1,地震

 いつもの夜がやって来ました。

 アリスはお母さんから、もう寝る時間だからベッドに入るようにと言われましたので、言いつけを守って服をパジャマに着替えてベッドに潜り込みました。

 けれども目は大きく開いたままです。

 時計の針がせわしなくコッチカッチと音を立てて動いています。

 隣の部屋からは時々物音が聞こえてくるので、お姉ちゃんがまだ机の前で勉強を続けているようです。

 部屋の壁越しに時々お姉ちゃんのアクビやため息が聞こえてくるのです。

 お姉ちゃんも眠たいのだったら勉強なんか止めて、早くベッドに入って寝てしまえばいいのにとアリスは思いました。

 でも、わたしは全然眠くもないのにどうしてベッドに入らなきゃいけないのだろう。

 アリスは不公平だと思いましたがお姉ちゃんと替わりたいとはアリスは少しも思いません。

 暗くなった天井を眺めて、早く朝が来ないかな、何か楽しいことが起こらないかな、とずうーっとアリスはベッドの中で考えていました。

「夜はベッドに入って眠らなきゃいけないなんて誰が決めたんだろう」とアリスは独り言を言うとアクビを一つして。

「退屈だな、眠たくなんかならないのにな」

とつぶやきました。


 ・・・

 様子が少し変です。

 アリスの体が揺れ始めました。

「地震だ!」

 アリスはそう思って布団を頭から被って体を丸めましたが、どんどん体が左右に大きく揺れ始めます。

 そして今度はベッドの上で体が上下に弾み始め出しました。

 大変です! とても大きな地震に違いありません。

 アリスは怖くて逃げだそうとしましたが、

「助けて」

とお母さんを呼ぶ声が出てきませんし、体も思う様に動きません。

 アリスの身体は上下左右に大きく揺れ動いて、もう少しで壁や天井にぶつかりそうでした。

 そして体が大きく横に揺れ動いた時に、とうとう部屋の壁にアリスの体が突進して行きます。

 壁にぶつかると思ったのでアリスは目をつむって、鼻をぶっつけないように両手で顔を覆いました。

 でも、しばらくしても何事も起こりません。

 アリスが恐る恐る目を開くと、そこはお姉ちゃんの部屋の中でした。

 びっくりして見回すと、アリスは宙に浮かんだまま、お姉ちゃんが机に向かって勉強している姿を上から眺めていました。

「あれェ、地震じゃなかったのかな、お姉ちゃんは全然平気だし、おかしいな」

とアリスは言ってから、アリスの体にすごい事が起こっているのに気が付きました。


                         つづく

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