉じた。逃げられない。そう思った。

 むしろ、逃げることを望んでいないのかもしれない。

 パジャマのボタンが、ひとつ、またひとつと外されていく。指先が肌をなぞり、朝の光がその輪郭を照らす。布団の中の温度が上がり、吐息が重なり合う。


「ほんとに……もう、どうにかしてるよ、お前たち……」


 それでも、声はどこか笑っていた。

 悟は沙耶の髪に指を通し、優しく頭を撫でた。その手を感じて沙耶は小さく声を漏らし、さらに強く彼に身を寄せる。舞香も負けじと身体を密着させ、悟の首筋に唇を当てた。


「……ねぇ悟。もっと感じて。朝でも、何でも……私たちがあなたを気持ちよくしてあげるの」


 その声は熱を帯びていて、悟の心を深く揺らした。

 沙耶の指はさらに下へと滑り、悟の腹部に触れながら、そのまま太ももへと至った。


「やだなぁ……もうこんなになってる」


 照れたように笑う沙耶の顔に、悟は何も言い返せなかった。

 舞香の手は悟の顎を持ち上げ、軽く唇を重ねる。ちゅ、と音がして、そこにまたもう一度触れる。そのくり返しが、だんだんと深くなっていく。


「悟……気持ちいい? ねえ……正直に言って」


 その問いかけに、悟は小さく頷いた。

 それが、この朝のすべての答えだった。


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新作公開しました。短編なので気軽に読める内容となっております。

そちらの方もどうぞよろしくお願いします。

次話は18時に公開です。

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