第9話 すれ違う思い

 食堂を後にしたリロは、急いで二階へと駆け上がった。

 自分の部屋を通り過ぎるとキールの部屋をノックする。

 返事はない。

 だが、ゆっくりとドアノブを回してみると、鍵は掛かってはなく、そっと押すと扉は少し軋みながら開いた。

 おっ、開いた。

 そのまま、そっと中を覗き込み、様子を窺いながら部屋へと足を踏み入れた。

 きっとこの中には……

 音を立てないよう慎重に足を運び、目的の壁際にあるベッドへと近づいた。

 予想どおり、そこには、辛そうな表情でキールが横たわっていた。

 意識はなく眠っているようだ。

 汗が噴き出し、時折小さく呻き声を上げている。

 辛そうだった。

 わかってはいたが、他の奴が苦しんでるのと、キールが苦しんでるのでは、こんなにも気持ちが違うのかと自分でも呆れてしまう。

 代わってやりたい。こんなキールを見ているのは辛い。

 そんな気持ちが込み上げてくるのだが、代わってやれるわけもなく、結局、看病ぐらいしか自分には出来ないのだなと痛感する。

 だが、それもキールは嫌なんだろうな。

「キール……」

 極々小さな声で呟くと、手の甲でそっとキールの額を撫でた。

「ごめんね」

 自分のせいでこんな事になり自分が許せないでいる。

 自分が護りたいのはこの世でただ一人。目の前にいる彼、キールだけだというのに。

 それも、もう叶わないんだけど。

 それでも、あの頃とは自分の気持ちも違ってきてるんだぞ。ただ護りたい。そう思っていた頃とは違う。

 やっと、キールの言っていた気持ちがわかってきたんだ。

 もう、遅いだろうけどね。

「もう少し頼ってくれてもいいんだぞ。一人で頑張らないで」

 そう呟き、そっとキールの頭を撫でると、キールは眉をピクリと歪め身じろいだ。

 起きた!

 驚き素早く手を引くと、もう一度、キールを見て、まだ寝ているのだとわかるとホッと息をついた。

 早鐘のような鼓動を落ち着かせると、やっぱりこのまま放置する事は出来ないなと思い直し、後から怒られてもいい。キールの看病をしようと決めた。

 そうと決めれば必要な道具を揃えるため部屋へ戻らなくては。

“待ってて”そんな気持ちで手の甲でキールの頬に触れると、早速用意をするため部屋を後にした。

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