無双・無双!無敵ぃぃ!!ん?

 「着いたな」


 到着、ラスベガス。


 虹色みたいなネオンの煌めき。

 どこを見渡しても黄金の輝きは絶えない。


 そんで色々ツッコミどころが大量にある建物や人。


 周囲を見回す。

 俺達以外の他の顔ぶれを見れば分かる。

 

 コイツら⋯⋯頭がおかしそうな奴らが集まってると。


 浮浪者みたいなのもの歩いてるし、上品な身なりをしている人もいるし、俺達と似たような観光的に来てる人間もいる。


 ⋯⋯なんか噴水の中で水飲んでる奴がいるんだが。

 

 ⋯⋯ん?なんか何も着てない女もいないか?

 

 「伊崎さん、ここ、人間の街っすよね?」


 「あぁ⋯⋯らしいな」


 思ったのと違うが、とりあえずまずは。


 「お前ら──これは命令だ」


 振り返って俺は、全員に伝える。

 大真面目に。


 「今から言うことは、経験者として。

 そして人生の先輩として忠告だ」


 全員俺のよくわからんムーブに慣れているからか、ツッコミも湧いてこない。


 「二つ俺と約束だ。

 一つ目は、カジノは身を滅ぼす。

 一定水準の自分の限界を決めろ。


 何人もの人間が破滅しているのを見てきたからな。


 お前らこんな事で地獄を見る必要はない。

 関与しないから、ここで問題があっても俺は助ける事はしない」


 並ぶコイツらの中央を通り、2つ目。


 「二つ目。

 ──謝るな、キレるな。


 これは負けてキレるという話ではなく、差別用語を使われる。


 そんで、肩がぶつかろうと、舐められても、基本は無視しろ。


 日本には日本の流儀がある。

 しかし海の向こうの大半はこちらを舐めている。


 最悪俺を呼べ。

 ⋯⋯なんとかする。


 プライドなんぞ捨てろ。


 ここでは銃を構えられてもおかしくない。

 下手な事をして人生棒に振るな。


 お前らは個人ではなく、銀や石田の手足であり、家族であることを忘れるな。


 理解できたか?」


 一瞬静かになったが、すぐに軍隊並みの返事が飛んでくる。


 「いいな。

 俺はこういう時に冗談を言う人間ではない。


 マジで当たり前のように見下してくる。

 その時は、あくまで紳士に。

 度が過ぎていると思ったら⋯⋯俺を呼べ。

 少なくとも、謝罪をする必要はない。


 海の向こうは謝る文化はほとんどない。


 分かったら、一人1000万」


 何やらざわつく。

 何故そんなに驚いているんだ?


 「なんだ?」


 「え?い、1000万?」


 「あぁ。何かおかしいか?」

  

 「へ?い、いえ!」


 「まぁいい。

 一人1000万。


 日頃の感謝を込めて、お前らに支給する。

 カジノには長い間滞在する可能性があるため、ホテルの場所や集合場所は事前に決めた通りだ。


 以上をもって──ラスベガス観光とする」


 





 「ではお賭けください」


 「伊崎さん、賭けても大丈夫です」


 この海渡りの観光に掛かっている費用は正直100億くらいは掛かっている。


 いや、言い過ぎたか?

 まぁでも、一年はいるだろう?ならいいか。


 なんせ全員分の宿泊施設と食事、娯楽に至るまで全て俺が出してる。


 まっ、こんな所で使わんと、資産が増える一方だ。


 今以上に増やしたところで害になるだけだ。


 ──天上天下俺が独尊。

 円の中にいる内は俺が世界で最も羨む楽園を創ってやるよ。


 ⋯⋯そんな話はいいか。

 そんでしかもさ?

 一人につき一人──専属の通訳もつけている。


 しかし俺は、それが軽く億劫になっている。

 

 二重に聞こえているから鬱陶しい。

 だが、バレない為には仕方ない。


 「一般的にどれくらいから賭けるべきだ?」


 「25ドルが最低ラインです。

 多くても100ドルで間違いないです」


 「なら100ドル置いてくれ」


 「プレイヤー・バンカー───」


 「プレイヤー」


 「え?そんな即答で平気ですか?」


 「あぁ。金ならあるし」


 ⋯⋯嘘だ。

 俺には機械の中のカードが全て見えている。

 魔法を使える人間にとって朝飯前だ。

 

 ピュンとカードが飛び出す。

 それをディーラーのプロってる手付きでなんか分けてる。


 「おぉ、すげぇな」


 思わず漏れてしまった。

 通訳も同じようだ。


 「Playerscard──seven

 Playerscard──two


 players wins」


 「おぉ、勝った」


 100ドルで賭けてるから⋯⋯200か。


 「勝ちましたね」


 「あぁ」


 チップを持って。

 俺は左後ろにいる通訳にも悪魔の誘いを突きつける。


 「さぁ、やろうよ」


 「⋯⋯勘弁してくださいよ」


 よし!不幸なやつ一人増やしたっと!


