新奴隷商人 補足編(紀元前47年の物語④)

🌸モンテ✿クリスト🌸

あらすじ

『奴隷商人』の新バージョン。旧バーションは超能力をバリバリ使うので制約がない。こっちのほうは弱い。知恵で勝負。絵美の憑依するのは、エミーではなくアルテミスで、彼女はコーカサスのアディゲ族の族長の娘で巫女長、双子の妹の名はヴィーナス。


 話は、10万年昔から文明化が途切れることもなく続いているア・ヌンナック星の恒星間宇宙船、ア・ヌンナックⅡ号の墜落から始まる。


 ニューヨーク、タイムズスクエアで銃撃されたニューヨーク市立大学に通う女子大生、森絵美は、宇宙を彷徨っていた純粋知性体アルファによって紀元前47年の古代ローマに墜とされてしまった。森絵美の知性、知識、思考システムは肉体を離れ、知性体となって、地中海沿岸、フェニキア(現代のシリア)地方の奴隷の少女、アルテミスに憑依させられた。


 アルテミスは、黒海沿岸のコーカサス地方の族長の双子の娘の姉。神殿巫女として一生を終わるはずだった。彼女はフェニキア人海賊に誘拐され、地中海へと連れ去られた。絵美が憑依したアルテミスは、ちょうど奴隷市場で売られる場面だった。そこに、純粋知性体アルファのプローブユニット(母船から放たれた月着陸船みたいな探索体)が憑依した奴隷商人のムラーに買われた。


 ムラーとアルテミスはアルファからの指示でアルテミスとクレオパトラ七世の陰謀を阻止するためにエジプトに飛ぶ。


 そこで、アルテミスはムラーから旧石器時代から続く純粋知性体の人類の知性化干渉の話を聞く。しかし、ムラーは純粋知性体だけが人類の知性化を行ったのではない、と話された。驚く絵美。


 ムラーは、紀元前10,765年、2025年から数えると12,790年前に北米大陸、北大西洋に墜落した恒星間宇宙船ア・ヌンナックⅡ号の脱出船、惑星間着陸船の「エルピス(Elpis)」Ⅰ号、Ⅱ号の生き残りのア・ヌンナック星人が人類と混血して、紀元前の文明を作り上げた、と説明した。


 恒星間宇宙船ア・ヌンナックⅡ号の巨大な船体は太陽に激突した。直径20キロ、長さ50キロのシリンダー型恒星間航行船だった。函体の素材は、チタニウム合金と超高張力鋼を組合せたものだった。スペースコロニーではなく、恒星間航行船なので、内外殻、岩石層は、ラグランジュポイントに恒久設置するようなスペースコロニーの数倍だった。


 函体は二重構造になっており、外殻はチタニウム合金と超張力鋼でできていて、直径20キロ、厚みは500メートル、内殻は外殻と同じ素材で、直径17キロ、厚みは500メートル、外殻と内殻の間には、宇宙線被爆防止のためのアステロイドベルトから収集した小惑星を粉砕した岩石でできている。その総質量は、31.1兆トン、内殻内の容量 は 約 10.05 兆 m³ だった。スペースコロニーではなく、恒星間航行船なので、内外殻、岩石層は、普通のコロニーの数倍だった。


 エルピス(Elpis)Ⅰ号とⅡ号は、母船と相似の構造で、直径2キロ、長さ5キロのシリンダー型惑星間航行船だった。それでも、総質量は約3,110万トン、内殻内の容量は100億m³だった。


 この惑星間航行船二基が地球に追突した。幸いにして、中生代の恐竜を絶滅させた小惑星の衝突のような鋭角での衝突ではなかった。ア・ヌンナック星人のパイロットがダメージをできるだけ低減しようと大気層に対して鈍角で墜落コースを設定したからだ。


 だが、これだけの質量のものが地球にぶつかったのだ。人類は、この衝突物体が人工物だとは思わず、「クローヴィス彗星」と名付けた。後世の人類の科学者は、この火球は直径が4キロほどもあったと推測した。6600万年前、恐竜を絶滅させた小惑星の直径が16キロ程もあったと言われるので、それよりも遥かに小さい彗星であったが、十分に地球の生命の大部分を絶滅に追いやる大きさだった。


 中生代に衝突した小惑星は考え得る最悪の角度(鋭角)で地球に突入したため、大気圏の摩擦で分裂もせず、ひと塊で地球に激突したが、エルピス(Elpis)Ⅰ号とⅡ号は、北極上空で浅い角度(鈍角)で大気圏に突入した。


