俺が不倫したと勘違いした嫁が俺を巻き添えに高校時代に戻りました。そして高校生の嫁の愛が重い

ミナトノソラ

プロローグ

 俺には超絶激カワ完璧お嫁さんがいる。名前は花園音色。旧姓蕾菜音色。


 高校生の頃に同じ図書委員だった彼女と知り合い、大学生で付き合い、大学を卒業してから数年ほどたって結婚したお嫁さん。


 今は結婚1ヶ月目である。


 俺は彼女のことを音色さん、と呼び彼女は俺のことを名前の祐太郎と呼んでいる。


 惚気けながら俺たち夫婦はそこら辺のカップルより何倍も仲良いと思っているし、お互いを愛し合っている自信がある。


 プロポーズした時、俺は1番気持ちが伝わるであろうシンプルなプロポーズをしたのに対して彼女の返事は『一生隣にいさせてください』だった。


 俺はその言葉に感動して気持ちが昂ったのか言葉を反芻して返した記憶がある。


 で、今そんなお嫁さんから俺は詰められていた。


「女と2人で何をしていたの?」


「いや、あれは…」


 そう、仕事から帰る際に酔ってしまって動けない状態だった女性の方を家まで送っていたところをたまたま彼女に見られてしまったのだ。


 しまった、と言っても下心なんて全くないし女性を送り届けてからは直ぐにお暇させてもらった。


 帰ろうとした時に1度呼び止められたが、しっかり断って一直線に帰宅した。

 なかなかの美人さんであったが全く悩まなかったし、いつでも俺のいちばんは音色さんだからだ。


 責められる筋合いはない。世の中の不倫しているやつは何の目的で結婚しているのだろうか。1度人生をかけて愛すると決めた相手を捨てて他の異性にうつつを抜かす?何をしたいのか分からない。


「酔っていた女性を送り届けていたって言ったでしょ?」


「そんなの信じられない。肩を組んでいたし、明らかに知らない女性との距離感じゃなかったよ」


「そうか?昔の付き合っていなかった頃の音色さんと同じような距離感だったと思うけど」


 高校生の頃から音色さんの距離は近かったように思える。付き合うのつ、の字もなかった高校生の頃でさえ音色さんは俺の肩によく頭を乗せてきていたし肩も触れ合っていた。


 それが男女の普通の価値観だと思って今まで生きていたんだけど…。


「あれが普通の距離感なわけないでしょ?特殊なのよあれはっ!」


「え、そうなの?」


「当たり前でしょ。今まで普通に生きてきたら分かることでしょ。とりあえず許さないから」


 といってガチ切れ状態の音色さんは自分の寝室に入ってしまった。


 こうなると明日になるまで彼女の怒りが収まることは無いだろう。

 昔同棲していた時も喧嘩した時、音色さんは次の日になるまで許してくれなかった。


 直ぐに謝りに行っても全く聞き入って貰えず次の日の朝に謝りに行くのが我が家の風習みたいなところがある。


 もし未来、子どもができた時もそうなるんだろうな。


「寝るか」


 俺は明日の準備をささっと終わらせると自分の寝室の布団に寝転んだ。普段は2人で一緒に寝ているダブルベッドだから今日はスペースが有り余っている。


 喧嘩した夜のベッドは酷く寂しい。普段は2人で未来のことを語り合いながら寝ているからだろうか。


 寂しいな、と呟きながら俺はゆっくりと瞳を閉じた。







「花園っ!花園っ!」


 ふと俺を呼ぶ声が聞こえて目を覚ます。


 すると目の前には高校生の頃に幾度も見た教室のような景色が広がっていた。


「やっと起きたか花園。俺の授業で居眠りとはやるな花園」


 聞き覚えのある声、現役高校生バリバリだった頃にお世話になった担任の先生の声。


「甘城先生…?」


「ああ、俺は甘城だが?学校1居眠りに厳しいと言われる甘城だがどうした花園?」


「夢?」


「夢じゃねぇよ。バリバリ現実の授業中だぞ。寝ぼけてないで早くここを読め」


 ははは、と教室内で笑いが起きる。


 甘城先生は俺の事を一瞥すると教卓の方へと戻っていく。ここを読め、と言われてもどこを読めばいいのか分からない。


 というか夢じゃないのか?俺は寝る前に音色さんと喧嘩してどうしようもないからって布団に入って…それからの記憶が無い、ということは眠ってしまったのだろうが。


 何故俺はここにいる?間違いなくここは俺が高校生の頃に通っていた校舎内の教室。夢じゃないって言っていたけど夢じゃないわけが無い。


「おい、花園早く読めと言っているだろ」


 …とりあえずどこかを読む必要がありそうだ。


「はい、すみません」


 開いている教科書の教科は国語。『走るか走らないかメロス』という作品で有名な偉人さんが残した作品の一つだ。


(どこだよ…)


「ここだよ、祐太郎くん」


 ふと前の席から手を延びてきてある行を指してくれた。


「ありがとう。助かるよ」


「ううん、祐太郎くんのためだからね。私に任せてよ」


 高校生の頃にこんなふうに接してくれたいた女性なんていただろうか。音色さんくらいしかいなかった気がする。


 とりあえずその女性に目を合わせて再びお礼をしようと顔を上げる。


「本当ありが……音色さん…?」

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