23ページめ

 今日、ぼんやりした光の玉が庵にふわふわと流れ着いた。

 青白くて、炎みたいに揺らめく不思議な光。


 妖医はその光を見て、ぱちぱちと瞬きしていた。

 そのあと引き出しをいくつか開きながら、振り返ってぼくに向かって笑った。


「言葉を発さない患者は、あなたには退屈ですね」


 妖医は、その光と会話?ができるらしい。


「光が弱くなったそうで、人間の街の灯りにかき消されてしまうそうです。ちょっと精神も病んでますね。ドローンに間違われて、アイデンティティを失いつつあります」


 「どろーん」も「あいでんてぃてぃ」も、何なのか分からない。

 だけどそれを聞き返す前に、部屋の隅に転がる壺から声がした。


「その人魂、もらい受ける」


 不思議な声だった。

 部屋に木霊するような、否、耳元で囁かれたような……否、頭の中に直接響いたような。

 深い声だった。


 妖医は少し眉根を寄せる。


「すぐ治りますよ?」

「灯りを欲している区画があってな。ちょうどよいものを見つけたわ」


 妖医は微笑み、壺を両手で拾い上げる。

 すっと人魂に向けてかざすと、人魂は音もたてずに消えた。


 壺に、吸い込まれた?


 ああ、気になる。

 何なのだろう、あの壺は。

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