第28話 全てを笑顔にした僕の物語(前編)

恋音は高校を卒業し、東京へと戻った。進路については悩んでいた。


その頃、大空は大学2年生となり、親元を離れ一人暮らしをしていた。


大空と恋音は、3年前、海で初めてのキスを交わして以来、デートでキスをすることはあったが、当時は高2と中3ということもあり、それ以上の進展はなかった。


恋音は、高校入学と同時に自慢のロングヘアをばっさり切り、ショートカットにしていた。ロングヘアも良かったが、スポーティな恋音にはショートカットがよく似合っていた。


大空は大学でも女子に人気があったものの、一途な性格で誰とも付き合うことはなかった。一方、恋音も練習に明け暮れ、恋愛をする時間はなかった。


大空は恋音を一人暮らしする部屋に誘った。


かつて、ファーストキスも照れ屋な性格から恋音のリードがないとできなかった大空は、部屋に入るなり恋音をお姫様抱っこしてベッドルームに連れて行き、ベッドに寝かせてキスをした。3年間、ずっと互いを求めていた気持ちはもう抑えられなかった。


激しく求め合い、ふたりは一線を越えた。


少し落ち着いた後、恋音が話し始めた。


「私、これからの進路まだ決められていないの。Vリーグから数社誘いを受けているの。でも、大空が海外に行ってた10年、高校での3年離れ離れになって、もう大空とは離れたくないの」


大空はすぐに答えた。


「もう二度と離さない。俺が大学を卒業したら結婚しよう」


恋音は涙を浮かべて頷いた。


大空は続けた。


「恋音のお父さんのカイさんは、人を笑顔にする不思議な力がある。恋音には、人をまとめるリーダーシップと並外れた運動神経がある。それを活かすべきだよ。Vリーグに行って真の日本一、そして世界を目指すべきじゃないか。Vリーグに行っても離れることはないよ」


その言葉に、恋音はVリーグ入りを決意した。


大空と初めて結ばれ、進路も決断したところで、恋音が甘えて言った。


「あのね、お願いがあるの。もう1回して欲しいの」


「え、いいけど、どうして?」


「前にね、友達と話していて、ある友達がね『昨晩は彼に2回してもらっちゃった』って嬉しそうに自慢してたの。それ聞いて凄く羨ましくて『私だって大空に2回してもらえるもん』ってずっと思ってたの。無理ならいいよ。でも、男の人って1回したらもう無理なんでしょ?」


「それは人によるかな。俺は行けると思うよ」


そう言いながら、恋音にキスをして、もう一度恋音を求めた。


結局その日は、3回恋音を愛した。


恋音は、満ち足りたような、幸せな笑顔を浮かべていた。



後日、恋音の春高バレー優勝と高校卒業を祝うためのホームパーティーが朝倉家の庭で開かれた。


そこに集まったのは——


「社長」:かつてはワンマン社長で妻にも厳しく当たっていたが、今ではすっかり社員思いで妻にも優しくなっていた。


「社長の妻」:社長が優しくなったことで夫婦関係も良くなり、今では笑顔の絶えない毎日を送っていた。


「智也」:朝倉家に社長の政略結婚で婿入りし、陽菜との間に大空を授かる。社長の企みを知り、陽菜をカイの元へ戻すために離婚。その後、カイと陽菜の結婚式でりさと出会い再婚。今では穏やかな家庭を築いている。


「りさ」:智也の妻。かつて陽菜にハニートラップを仕掛けるも、後に改心し、智也と再婚。今では良き妻として智也を支え、大空の新しい母親として温かい家庭を築いている。


「大空」:智也と陽菜の息子。身長185cmの長身でイケメン。自分を鍛えることが趣味で筋肉質。幼い頃、海で出会った恋音を兄のように守り、やがて恋仲に発展した。


「恋音」:幼い頃に両親を事故で亡くし、精神的に追い詰められていたが、カイに救われ笑顔を取り戻した。春高バレーで優勝し、将来を期待される存在となった。


「玲子」:元夫を事故で亡くした悲しみをカイと支え合い、10年の結婚生活を送った後、カイを陽菜の元に返すために離婚。その後、カイの計らいで黒川圭介と再婚した。


「圭介」:元妻の浮気で離婚を経験したが、カイの結婚式で玲子と出会い再婚。心の傷も癒え、穏やかな日々を送っている。


「陽菜」:かつてはりさに頼まれカイにハニートラップを仕掛けたが、カイに惹かれ続け、数々の困難を乗り越えて結ばれた。大空の母でもある。


「カイ」:ランジェリーショップで咲と出会い、恋人関係を築くが、咲を病気で亡くす。その後、陽菜や玲子と心を通わせ、恋音を養子として迎え入れる。人を笑顔にする不思議な力を持つ男。


「ヴィ」:恋音たちが保護した捨て猫。額にVの模様があり、勝利の女神としてチームの象徴となった。


——という、さまざまな過去を持つ10人と1匹が集まった。


みんなが苦難を乗り越え、笑顔に包まれたホームパーティーとなった。その中で、各自からサプライズがあった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る