第8話 決意2


(どんな顔して会えばいいんだろう……)


駅に向かう途中、ずっとそんなことばかり考えていた。


本当は顔を見た瞬間に怒鳴りたかった。

全部ぶちまけて、裏切ったことを後悔させたかった。


けど、それじゃ自分だけが惨めになる気がした。


翔も、かなこも――

きっと私のことを“何も知らない馬鹿”だと思ってどこかで笑ってる。


(……今は気づいてないフリをしよう)


私は心の奥に怒りを押し込めて平然な顔を作った。


駅に着いて少し待つと翔が現れた。


「よう!何処行こうか?」


「ん~、後でかなことご飯行くから〜近場で遊ぼうかな!」


自然な口調で言葉を選んだ。

自分でも驚くほど冷静だった。


「そっか!なら久しぶりにスタバでも行って話そうか!」


そのまま私たちは駅近くのスタバへ入った。


翔は私がすべてを知っているなんて思いもしていないのだろう。

いつもと同じテンションで他愛もない話を始めた。


「美香と結婚したら幸せそうだな〜、なんてな、ははっ」


笑いながら言うその言葉に私は無表情でコーヒーを一口飲んだ。


(……私なめられてるな)


静かに心の中でそうつぶやく。


どうしてこんなふうになったのか。

どうして私は何も気づけなかったのか。


後悔と怒りが渦巻く中でただひとつ、静かに浮かんだ想いがあった。


(……復讐、できないかな)


翔の話を聞きながら私はその方法を考えていた。


このまま何もできずに終わるのか。

裏切られ、嘲笑されて、それでも“いい人”でい続けるのか。


――そんなの、嫌だ。


私はこのとき心の奥で決めた。


絶対にこの二人より幸せになってやる。

そう、心に誓った。


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