shive 〜なんか面倒なこと起きそう〜

羅吊亜

 

全員集合... ◇

《shive》の住所を教えてもらった翌日。

俺の家からだと電車で約20分揺られた後、5分歩くと事務所がある。

それは、外周を歩くだけでも小1時間かかるのでは...と感じられるような大規模な建築。

この規模感の理由は《shive》の社長がどこか企業に取り入ったため...と言っていた憶えがある。


正面門を通り抜けて、受付でカードを見せれば案内してくれるらしい。

その言葉通り、そのカードを見せることで《shive》の日没を象ったという社章が縫い付けられたスタッフ用のシャツを着て頼家と書かれたネームプレートを胸に掲げたスタッフさんに案内してもらう。


事務所は不振ふしん 柑那かんなデビュー前の最終段階として来ていた。

...正確には呼び出されてる、になるかもしれない。

言うなればデビュー確定会になるだろう。


頼家さんが部屋の扉をノックすると、

「どうぞ。」

と少し低めのハッキリした声が聞こえた。


どうやら頼家さんは、その声と同時に戻っていったらしい。

少し緊張しながら、声に促されるままにドアノブを捻って手前に引く。

すぐに目に入ったのは、色々と大きな女性。

テレビで見るような巨体もあるが、自分のよりも圧倒的に大きいものに少しだけ目を惹かれた。

なぜか唯一立っていることも目に入る要因だろうか。


そして...ここでは外とは違って人から見られることがない。

...外だと服装を整えている筈なのに、人からチラチラ見られるため、少なくともこのメンバーの前では少し落ち着けそうだと安心する。



「時間か...1人遅刻だな...。」


そう呟いたのは部屋中央の机近くにあるソファーに座っている男性。

呟きにしてはやけにハッキリ聞こえたその声は入るように促した声と同じものだと感じられる。

ビジュアルを相談した絵師さんで、事務所の社長さん以外だと唯一関わりのある人物でもある。

前に見たときは立っていたため、本が6段に並んでいる棚より少し低いくらいの背がかなり高い人といった印象だったが、それ以上を見た後だと...いや、高いには高いか。

白髪に蒼眼といった儚げな印象を憶えるような、男性と言っても中性的で女性にも感じられる美形だ。

着ているシャツは半袖で季節から考えても寒そうだが、もしかしたら外ではコートを着ているのかもしれない。



「仕方ないんじゃないか?なんか連絡来てたんじゃなかったか?」


そう返したのは先程目を惹かれた高身長の女性。

扉と遜色ない程の身長のため...目測2メートルと少しくらいはあるのだろう。

ファンタジーの女戦士が分かりやすい例えだろうか。

身長に合わせた上にかなりオーバーに作られたシャツだろうが、胸によって下着が薄く透けておりかつ腹が少しだけ見えている。

そして、髪はオレンジで目は黄色と明るめの色彩にまとまっている。

更に脛まであるかなり長いジーンズはスタイルの良さを一層際立たせている。

そのプロポーションは女性からしても魅力的なものに見える。



「時間は守るのが普通ですよ。」


こちらは壁際の椅子に座っている女性だ。

座高から身長は低めに見え、その高さに比例しているかのように顔もかなり小さい方だろう。

体格に関しては高く見積もっても中学生くらい。

先程の流れでファンタジーで例えると魔法使いに当たるだろうか。

髪はかなり濃い青で、目は蒼...中心がほとんど白くらいに薄く遠くなるにつれて濃くなっていくグラデーションだ。

服は身体が小さいためなのかブカブカで暖かそうに見える。



...遅刻ってどんな人だろう?

あの男の人を勇者と仮称すると、ビジュアルシルエットと重ね合わせて考えてみるか。

身長が同じくらいの2人とそれより低い1人、それより高い2人。

高い2人が女戦士と勇者だろう。

そして、低いのは魔法使い。

そうなると、おそらく俺と同じくらいの身長の人になるかな。


......一応俺も平均以上なんだけど、身長高いやつ多いな。



「...自己紹介でもするか?」

「そうだな。まず我からで良いか?」

「問題ないです。」


...声や口調について一言で表すなら。そうだな...。


勇者は...飴と鞭。

事実について客観的に述べながら人のことについて気遣い続けている。

客観的事実を伝えることも重要ではあり、優しさとも言い換えられるだろうが...やはり簡素で多少の力強さも持ち合わせている。

...まるで......自分への自信の表れのようだな。

本当にこいつが勇者なら国との関係性は最悪...最悪謀反が起きるかもな...。

それは置いておいて、ただの優しさではない...と考えられ損得もあるのだろうと感じる。


女戦士は自己保身。

声で自身を律している...もしくは保っているのだろう。

不安を隠しているのか自身を奮い立たせているのか...聞きようによれば、少し高めの優しい声ではある。

それに、我というのは近年ではあまり使われるものではないのだが...自身を高く置こうとしているのか自身を他と乖離させているのか両方か...そんな意図が感じられる。


魔法使いは仕込み刀。

口調や表情から敬意を払っていることは分かるのだが、言葉の端々から棘が感じられる。

未知の存在や知らない人間に対する警戒の類であるならば良いのだが、無自覚で相手を傷つけてしまう...所謂ノンデリなのか、オブラートに包めていると思っているのか...。

言葉遣いと隠れた棘が仕込み刀を彷彿とさせる。

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