アーカイラム

ベガさん

第1話 始まりの門

---


第一章:始まりの門


異能力者育成学園アーカイラム

その門をくぐる瞬間、

凛音は自分の心臓が鼓動を速めるのを感じた。

学園の入口は大きな黒鉄の門で、

どこか不気味さを漂わせている。

それはただの装飾ではなく、

守りし者の象徴のようでもあった。


凛音はその門を静かに見つめ、深呼吸を一つ。

静かな空気の中で、彼女の目は決意に満ちていた。

“ここで、全てが始まる。”


今、彼女が踏み込もうとしているのは、

命を懸けた戦いの場であり、

最も危険な学び舎だった。

 《アーカイラム》は、異能力者が集まり、

卒業時に一つの「願い」を叶えるために

試練を乗り越える場所。

その過程で、戦いは避けられない。

卒業者だけが望むものを手に入れる――

それが、この学園における絶対的なルールだった。


凛音は歩みを進める。

制服が風になびき、

足元が少しだけ重く感じられる。

しかし、それでも止まることなく、

足を踏み出していく。

「この学園を卒業する」それだけが、

今の彼女にとっての目標であり、

未来へ進む唯一の道だった。


視界に広がるのは、灰白の校舎と、

無数の異能力者たち。

彼らもまた、同じ目標を胸に秘めているのだろう。

その中で、凛音はただ一人、

自分を信じて進むしかなかった。

やがて、彼女の視線が一人の少年に止まった。

彼は他の学生と比べて、

どこか冷ややかな眼差しを持っている。

しかし、それだけではない。

彼もまた、どこか凛音と似たような孤独を

背負っているように見えた。


その少年の目が、ふと凛音を捉え、

そしてまたどこか遠くを見るように逸らされた。

彼の存在が、凛音の胸にわずかな不安を

もたらしたが、気にする暇もない。

――今はただ、

この学園で生き残ることを考えなければならない。


校舎の前に到着した凛音は、

そのまま門をくぐり、足を踏み入れた。

その瞬間、全ての時間が止まるような錯覚に陥った。


だが、それは一瞬のこと。

周りの騒がしい音が戻り、

凛音は無理に心を落ち着ける。

そして、学園の中に一歩踏み出した。



---

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る