6話
すげぇ……。
教会の扉をくぐった瞬間、目の前に広がった光景に、思わず息を呑んだ。
天井までそびえる大理石の柱。光を受けて万華鏡のように輝くステンドグラス。磨き上げられた白い石の床。
神聖で、厳かで――それでいて不思議と落ち着く空間。
なるほど、神の祝福を預かる場と呼ばれるのも納得だ。
……けどなぁ。
これはないよな。
子どもたちとその保護者が、番号札を握りしめてずらりと並び、呼び出しを待ってるんだぞ?
その光景を見た瞬間、俺の脳裏には、前世で見た市役所の待合室がよみがえった。
「あちらの番号札をお取りください」「番号を呼ばれるまで、こちらでお待ちください」
――みたいな張り紙まである始末。いやいや、空間の厳かさと案内の実務感のギャップがひどすぎる。
神の導きって、もっとこう……神秘的で特別なものじゃないの?
順番待ちで“診断”って言われると、健康診断とか思い出しちゃうじゃん!
ステンドグラスから差し込む七色の光が、無情にも受付札の「43番」を照らしている。
「ああ……これ、絶対長いわ……」
ゴッ!
母さんの拳骨が頭に落ちた。
――はい、静かに待ちます。
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side-少年
「次は42番の方、診断台へお進みください」
ふぅ……やっと僕の番だ。
どんな結果でもいい。僕は、父さんみたいな立派な騎士になるんだ。
気を引き締めて、祭壇の奥へと歩みを進める。
「シリル、大きくなったな」
祭壇に立つのは、祈導士である父さん。その声に、自然と頬がゆるむ。
「汝の名を天に記し、今ここに問う。
聖なるセフィラの光よ、彼(か)の魂を照らしたまえ。
《顕現せよ、聖刻の環〈セフィラ・リング〉》!」
次の瞬間――
天井から降り注いだ光が、まるで意志を持ったかのように僕を包み、床には緻密な魔法陣が浮かび上がった。
その中心に現れたのは――
風と光の双属性が絡み合う、美しくも精緻な魔術回路。
「……これは見事な回路構造だ。属性は風と光。魔力純度は八十八パーセント、魔力量は――B!」
「おぉ!」「あれはどこの家の子!?」
会場がざわめく。けれど、僕はそれどころじゃなかった。
(……今の感覚は、なんだ?)
ただ診断を受けただけなのに、背筋を這うような、ぞわりとした感覚が残っている。
まるで――
あの回路の奥で、“誰か”が、自分を見返していたような。
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