第31話
翌日、春夜のパーティーは休息を取ることにした。
春夜は母の病院代と父の行方を探すために一日一日が惜しい状況だったが、その事実を三日月と朱音にまで強要するつもりはなかった。
そのため、三日月と朱音が休息を求めた時、春夜は快く受け入れた。
ただ、鈴音は春夜と同じような考えだったので、春夜は鈴音と二人だけでダンジョンに入った。
地下15階から上に上がり、再び12階へ。
普段とは違い2人パーティーなので難易度を下げてオークたちを相手にしに来た春夜と鈴音は、本格的に狩りを始めた。
ところが、異変が起きた。
シュッ!
鈴音が立て続けに弓を引き絞ると、遠くから近づいてきたオークたちが一斉に倒れてしまったのだ。
鈴音の今の矢は、三日月のアイススピアよりも強力な火力と連射力を持っていた。
「鈴音、今のは…?」
「あ、お兄ちゃん。この前お兄ちゃんからもらったイヤリング、あれが思ったより強くて」
「イヤリング?」
イヤリングをあげた記憶はないが、何の話をしているのだろう?と思ったが、やがて思い当たる節があった。
吸血鬼との戦闘が終わった後、宝箱を開けた時。鈴音が僕に尋ねた。
「お兄ちゃん、このイヤリング、私、もらってもいい?」
あの時のイヤリングのことを言っているのだな。少し疑問に思ったので、遅ればせながら能力値を聞いてみた。
[守城のイヤリング]
能力値:敏捷性+40、体力が満タンの時、攻撃力1.5倍
春夜は戸惑うしかなかった。
「なんだこれ?めちゃくちゃ強いじゃないか?」
「今頃気づいたの?これ、普通じゃないよ。敏捷性を40も上げてくれるからダメージと連射速度も上がるし、弓使いは体力が減ることがないから、ほぼ常時攻撃力1.5倍って見ていいくらいだよ」
「それで強くなったのか」
「うん!最初に比べてだいぶ良くなったでしょ?」
「そうだな」
最初の鈴音は、正直言ってあまり存在感がなかった。役に立つことは立つが、大した助けにはならない感じ。しかし今の鈴音は、明らかに優れた弓使いになっていた。
そうしてパーティーは12階層を軽々と突破し、16、17階層まで下りていった。ただ、朱音と三日月がいない状況であまりにも下りすぎると、二人が慣れないかもしれないと思い、17階層で止まった。
多くの金を稼いだ後、二人の踏破は止まった。午後6時になり、ダンジョンから退勤した。しかし、ダンジョンから出ると、ワゴン車に乗って待機していた健太がこう言ったのだった。
「春夜様、そういえばダンジョン外の業務が一つ入ってきましたけど」
「ダンジョン外の業務ですか?」
「義務ではないので断っても全く構いません。ですが金額が大きいので…話はしておかなければならないと思いまして」
「いくらなんですか?」
「2時間で40万円です」
「2時間で40万円!?」
時間当たりに換算すると、ダンジョンで得る金額より微妙に高い金額だ。一体どんな仕事だからこんなに報酬が大きいのだろうか?
「全日本武道連盟ってご存知ですか?」
「あ、はい。うちの西園寺流も加入しています。古流剣術と剣道家たちの集まりですよね」
「春夜様がダンジョンスターとして注目され始めてから、剣道と古流剣術への注目度がぐんと上がったそうです。そのため、全日本の剣術振興のために、年に一度ある全日本武道連盟の会議に春夜様を招待して剣術を学んでみたいとのことです」
そんなことであれば春夜も大歓迎だった。金そのものより、後進育成の意味が大きそうな仕事だった。
「受けます」
「よろしいのですか?今すぐ行かなければなりませんが」
「はい。大丈夫です。より多くの人々が剣の道にのめり込めば、父も喜ぶでしょう」
「では、春夜様の家に少し立ち寄った後、出発します」
健太の車が止まったのは、東京都心の一等地に位置する、近代的な高層ビルの前だった。しかし、よく見ると建物の外壁や入口のデザインには、伝統的な日本建築の様式が繊細に溶け込んでいた。「全日本武道連盟本部」という金色の看板が威厳を放っていた。
「到着しました。鈴音さんも一緒に入りましょう。主催者側には事前に話してあります」
健太の言葉に、鈴音は少し緊張したように唾を飲み込んだが、やがて頷いた。
ビルのロビーに入ると、きちんとしたスーツ姿の男性が近づいてきて一行を迎えた。
「西園寺 春夜様ですね?お待ちしておりました。私は連盟事務局長の山口と申します」
山口は丁重に頭を下げて握手を求めた。彼の案内に従ってエレベーターで上がった先は、広い講演会場だった。既に数十人の人々が席を埋めていたが、ほとんどが道着や袴姿の中高年層だったが、たまに若い修練生やスーツ姿の関係者も目に付いた。講演会場の前方には、実演のための広い板の間が設けられていた。
静かだが重々しい期待感が漂う雰囲気だった。ダンジョン時代の新星剣術家、それも古流剣術の血を引く若者がどんな話を聞かせてくれるのか、皆が注目していた。
しばらくして、司会者の紹介と共に春夜が演壇横の板の間に歩み出た。放送の時とは違い、彼は父の道場で着ていた地味な黒い稽古着姿だった。
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