ある日あの時あの場所で

さけちゃ

第1話 白昼夢

 何をするにもダメだった。

 何を言ってもダメだった。

 生まれた事を後悔した。

 どうして生まれてしまったのかと……。


 僕は努力する事が嫌いだった。

 背伸びしたって当たり前にしか見えず、無理したところで息も続かない。

 無理してるのにみんなこれが当たり前で、当然だと言うのだから…


 僕には耐えられなかった。

 だから僕は何もかも投げ出して空高く飛びたかった。

 気付いてしまった、僕の背に翼など無かったのだと。


 気付くのが遅過ぎた、アスファルトの黒さえ赤い池の広がる様を止めることはできない。

 学校のベランダからこちらを見つめる僕を虚な瞳が映し出す。それを最期に僕は僕を見ていた。

 ベランダの僕からは赤い水溜りに横たわる僕の、もはや何も映さない僕が見えた。

 あの醜い人形は何なのだろう?


 僕は僕を見ている。

 そんな事実に気が付いて僕はふと我に返る。

 振り向けば窓際の1番後ろの席に僕が座っていた。

 外を眺めている。彼は空を見上げていた。

 頬に手を当て頬杖をつく彼の手が離れてこちらを見る。彼と目が合った。


 僕は彼だった。気付けば僕はどこにも居なかった。

 僕を見る僕達はどこにも居なくて、僕らがしたようにそっとベランダの下を見た。

 やっぱり僕は居なかった。赤く染める池も無く、地面は夏の暑さを伝える熱気で黒光りしたアスファルトがあるばかり。


 振り返る。そこには誰も居なくて、がらんとした教室には何事も無く平和に休み時間を謳歌するクラスメイトが数人居るばかり。


 時計は、もう直ぐチャイムを鳴らすぞと長針を動かし、生徒達もザワザワと忙しなく次の授業の支度を始める。


 あぁ、なんて平和な1日だろう。

 僕は今日もまた同じ1日を繰り返し、何の変哲も無い日常を、何事も無く繰り返す。


 かつての僕が言っている。

 青空を羽ばたくにはあまりに醜く穢れたお前には荷が重い。

 お前に天使は微笑まないのだと、かつての僕が微笑んだ。苦笑する。僕なのか、君なのか、あるいは別の何かなのか分からない何かが苦笑いを浮かべると、瞬きひとつの間に学校ではないどこか違う所に立っていた。

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