 その突入の入射角は、12度ほどで、大気圏上層部をバウンドしながら進み、その摩擦熱と圧力により数多くの直径数百メートルほどの小片となって、地球に降り注いだ。そのため、中生代に衝突した小惑星がユカタン半島一箇所に爆心を持ったのに較べ、爆心は数十箇所に及び、北米、グリーンランド、ヨーロッパ、北アフリカという広範囲に広がったが、一つ一つの破壊規模は小さくなった。


 ある小片、小片と言っても1キロくらいの直径のエルピス(Elpis)Ⅰ号の破片は、現代のアメリカの五大湖周辺に衝突した。その頃の五大湖は、一つの巨大な氷湖を形成していて、氷河の重みと地殻との摩擦で、底部は数兆トンの真水になっていた。それが氷河によって押し止められていたのだが、彗星の衝突で真水の地底湖が決壊し、数兆トンの湖水が大西洋に一気に流れ込んだ。巨大な津波が大西洋を渡り、ヨーロッパ、北アフリカを襲った。塩分濃度の非常に低い津波は、数百メートルの高さで地中海に流れ込んだ。


 もしも、古代ギリシアの哲学者プラトンが著書『ティマイオス』と『クリティアス』の中で記述した伝説上の島、そこに繁栄したとされる帝国であるアトランティスがあったとしたら、北米大陸の氷湖の決壊によって一瞬の内に海底に沈んだであろう。


 北米には、エルピス(Elpis)Ⅰ号とⅡ号の破片が広範囲に衝突し、ブリヤート人を祖先に持つアメリカ先住民の部族が形作った石器文化をも壊滅させた。衝突により巻き起こった粉塵は大気をおおい、その頃、現代よりも8℃ほど低かった地球平均気温をさらに7.7℃低下させた。最終氷期のヴュルム氷期と同じ気候が起こったのである。


 その状態は十数年続いた。2025年から数えると12,790年前から11,600年前まで1,200年間続くヤンガードリアス期という氷河期の再来であった。


 地球の寒冷化は、彗星の衝突範囲から考えると大西洋沿岸の方が太平洋沿岸よりもひどかった。しかし、太平洋沿岸も少なからず急激に寒冷化した。ウラジオストックあたりに移り住んでいたブリヤート人の混血部族は、寒冷化に押されるようにして南に移っていった。そして、日本列島にたどり着いた。


 シュメール神話に登場する「アヌンナキ」は、神や創造主を指す言葉だ。また、古代シュメール、アッカド、アッシリア、バビロニアの一群の神々でもあった。


 「アヌンナキ」は、天空の神アヌと大地の女神キの子孫で、人間の運命を司ったとされ、人類の始祖の「アダム」を創造したとされている。現人類に対しては種全体に「バラルの呪詛」を施して相互理解を妨げてきたともいわれている。


「絵美、『ア・ヌンナック』星人、シュメール神話に登場する『アヌンナキ』神、何か似ていると思わないか?」とムラーが絵美に聞いた。

「まさか、人類の始祖は、『ア・ヌンナック』星人だったの?」

「そのようだ。純粋知性体のデータベースはそう記述している。正確には、エルピス(Elpis)Ⅰ号からさらに脱出船で生き延びた生き残りの『ア・ヌンナック』星人が始祖らしい」


 エルピス(Elpis)Ⅰ号の脱出船は、トルコのアララト山に不時着し、修復不能になった。エルピス(Elpis)Ⅱ号は、北米、ニューファウンドランド島沖合の深海に沈没したままだ、とムラーは言う。


「エルピス(Elpis)Ⅱ号はⅠ号と同じく破壊されたの?」とムラーに聞く絵美。

「それがどうもほとんど原型を保っているようなのだ。知性体の観察では、外部との接触はまったくないが、内部でなんらかの知性の動きがあるようなのだ」とムラー。「もしも、Ⅱ号の科学力が手に入れば、Ⅰ号の生き残りで成れの果てのクレオパトラ七世たちに勝てるかもしれない…」と絵美は呟く。


 クレオパトラ七世との闘いに勝つために、エルピス(Elpis)Ⅱ号に向かう絵美/アルテミス。




 生活感のある歴史ファンタジーです。古代世界でトイレの衛生器具、照明の心配、衛生器具、化学実験器具、ホップの利いたビール、ブランデー、避妊薬、脱毛、船の蒸留水製造装置、生理用品、TKG、フォークとナイフ、スプーン、なんでも作っちゃいます。


※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

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