第12話 恋の時間

昼休み、学食の片隅で、美咲はクラスメートと他愛もない話をしていた。

話題は、週末の予定や最近の授業のこと。

誰もが自然体で、無理に盛り上げようとするわけでもない、心地よい空気が流れている。


そんな中、ふと、視線を感じた。

そっと顔を上げると、少し離れた席に悠馬が座っているのが見えた。

何気ない素振りで食事をしているが、たまにこちらを見ている気がする。


(……気のせいかな)


胸の奥が、ふわりと温かくなった。

初めて悠馬と話した日のことを思い出す。

あの時は、ただ「同じマスクをしている人」という、共通点だけで少し心が和らいだだけだった。


でも今は、違う。


悠馬の笑った顔や、何気ない優しさを思い出すたびに、胸が高鳴る。


(……これって、もしかして)


自分でも、驚く。

今まで、誰かにこんな風に心を動かされたことなんてなかった。

マスクをしている自分にも、変わらず接してくれる――そのことが、こんなにも嬉しいだなんて。


放課後、美咲はいつものベンチで、そっと空を見上げた。

透き通るような青空が広がっている。


「私……」


小さな声で、ひとりごとを漏らす。


(悠馬くんのこと……好きなのかもしれない)


頬が熱くなる。

誰にも聞かれたくない、けれど心の奥でずっと言葉にしたかった想い。


そんな自分を、どこか不思議そうに、けれど優しく見つめる綾乃の姿が、少し離れた場所にあった。


何も言わず、ただ静かに――まるで、すべてを受け止めるように。

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