第7話sクラス同士の戦い
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第7話:Sクラス同士の戦い
闘技場は静かだった。
観客席はなく、
壁には記録用の無人カメラだけが並ぶ。
地面は金属とセラミックで補強されており、
多少の爆発や衝撃にも耐えられる設計になっている。
その中央に、二人の姿。
久遠凛音。
東雲レイ。
「模擬戦、開始!」
教官の声が響いた瞬間、空気が裂ける。
レイが右手を掲げたと同時に、
足元の空間が黒く歪む。
「引力結界」――
空間が引き寄せられるように、
凛音の身体が重力に引きずられた。
動きが一瞬、鈍る。
(重力操作……範囲も広くて、精密だ)
凛音は飛びのくようにして距離を取る。
その足運びは、異様なほど無駄がなく、
まるで経験者のそれだった。
レイがそれを見て、口角を上げる。
「やっぱり……動きに、隙がない」
彼の重力結界が再展開される。
今度は上から圧をかけるような形で、
天井が凛音の頭上へと迫る。
だが――
凛音の姿が、スッとその場から消えた。
「――ッ!?」
一瞬のうちに、レイの背後に回り込んでいる。
その動きには、時間や軌道の“予測”が含まれていた。
ただの脚力でも瞬間移動でもない、
まるで先読みしていたかのような回避。
凛音の拳が、レイの背中へ迫る。
しかし…
ドンッ!
重力結界の力で石が飛んでき、
一瞬回避行動を取ろうとするが…、、
凛音は、吹き飛ばされる
宙に舞った身体が、
壁にぶつかり、とまる
息を切らせず、すぐに構え直す凛音。
まるで、こうなる未来を知っていたように――
「おかしいよね」
レイが、ぽつりと呟いた。
「君の動き。……“何度目だ”って聞きたくなる」
凛音の目が一瞬だけ揺れる。
だが、すぐに平静に戻る。
「……意味が分からない」
「そっか。そうだよね、君はまだ“そのこと”を
バレたくないんだね」
凛音は、何も答えない…
その瞬間、審判のアナウンスが響く。
「ここで時間切れ。模擬戦、終了。
判定は――引き分けとする」
闘技場の結界が解除され、重力の歪みも消える。
レイは静かに笑ったまま、凛音に背を向けた。
「今回の、君のこと、もっと知りたくなったよ。……次は、どんな“君”に会えるかな?」
そう言って、去っていく背中。
凛音はその場に立ち尽くしていた。
(なぜ……知っているの?)
彼からみたら、…
自分は、ただの“初めての新入生”のはず。
なのに、彼はまるで――
全てを見透かしているかのように…
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