お昼寝転生〜働かない私、眠りの谷から世界を変える。何もしません。けれど、すべてが変わっていく〜

旅する書斎(☆ほしい)

1年目

第1話

朝が来た。


……って、言っても、もう会社に行かなくていいのよね。


なんたって、私、死んだから。


――過労死ってやつ。深夜三時までの残業が二ヶ月連続、日曜は週報の修正、上司は鬼、同僚は逃亡。

……それで、ぶっ倒れて、目が覚めたらこのザマ。


ふわふわした白い空間。

前に神様っぽい人がいて、すっごく丁寧にお詫びされて。

「あなたの死は手違いでした」

「異世界に転生することで、お詫びさせてください」

――だって。


へぇ~。ラノベでよくあるやつね。

でもね、私、言ってやったの。


「もう働きたくないです。あと戦いたくもないし、努力もしたくないし、王様にも会いたくない。わかる?」


そしたら、神様が笑って、「それでは“怠惰適応型超級加護”を与えましょう」って。

……なんか、スゴそうな名前だったけど、つまり“何もしなくても全部うまくいく系”らしいの。


で、目が覚めたら森の中。

私は、白いワンピース姿。

風が気持ちいい。鳥が鳴いてる。

……え、何これ、最高じゃない?


まずしたことは――草の上で寝たこと。

五時間くらい寝た。

森の匂いって、こう……癒やされるのよね。


で、次にしたのは――川を見つけて、足をつけてぼーっとしたこと。

気づいたら、魚が勝手に跳ねてて、地面には木の実が落ちてて、近くには野兎の死体。


あら。

ごはん、勝手に揃ってる。


これって……チートってやつ?

いや、神様が言ってたわね。

“あなたが何もしなくても、環境が勝手に好転するよう設計されています”って。


……うん、好き。

この世界、超好き。


でも、そうやって三日間ぐらい、まったく何もせず寝たり食べたりしてたら――

問題が起きたの。


「救世主様、お願いです! 村を救ってください!」


……は?


え?

なにその展開。

私、村? 救世主? いやいや、誰? あなたたち。


でも、彼ら――村人十人くらいが、膝をついて私を拝んでる。


どうして?

なんで?

私、何もしてないのに?


「森の魔獣が、皆様に近づかないのです……三日ほど前から。きっと、貴女のおかげです!」


……あー、なるほど。

“私がいるだけで災厄が去る”系チートね。

……迷惑。


だって、そういうのってさ――

「救世主様、もっといてください!」とか

「救世主様、指導をお願いします!」とか

「救世主様、結婚を!」とか……


めんどくさそうな未来、見え見えなんですけど。


でも、私は毅然と言ったの。


「無理です。私、働きたくないんで。」


はい、終了~。

さよなら、村人たち。

私は、あっちの丘でお昼寝します。


……とか言ってたら、彼ら、泣き始めたのよ。


「……それでも、ありがとうございます……この命、捧げます……!」


ちょ、やめて。

なんで感動ドラマになってんのよ。

私、ただ昼寝してただけなんだけど!

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