 「バンカーの勝ち」

 「プレイヤーの勝ち」


 とりあえず俺は、負けたり勝ったりを繰り返しながら、30回ほど楽しむ。


 大体プラス600ドルくらいだ。


 感覚的にやってるが、これくらいなら良いだろう。


 そして。


 「あぁぁ!?」


 隣で悪魔の叫び声を上げてるのは、通訳。


 「あら⋯⋯負けたんだな」


 背中をさすってやると泣きだしてしまった。

 こりゃいじめ過ぎたかもしれん。


 「どうですか?お客様。

 あちらにも男の人が楽しめる高額な卓がありますよ」


 「おい、通訳」


 「あっ、あっちに男が楽しみながら出来る高めのレートがありますよと」


 「幾らだ?」


 「最低100だと」

 

 「おー行こうぜ。 

 ほら、お前にも金はやるから」

 

 そう言うと顔がマジになってる。

 人ってこんな悪魔みたいな顔になれるもんなんだな。


 


 「ようこそ、専属のアレックスです」


 「日本語?」


 「はい。 

 当施設では選ばれたお客様に合わせた者をご用意させています」


 すげぇな。⋯⋯ってあっ!


 「Hーiっ!」


 お姉さんがいっぱいじゃねぇの!


 「座って座って!」


 なんだよ。サービス良いじゃん!


 「ん、チップ」


 「ワーオ!」

 

 おー。海外美女や。

 ⋯⋯⋯⋯でっけ。


 「ん、アレックスさんも」


 「私もよろしいので?」


 「せっかく招待して貰ったんだから記念に」


 「では頂きます。

 お礼と言ってはなんですが、特製ドリンクを」


 スッと出てきたのは謎の薄い液体。


 「これは?」

  

 「特製ジンジャーエールです。

 私のは評判が良いんですよ」


 ⋯⋯おぉ。うめぇ。


 「アレックスさん、やるぅ!」


 隣を見ると、ブスっとした金を持ってそうな他の客。


 「彼らにも何かやれないか?」


 やれる事はやっておく。


 「Hey! thx!!」


 「おーけーおーけー!」


 そんで、高額なギャンブルが始まる。

 こっちも大体似たように賭ける。


 ルールは一緒なのでそんなに難しくない。


 「プレイヤーの勝ち」


 400ドルで勝ったから⋯⋯800か?


 「つ、次は⋯⋯!」


 あー凄い顔。

 取り憑かれてるよ。


 そんでまた楽しみ、3000ドルだ。


 「あぁぉ!なんで勝ってるんだよ!」


 「運が良かったんだろ」


 と、隣でイチャイチャしてくれる彼女へチップを入れこんでっと。


 「なんか誰か来たぞ?」


 「⋯⋯⋯⋯え?」


 見上げると、明らかに格式高そうな奴。


 「あ、ピットボスです」


 「なにそれ」


 何やら通訳と喋っている。

 イチャイチャしてる女の子の言葉以外聞く気がないから何言ってるか分からん。


 「伊崎さん、もう少しやります?それとも、別のフロアに行きます?」


 「何がいいんだ?」


 「一応このまま続ける事もできますし、別のゲームもあります」


 「この人はなんなの?」


 「責任者です。

 どうやら若いのに資金を持ってるから軽くご挨拶をと言ってます」


 「おー。なるほどね。よろしく」

 

 と、また通訳と喋っている。


 「ブラックジャックでここよりいい感じの部屋があるけどどうする?と」


 ⋯⋯ていうかコイツ──エラいガタイいいな。

 海外の人間ってみんなこんななのか?


 「なんかトントン拍子だな?」


 「出金の金を把握しているからだそうで」


 「なら早いな。そっち行くか」










 「あの日本人、情報通りだな」


 ガチャンと引きスコープを覗く男と、近くにいる杖をついた老人。


 「ふっ、あのエリアで女が接待するわけないだろうに」

 

 「あんた、本当に何者なんだ?」


 微動だにしない、何気ない男の問い。

 老人は少し間をおいて枯れた声で不敵に笑う。


 「詮索するな。

 似たもの同士だろうに」


 「だな。悪い悪い。

 老人があんな若い奴を狙うんだからどんな事をしでかしたんか気になったんだよ。

 

 ──対物ライフルまで持ち出させて。


 こんな所でこんなんぶっ放したらどうなるのか分かってるのか?」


 「"帰還者"には普通じゃ」


 「帰還者?なんだそれ」


 「知らなくてよい。

 未知の世界からの来訪者。


 予言の通りであれば、あの者は帰還者じゃ。

 これくらいでなければ、奴は倒せぬとお告げがあったのだ」


 「わけが分からねぇな。

 帰還者だがなんだか知らねぇが、こんなのぶっ放して生きてる方が怖えよ」


 スコープを覗いたまま微動だにしない男は指示を待つ。


 「ホワイトファング、準備は出来たか?」


 電話をかけている老人。

 

 『あぁ。ターゲットはアジア人二人だろ?』


 「そうじゃ。そっちは頼むぞ」


 『あぁ。隔離してる』


 「ホッホ。じゃあこちらも始めようか」


 老人は少し口元を綻ばせ、男に言う。


 「撃て」


 「あいよ。

 チッ──どうなっても知らねぇかんな」


 トリガーに手をかけ。

 次の瞬間、轟音が辺りに響いた。

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