この少年はなんなんだ?閻魔大王と契約でもしたのか?
まずい。
「なぁ?
お前らどの面下げてここまで来てんだ?
⋯⋯えぇ?」
まずい。今日の彼は、間違いなく絶好調だ。
「ここ何処か知ってる?ジャパン。
じゃ、ぱ、ん! アンダースタンド?
はい、伝えろ」
外交問題が加速するぞ。こんな形では。
「そちらでは謝らないのかもしれないのだが、日本にはこんな言葉がある。
"郷に入っては郷に従え"
補填とか、金とか、そういうんじゃないのよ。
この国って。
誠意って知ってる?
謝罪の角度は90度。
話は聞いたぞ。
お前ら一時間もこれから相互関係になろうとしている奴らを放置したらしいな?
──ぶち殺すぞ?えぇ?
カスが」
ダン、ダンと。
言いたい放題の伊崎くんが机に乗せている足をドカドカ叩きつけている。
こんな外交は見たことない。
若いとはいえ、まずい。
「誰が、誰に物を言ってる?
ここに並んでいる男たちの価値を理解していないんだろう?
少なくともお前らよりよっぽど漢だぞ」
ん、んん。
中々良いことを言ってくれ──
全員の視線が交差するように合ってしまう。
若い子に世辞にも素直な言葉を言われて若干肩に力が入ってしまったのは同じらしい。
「綺麗な90度だ。おし、謝れたな」
⋯⋯伊崎くん、そんなサウナ上がりの清々しい顔をしないでくれ。
「では、誠意も感じた事だし、お宅から交渉にしましょうかね」
なんて胆力だ。
感心してしまう。
*
「あぁ?だから言ってるだろ?
ハードはお前らのもんなんだから、うちは部品だって言ってんの。
はい」
この少年。
「なんだ?日本の安全性は世界一だろう?
生産も請け負う?何言ってんだ。
俺が全部用意してんだから余裕に決まってるだろうが。
材料はあんだ。
鉱山でもなんでも、既にある取引先から持ってくりゃいーんだろうが」
なんか知らんが、暴論の限りを尽くしているはずなのに、なんか話が進んでいないか?
隣にいる諸星さんと苦笑いで目線があってしまう。
「英語知らんけど、アンダースタンド?
サムライイングリッシュ!
俺達の技術、世界一?
YES。
お前らは、使うか使わないかの話をしに来たんだろ?
オッケー?」
なんかしか言葉が出ん。
何が起こってるんだ?
これでは我々の出る幕がないではないか。
「とりあえず一年だから。はい、伝えて」
「伊崎くん、凄いな」
「え、えぇ」
「見ろ。シンプルに進めている」
「謝罪なんて知らねぇよ。
お前らが頭が悪いのが理由なんだから。
下限はこっから、マックスこんくらい」
身振り手振りで何故か交渉が進みまくっているようだ。
我々は見届けるしかない。
「オーケー?
お前らが縦に一回頷けばいいのは、新型Aphoneのバッテリーに組み込むだけでいいの。
ライセンスは俺達で使うに決まってるだろ?
馬鹿なこと言うな。
これで女の子と遊──じゃなくて、そこは訳すなバカタレ!」
⋯⋯あぁ、女癖さえ良ければ。
「あーERURA。
うちはスマートフォンのみならず、EV用のバッテリーも開発済みだ。
そっちからしたら手が出るほど欲しいだろう?
公開できるデータとして既に安全性は証明されている。
え?ライセンス?
だから俺らが貰うに決まってるだろーが!
女の子のアラレもない姿が見たくてしょ⋯⋯」
トップが性欲お化けだとこんなに優秀なのも頷けてくるような。
紗季、将来何人子供産むんだろうか。
でもパパ、あれくらい優秀な男と一緒になって欲しいとか思ったり。
はははは。
*
「とりあえずだ」
我々が頑張った約1時間が嘘のように、伊崎くんは三社本来なら数時間掛かるであろう時間を40分まで短縮しケリをつけた。
それだけでも凄いのだが、何より、三社の中で契約を一年間生産の供給という形で締結し、一番条件の良いところに競わせるという完全に立場が逆転したアイディアで何故か通ったそうだ。
「恐らくだが、ERURAが決まるかな」
「それはなぜそう思うんだ?伊崎くん」
「EVは今一番来てるだろ?
しかも、うちの一世代バッテリーは恐らく一番欲しがるのはあそこだ。
それに──」
1枚の白紙の紙。
「条件なら何でも書いていいって。
弁護士なんていらんってよ」
思わず全員が圧倒的な交渉力に黙った。
いや、黙るしかなかった。
私も当然。
交渉力というか、胆力というか。
なんだ?なんなんだ?
一人で全部話をつけおった。
「
頷くだけさ。
今後も長い付き合いになるだろうからってさ。
しかも、バッテリーだけだと力不足だろう?
こちらにはそのバッテリー明日からでも改修して規格を合わせる作業もしよう!って代表勃起してたぞ」
相当嬉しかったんだな。
そこまでの情熱があるとは。
「となると」
「だが俺、アイツの心意気を買ったんだ」
「え?」
「時価総額290億ドルの企業が現金11億ドル、会社の株10%と未公開株8%⋯⋯会社の存続もあるだろうに資金全オールイン。馬鹿だろ?」
この場にいる全員がそう発したリスクを聞いた途端、口を堅く結ぶ。
当たり前だ。
死ににいくようなものだ。
「俺笑っちまってさぁ?
だから最強になり得たんだなって」
⋯⋯なんの事だ?
「まぁそんなことたぁいいさ。
とりあえず、ほぼ決まりだ。
期間は一ヶ月だが、俺はERURAにする。
これから一年共同開発として組んでいく。
向こうも俺達も、こっからのプロジェクトは更に手幅を広げていく。
スマホの方もバッテリーがある。
日本産の物も着手していけるし、俺達自身の販路も作れる」
笑って、伊崎くんは私達に鞭を打つように畳み掛ける。
「俺達は最強の国としてまだまだ輝くぞ」
あぁ。
こうして次の世代は生まれるのだと少し目頭が熱くなる。
「代表の奴はおもろいからもう連絡先交換してきた」
色々早いな。
会話能力も高い。
駄目だ。私たちがついていけない。
「よし、さっ!俺達は帰ろう!石田!」
「え、えぇ?」
「は?お前殺すぞ。
お前彼女差し置いて俺と高級──」
「ああぉぁぁぁ行きましょう!!
伊崎さん!!!!
では失礼します!!」
バタン、と嵐のように去っていく伊崎くんと石田くん。
「台風より質が悪いな」
「ですがやることはやって行きましたよ。
木村」
やってくる木村に書類を託して立ち上がる。
「このERURAという企業をまとめて明日資料をもらえるか」
「承知しました」
「平野!私もだ!
伊崎くんが決めたのだから何かあるはずだ!
洗えるだけ洗え!」
「はい!承知しました!すぐに見つけ出します!」
我々が羽ばたく不死鳥。
さすがだな、名前の通りだ。
あの気高き少年はどこまで行くつもりなのか。
私は気になっているよ。
だが伊崎くん⋯⋯頼むから女遊びだけは程々に頼む。
私の胃が持たん。
ーーー
あとがき!
報告とは行かないですけど、コンテストとやらに応募してみた作者。
意味があるのかわかりませんが、なんかワクワクするもんですね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます