第17話 もっと知りたい、だけど
楽しかったデートの夜
美咲は久しぶりに心が浮き立っていた。
家に帰っても、悠馬と過ごした時間が頭から離れない。
カフェで並んで座ったこと。映画館でこっそり笑い合ったこと。駅までの帰り道で、さりげなく手を貸してくれたこと。
そして――
「もっと知りたい」
そう言われた時の、悠馬のあたたかな目。
(知りたいって、言ってくれたけど――)
布団にくるまったまま、美咲は考える。
悠馬にそう言われて、うれしかった。心の奥がふわっと温かくなった。
だけど、同時に、少し怖くなった自分もいる。
(私も……悠馬のこと、もっと知りたいのに。)
隣にいるときのさりげない仕草。
照れた時の小さな笑い方。
好きなもの、苦手なもの、どんな音楽を聴くのか、どんな景色が好きなのか――
(私だって、もっと知りたい。)
だけど、ふとよぎる。
悠馬は、私の「笑った顔」を見たいと言っていた。
(笑った顔……マスクの下まで、ってことだよね。)
美咲はそっとマスクに触れた。
今日は外していたけれど、普段なら当然のように顔を隠している自分。
笑顔を、全部――見せられるだろうか。
(私も、知ってほしい。でも……全部、見せるって、ちょっと、怖い。)
胸の奥に、小さな波が広がる。
(悠馬に、ちゃんと、見せられるようになれるかな……。)
まだ答えは出ないまま、
美咲はそっと目を閉じた。
デートの余韻に、ほんの少しの不安を混ぜながら――
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